劇場公開日 2025年2月7日

「タイムループの体裁で描かれる、大人のラブストーリー」ファーストキス 1ST KISS abuさんの映画レビュー(感想・評価)

タイムループの体裁で描かれる、大人のラブストーリー

2025年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

脚本は坂元裕二、主演は松たか子。
この実績ある名コンビに、いま話題の塚原あい子監督が加われば、面白くなるに決まっている。

物語は冒頭からテンポよく進み、観る者をすぐに物語の中へ引き込んでいきます。
ただ、どんなに松たか子が奮闘しても、物語が最終的に“あの場所”に帰着することは、観ている側には分かっている。
その前提のなかで過去パートを追うという構造には、どこか切なさが伴います。

坂元裕二らしいユーモアもたっぷりで、思わず笑ってしまう会話劇も健在。
けれど、その軽やかな笑いの奥には、いつも「痛み」が控えていて、ふとした瞬間に胸をチクリと刺します。
それがこの作品の持つ、不思議な魅力でもあります。

終盤では、おばさんになった松たか子と、若き日の松村北斗が交わす会話がとても印象的。
ファンタジーという設定を通して、人生の“答え合わせ”がなされるような場面です。
ここは、おそらく誰もが一度は願う「反省会」のような時間。
まさに、観る者の心に深く刺さる名シーンです。
そして迎えるラストは、大人のラブストーリーとしての静かな着地。
ビターでほろ苦く、それでいて心に温かさを残します。

人生の記憶や後悔と、そっと重なり合うような。
見終わったあとに、ふわっと清々しい気持ちになれる──そんな一本でした。

abu
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