「エロスとタナトス」ゲキ×シネ「吉原御免状」 ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
エロスとタナトス
脱ぐなー、たくさん。からむなー、何度も。いつもの新感線のような、笑える作品ではない。橋本じゅんがおとなしかったし。原作は読んでないが、たぶん忠実に再現したのでは、と思われる。エロで、しかもマジメであった。たまにはこういうのもありですな。
人里離れた山中で育ち、純粋に育った若者が、自分の出生の謎を知り、女を知り、愛を知り、成長する物語。彼は優しい男だが、それ故愛した女を失ってしまう。そして、彼は鬼に変貌するのだ。全てが終わった後、育った山へ帰ろうとするが、吉原の人々に頭領として残ることを懇願される。山なら自由で屈託のない生活に戻れるのだが、結局、吉原に残ることにする。人と交わり、上に立つ責任を負う選択をする。青年は大人になる覚悟をしたのだった。
堤真一は40歳くらいかな、アクション俳優出身だけあって、殺陣が決まっていた。激しい立ち回りの後でも、息が上がってないか、上がってないように見せるところがすごい。汗は出てても、なんか涼しげ。シュっとした着流し姿がセクシーで、ふんどし姿も見られ、眼福だったわー。劇団員の女性陣からもベタベタ触られて、いい男は大変だー。
松雪泰子は新感線常連。過去に囚われ、苦悩しながら、愛に殉ずる様が切なかった。そして、色気がハンパないっすよ、ねえさん! 本筋と関係ないが、着物をゆるく着ているのに、着崩れない、その秘密が知りたい。
吉原の隠れた存在意義は、なるほど~と思った。徳川秀忠と後水尾天皇の確執というのも、へーって感じ。徳川秀忠といえば、遅刻してパパに怒られた人、くらいしかイメージない。後水尾天皇も名前は聞いたことはあるが、どんな方か全く知らない。調べたらこの頃、幕府が禁中並公家諸法度を発布し、天皇や公家の行動を規制していた。後水尾天皇は、朝廷を管理しようとする江戸幕府とやり合ってたらしく、いきなり譲位したり、でも院政したり、なにげにパンクな人生だったようだ。そして、この時代にしては長生きで、85歳まで生きた。秀忠の娘が中宮で、かつ側室がけっこういて、生まれた子供も多かった。なんと、男子19人、女子16人、合計35人! なかなかお盛んで…。「吉原御免状」の作者、隆慶一郎は、後水尾天皇を主人公にした小説も書いていて、がぜん読みたくなった。中島先生、教えてくれて、ありがとうございまーす。図書館で借りてみまーす。
傀儡というのも、よく知らなかった。ヨーロッパでいえば、ロマみたいな人々だろうか。芸能を生業とした、非定住の流浪の民。傀儡とは人形のことで、人形劇などを興行し、あちこち移動していた。傀儡が発展し、後に人形浄瑠璃や神楽となったらしい。傀儡の人々は、自由な気風で、だからこそ差別され、圧迫される。差別から逃れる手段として吉原が使われる、というのも、筋立てとしては説得力があった。
物語がしっかりしていて、役者も適任、アクションとお色気のバランスも良かった。もっと過去の舞台を観たいと思うけど、20世紀のはさすがに無理なのかな。剣轟天観たいな…。
ゲキシネ20周年企画で行われた総選挙の結果は、こうなった。1位は絶対これだろうと思ってた。中間結果でもずっとトップだったし。意外なのは、「神州無頼街」が漏れたこと。福士蒼汰のファンはどうしたの。でもまあ、某放送局じゃないけど、劇団への貢献度が違うかな。天海祐希と早乙女兄弟が出ている作品は、当然入りますわね。花鳥風月の髑髏城で唯一ベストテン入りした「鳥」、早乙女太一の蘭兵衛は超絶かっこいいので、これは再見したい。残念ながら圏外になってしまったが、「風」の橋本じゅん版贋鉄斎、もう一度観たかった。今回、都合で観られなかったものもあるので、何年かおきでいいので、古い作品を上映する機会を作っていただきたい。
1位 ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ
2位 薔薇とサムライ
3位 修羅天魔 髑髏城の七人Season極
4位 阿修羅城の瞳2003
5位 狐晴明九尾狩
6位 蛮幽鬼
7位 髑髏城の七人・鳥
8位 蒼の乱
9位 薔薇とサムライ2
10位 SHIROH