「「シネマの神は細部に宿る」【3月7日再追記】」ファーストキス 1ST KISS ひなさんの映画レビュー(感想・評価)
「シネマの神は細部に宿る」【3月7日再追記】
「私も彼の靴下を履いていました」
⏩️
「靴下だけは丁寧に撮ります」【2月21日追記】
⏩️
「シネマの神は細部に宿る」【3月7日再追記】
🥟🍞👕🍧🌽🧦📆💌🪴
【カケルとカンナの靴下】
この映画の「靴下」は、“愛情”を象徴する小道具として登場します。
恋愛感情と靴下の片方はいつか無くなってしまったり、新婚時代は彼の靴下を二人で履いていたのに、別々に洗濯をするようになったり。
最後のタイムトラベルで、硯駈(松村北斗)に15年後の悲しい未来を伝える硯カンナ(松たか子)。駈の目線がカンナが履いている駈の古い「靴下」に気付いた時、駈の心を動かします。
離婚しようとしていた駈を、カンナはずっと愛していたこと。2人が結婚しないようにしてまで、カンナが駈の命を救おうとしていること。駈は15年後に自分が死ぬ未来だとしても、カンナと結婚生活をやり直す選択をします。
✎____________
【坂元裕二さんのネタバレ】
坂元裕二さんが気にしていた「ネタバレ」ってなんだろう、と考えていました。
映画の宣伝コピー「神様どうか、私たちが結ばれませんように」や予告で、駈が死ぬ未来を変えようとカンナが過去にタイムトラベルを繰り返すことは、既にネタバレされています。
カンナが駈と結ばれる赤い糸を切って、最後のタイムトラベルのために家を出る時、2人が15年の結婚生活を過ごした家の中を見渡すその数秒間に、カンナの想いが溢れていました。
駈の手紙にも、「幸せな15年間でした。君と一緒に食事をすることは、15年前にタイムトラベルすることよりも奇跡でした」と、2人の“日常”が綴られていました。
坂元裕二さんが映画館で観て欲しかった「ネタバレ」は、2人のこの15年への想いと決断なのかなと思います。
✎____________
【塚原あゆ子さんのミルフィーユ】
電車の人身事故は、冒頭のスローモーション、事故現場での遺品回収、血の付いたレシート、脱線事故のニュースなどリアリティがありました。事故の解像度に比べて、タイムスリップが論理的整合性に欠けていて不思議でした。
いつも眠そうにしていたカンナが寝落ちした「夢の中」で、タイムスリップして出会い直した駈と幸せな15年の結婚生活を過ごして、夢から覚めたら餃子を焼く前だった、なのかもしれない…1回目に観たすぐ後の感想です。
2月14日付のORICON NEWSで、塚原あゆ子監督のインタビューを読みました。「“タイムトラベルもの”のミルフィーユ状に重なった可能性」について語られていて腑に落ちたので、一部を引用します。
「過去の出来事は変えられないけれど、違う視点で捉え直すことで、許せることや受け入れられることが増えるのではないか。
たとえば長年ギクシャクしていた夫婦でも、『最初に出会った頃の彼の顔を思い出したら?』と考えることで、違う選択ができるかもしれない。
そういったやさしい決断ができるかもしれない、という可能性を描いた映画です。」
坂元裕二脚本の、『最高の離婚』の細かくて面倒くさい濱崎光生(瑛太)、優しくて冷たい2面性の上原諒(綾野剛)、『花束みたいな恋をした』の元カノが忘れられない山音麦(菅田将暉)。
『ファーストキス』の硯駈(松村北斗)は、彼ら3人の“後悔”も、「ミルフィーユ」でやり直してくれたように感じました。
✎____________
【松村北斗さんの主演男優賞】
ちょうど1年前に公開された『夜明けのすべて』の私のレビューより。
「W主演の松村北斗さんは、旧J事務所というバイアス無しで評価されるべき俳優。演技の仕事に集中できれば、菅田将暉さんや磯村勇斗さんのような俳優を目指せる可能性を感じました。」
SixTONESの活動と俳優を両立させて、20代でキネマ旬報主演男優賞を受賞。『ファーストキス』公開2日前の2月5日午前0時、公式X発表とNHKニュースを見て、驚きとうれしさで深夜に騒ぎました。ほっくん、おめでとう!
✎____________
P.S.
