「普段ラブストーリーは殆ど観ないが・・・ 間違い無く2025年を代表する一作」ファーストキス 1ST KISS 菊千代さんの映画レビュー(感想・評価)
普段ラブストーリーは殆ど観ないが・・・ 間違い無く2025年を代表する一作
そよ風にさざめく木々の音、白樺並木の中で 駈がカンナに話す。
「あなたに恋をし始めているからでしょうか?だからあなたに会いたい、あなたの事が知りたい」
「一生・・・わからなくていいと思う」
そんな会話だったろうか。カンナが過去を変える為に出逢わなかった事にすると決意した後の二人のやりとりだ。
カンナは離婚を決意するまで冷めてしまった相手なのに、それでも生きていて欲しい、過去を変えれば生き続けてくれると・・・。
何故?
カンナが15年連れ添った駈への思いは“言葉”では表現しきれなかったのかもしれないし、男性目線で観るとその“理由”はわからないのかもしれない。
カンナは「過去を書き変える事が出来れば、あなたが死ななかった“今”を作れるかもしれない」
そう言って、何度も過去にタイムリープする、しかし、無情にも思い通りの“今”は訪れない
「あなたを助ける方法は、私達は出会わない、結婚しない。もうここしか無いよ・・・」
ちょっとしたボタンのかけ違いからすれ違ってしまった二人だが、本当はお互いの事を心の底では思い続けている。
それを愛と言う一言で片付けていいのかはわからないけど、行間に“言葉”には表せない思いが詰まっている。
カンナは“今”を変える事はできたのだろうか?
何度も何度も過去に戻って修正を重ねても、駈の“運命”は変えられなかったかもしれない。
だけれども、二人にとっての“今”は変える事が出来たのだと思う。
「餃子を焼く前に戻りたい」全ての始まりは、3年前代引きで注文し焦がしてしまった餃子。
そして“今”、チャイムが鳴って受け取ったのは、まだ焼いていない駈が頼んでくれた餃子。
恐らく、来年の日本アカデミー賞主演女優賞は松たか子さんで決まりなんでは無いだろうか。
そう思わせるほど、松さんがCUTE過ぎる。
年齢を重ねた役になる事より、若かった頃に戻る方が難しい。“15年前”の松さんは、本当に15年前に戻っていた。それどころか「HERO」の頃の松さんほど。
脚本の坂元裕二&松たか子コンビはドラマ「カルテット」(2017)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021)でもタッグを組んでいるが、この二作品が好きな人なら間違いなく刺さると思う。
監督塚原あゆ子、脚本坂元裕二、撮影:四宮秀俊ってだけでも劇場に足を運びたくなるが、音響も素晴らしかった。
映画館で観るべき2025年を代表する一作。
一つ注文があるとすれば、「FIRST KISS」というタイトルがしっくりこないし、そんなタイトルにしてしまったからなのかのキスシーンは要らなかったかな。