劇場公開日 2025年2月7日

「お互いの好きな所を発見し合うのが恋愛。嫌いなところを見つけ合うのが結婚」ファーストキス 1ST KISS Tonさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5お互いの好きな所を発見し合うのが恋愛。嫌いなところを見つけ合うのが結婚

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

まず僕の持論として、家族や恋愛系の日常の物語に、ファンタジーを取り込んだ作品は、作り方を間違えなければ大抵良い感動作が出来上がると言うのがある。いま、会いにゆきます然り、ぼくは明日、昨日のきみとデートする然り。それは現実では難しい設定の調整弁になり、非日常要素が適度な刺激になる。そしてタイムトラベル系は何らかの別れが必ずついてくるからだと思っている(但し、失敗すると、話がよく分からなくなったり、設定の不整合が目立って内容に集中どころじゃなくなる)。今回はその要素を織り込んだ設定で、坂元さんと塚原さんがタッグを組んだ作品。どんなふうに料理するのかと楽しみだった。

結果、タイムトラベルの設定は微妙だったが、そこは怒涛の展開で押し切っているのと、メインメッセージはそこではなく、あくまでタイムトラベルは伝えたい事を支える重要な小道具でしかない、そこよりも本筋に目を向かせるような作りになっていて、大して気にならなかった。

内容はと言うと、坂元さんは相変わらず夫婦に対する表現が妙を得て、感慨深い。最高の離婚や大豆田とわこのように。塚原さんは飽きさせない怒涛の展開(ちょっとラストマイル的な)と、そうは言っても大事なところで入れてくる緩急が絶妙。そして、変わらず様々な設定と細かい伏線。
松たか子さんはわちゃわちゃした感じが似合うし、若い頃はこう言う喧嘩が多かったなと思わせる(あの艶肌はどうやって出したのか?本当に20代に見えました)。松村北斗君は初めて観たが、とてもこの役に合った演技だと思った。でも、松たか子さんがインタビューで毎回、「とても輪郭がはっきりした人」と言っているから、実際は違うのかも知れない。そうだとするとあの雰囲気を良く出せたなと感心する。
ロープウェイの映像は綺麗だった。演技者たちの佇まいも。

作品中の台詞、「お互いの好きな所を発見し合うのが恋愛。嫌いなところを見つけ合うのが結婚」は、結婚の名言集に出てきそう。恋愛結婚の夫婦の倦怠期なら、また昔に戻ろうと思い、お見合い結婚の夫婦の倦怠期なら、少し相手に優しくしようかと思うのではないかと思いました。そして、この作品では…。ネタバレになるから書きませんが、終わりの駆の振る舞いに隠された思いを想像すると涙が止まらない。話の4分の3は松さんがわちゃわちゃしてストーリーを進め、最後の4分の1の北斗君のターンが話をとてもしっかりとしたものに落ち着かせてくれる。建築物の基礎のように。そして、彼の言葉や気持ちを理解できるように。

良い作品でした。

Ton
Tonさんのコメント
2025年2月24日

ファーストキスはちょうど品川で観ました。あと1週間早ければ、夜明けのすべても観れていたかも知れなかったですね。またの再上映に期待します

Ton
ひなさんのコメント
2025年2月24日

Tonさま
コメントバック、ありがとうございました。
『ファーストキス』は、女性が8割だそうですが、ここのレビューを読む限り、男性が1人で鑑賞している率がかなり高めです。

『夜明けのすべて』は、円盤を購入しても未開封のまま再上映を待ち続け、ミニシアター・ホール・配信で観ました。やはり出来ることなら、映画館をオススメします。

映画館のスクリーンや音響ということではなく、レビューで触れた原作との設定変更が、映画館という装置で観た方が良い理由です。(ご自宅でも映画に没入できる環境があれば大丈夫です)

映画賞をいくつも受賞しているので、その度に再上映され、今月も新宿と品川でプレミアム上映がありました。来月は日本アカデミー賞授賞式の頃に、また上映館が増えたら良いなと願っています。

ひな
Tonさんのコメント
2025年2月24日

パンフレット、買えて良かったですね。僕も列に並んで、ぎりぎり売り切れる前に購入できました。こういう作品を観ると、感性を刺激されるのと同時に、どうして日常を過ごしていると、この気持ちを置いてきてしまうんだろうと少し悲しくなります。僕は1人で観ましたが、きっと大切な誰かと一緒に観れると嬉しさが増すのだろうなと思いました。ひなさんが良い時間を過ごせた事を祈っています。

Ton
Tonさんのコメント
2025年2月24日

松村北斗さんはそうなんですね。ひなさんのコメントを読んで、今後が楽しみかつ、俳優で映画を選ぶ1人になるかも知れません。夜明けのすべてを映画館で観たいのですが、今はかなり遠くでしかやっておらず、配信で観るかどうか思案中です。

Ton
Tonさんのコメント
2025年2月24日

ひなさん、

僕の疑問点に情報をくれて、有難うごさいました。色々と、とても納得できました。

松たか子さん、CG+VFXだったのですね。CGで処理するには膨大な手間が掛かりそうだったので、特殊メイクかと思っていました。作業された方の仕事ぶりに感服します。

Ton
ひなさんのコメント
2025年2月24日

Tonさま
共感ありがとうございます。
(最近レビューの反映がズレるので、2日遅れで表示されました。タイムリープ!?)

「カンナ」の15年前の映像は、CG+VFXだそうです。生身の松たか子さんのまま撮影して、キムタクとドラマで共演した頃の映像を編集しているそうです。プロデューサーが『ゴジラ-1.0』の方なので、事故やロープウェイのシーンも納得です。

松村北斗さんは、舞台挨拶や映画賞受賞スピーチを見ていると、「駈」とは違って空手黒帯のピシッと筋が通った落ち着いた印象です。作品や役に恵まれるというか、オファーが多いから良い作品を選べるというか。出演作をほぼ観ていますが、優しい役、チャラい役、壊れた役、ブレない役、冷たい役…カメレオン俳優だと思っています。

『ファーストキス』は、1回目は感情と理性が渋滞して、感動と疑問が残りました。インタビューやレビューを読んでから2回目を観て、作品を俯瞰で理解できました。パンフレットで3回目の鑑賞ができることも、この作品のステキなおまけだと思います。

(※長文コメント失礼しました)

ひな