映画館は女性が多く、カップルやご夫婦の姿も目立ちました。一人で来ている男性も何人かいて、この映画を選ぶ男の人って、なんかステキだなと思ってしまいました。
1回目は、映画好きの友達と観に行きました。
2回目は、大好きな人と観に行きたいと思っています。
✎____________
【2月21日追記】
2回目の鑑賞。今日は涙は出ませんでした。ラストの2人のような笑顔で、「ありがとう」と伝えたい気持ちで観ていました。
再々入荷で購入できたパンフレット。オフショット写真集・ハルキゲニア・とうもろこし・花屋・かき氷Tシャツ・餃子・レシート・付箋・カレンダー・手紙・ポラロイド写真…すぐ売り切れてしまう理由が分かりました。
《コラム》に岡室美奈子教授の「夫の靴下を履く女」、《プロダクションノート》に山田兼司プロデューサー・坂元裕二さん・塚原あゆ子監督の「靴下だけは丁寧に撮ります」。
2回目の鑑賞は、パンフレットの「靴下」に泣いてしまいました。
✎____________
P.S.2
『ファーストキス』で思い出した映画が2本。『ラン・ローラ・ラン』と『エターナル・サンシャイン』。
恋人の命を救うため過去に戻ったローラ(フランカ・ポテンテ)が、20分のタイムリミットでベルリンの街を疾走し、スピード感のあるタイムループで変わる運命と3パターンの結末を描いたパラレルワールド。1999年公開ドイツ映画。
ケンカ別れした互いの存在を忘れるために、記憶除去手術を受けた恋人ジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)。「人はナゼ人を好きになるのか」の本質を描いたラブストーリー。2005年アカデミー賞脚本賞受賞、2024年製作20周年記念特別限定上映。
ローラとクレメンタインの髪が同じオレンジ色だったのは、不思議なシンクロニシティです。
✎____________
【3月7日再追記】
「7月10日」の運命が変わっている“可能性”や“希望”を、駈が信じていたという仮説。
最初の「7月10日」では、枯れたままの鉢植えと、「いってらっしゃい」を言えなかったカンナ。やり直した「7月10日」では、自分1人のコロッケではなく、2人の家に置く鉢植えを花屋で選んでいる駈。
「7月10日」に“もし”自分の目の前で事故が起きたら、反射的に助けると考えていたとしても、駈はきっと帰るつもりで家を出たのではないでしょうか。
6月のカレンダーに隠した手紙は突然いなくなった時のための保険、カンナがカレンダーをめくる行為は止まっていた時間を自ら動かすという比喩、その時にカンナの背中を押すための手紙…フォローしているレビュアーさんの解釈です。
映画『花束みたいな恋をした』の坂元裕二脚本に登場する本棚、「シネマの神は細部に宿る」。
ドラマ『アンナチュラル』で脚本の野木亜紀子さんが、「塚原あゆ子監督は“大切な人が遺してくれたもの”のディテールショットが素晴らしい」と、絶賛されていたことを思い出しました。
✎____________
2月13日・2月21日映画館で鑑賞
2月15日★★★★★評価
2月15日レビュー投稿
2月21日レビュー追記
2月25日レビューP.S.2追記
3月7日レビュー再追記
UUUさんのコメントより。
ひなさん、初めまして!
素晴らしいコメントありがとうございます😊
ひなさんの言う通り、靴下はカンナの愛情のキーアイテムでしたね!
この作品はキーアイテムの使い方がうまいですね!
UUUさま、初めまして。
「恋愛感情と靴下の片方はいつか失くなります」
そう言うカンナは実際に靴下を失くすことはなく、一人になって散らかった部屋でも、新婚時代と同じように駈の靴下を履いていました。
最後のタイムトラベルで、もし2人が結ばれなかったら、駈の靴下を履けるのはこれが最後だと考えて、カンナは借りパクをしたんだと思います。
そして駈がカンナの靴下に気付いた後の次の台詞が、突然のプロポーズでした。
靴下はカンナの愛情、餃子は駈の愛情、それぞれのキーアイテムだったと思います😉
コメントありがとうございました。
『国宝』は私も楽しみにしていますが、例の事件があったので公開出来るか心配してました。でも無事に解決し、予定通り公開出来るようで安心しました。
コメントそして共感ありがとうございます。
いつも読んでくださって感謝です。
遅くなりましたが、「ファーストキス」観ました。
まさか離婚直前の夫婦の物語とは思っていませんでした。
松村北斗さん。
「夜明けのすべて」「ファーストキス」と、自分を目立たそうとか、
全く考えない凄い人ですね。
主演の女優の支え方や身を捨てて映画の中の引き立て役になる佇まい。
本当に感動します。
「サウンド・オブ・フリーダム」は、映画の内容から離れてしまったのですが、
常々感じている事を書きました。
ありがとうございます。
「ガタカ」は私もとても好きな映画です。
2回は観ています。
レビューは難しいですね。公開から時間が経って、初見の気持ちが
戻らない気がします。
私は何回も観ない事も、私の中では、その映画を大事にすることとも
思っています。
「片思い世界」は3人のゴーストの少女漫画みたいでした。
共感、コメント、そしてフォローまでありがとうございます。自分もフォローさせていただきます。
さて、本作品ですが、2回観られたんですか。確かに面白かったですよね。自分も大好きな作品になりました。
うちのカミさんにも、是非見てもらいたいんですが、あまり映画館には行かない人なので・・・
配信とかされたら勧めようと思ってます。
なかなか、会話もままならない熟年夫婦なんで。
ひな様
お邪魔します。
>たとえば長年ギクシャクしていた夫婦でも、『最初に出会った頃の彼の顔を思い出したら?』と考えることで、違う選択ができるかもしれない。そういったやさしい決断ができるかもしれない、という可能性を描いた映画です。
この部分、とても共感しました。劇中でも恋と結婚生活の違いが描かれていましたが、それはそれとして、15年前の彼に会う(想う)ってことはとてもいいことだなって思いました。永遠に恋をし続けてる人も世界のどこかにはいるかもしれませんが(笑)。
赤ヒゲでした。
ひなさん
コメント&撮影方法ありがとうございました!CG+VFXなんですね。綿、なんて、超アナログな発想恥ずかしい…人の経年変化もある意味ドキドキしましたが、2人の関係の変化に心動かされる映画でした。
ひなさん
ご丁寧なコメントいただき、ありがとうございます。嬉しかったです。
振り返ると
−松さんが最後に戻る時に一瞬部屋を出ずに止まるシーン
−幸せな15年を想像させる最後の2人で過ごすシーン
素敵でした。大切な映画になりました。
遺影はひょっとして笑顔に変わったりしてましたか?
U-3153さんのコメントより。
たぶんきっとそう言う事なのでしょうね。
例えば脚本に「花を買って帰る」というト書きがあったとして「いや、花より鉢植えの方が駈の希望が表されてるんじゃないか?」そんな演出側の配慮を感じてしまいます。「気づいてもらえないかもしれないけど、絶対花よりは鉢植えのはず」ひなさんのレビューをもし監督が読んだなら小さくガッツポーズするのではと楽しくなっちゃいます♪
ひなさん、カレンダーについて、ご丁寧にコメントを寄せていただき、ありがとうございます。こういうさりげない優しさに触れると、いい映画を見たあとみたいに嬉しくなります。
残された遺族が、故人の生き様の残り香を慈しむように、何気なくデスク回りのものに触れていくことってありますよね。その時に故人の直前の想いややり残したことに触れ、残された者が前に踏み出せることもある。なんで6月のまま?とカンナが思うことからカンナのこれからが始まる…
そう思うとカレンダーは時間の揶揄で、止まった時間をカンナが自ら動かす事がカレンダーをめくる行為なのかもです。自分の死によって止まったカンナの時間が動き出す時、カンナの背中を押す為の手紙なのでしょうか。彼の愛情は途轍もなく深いのでしょうね。
とまぁ、こんな解釈はいかがでしょうか?w
手紙は保険なんだろうなと思い見てました。おそらくなら見つけて欲しくなかったと思います。そっと抜き取って7月10日以降も何事もなく過ごしていけるのがベストだと思うので。でも突然いなくなる自分はカンナに何も伝えてやれない。いつかカレンダーをめくる余裕が出来た時に気づけるようにってとこかもです。
追記のコメントありがとです。僕は全く気づきませんでしたが、こういう細部の演出やディテールまで拾ってもらえると、制作者サイドはめちゃくちゃ嬉しいんじゃないでしょうか。ひなさんの感受性の賜物ですねっ!(*^-')b
お名前は出しておりませんが、ひなさんのレビューに感化されて追記を書かせてもらいました。靴下の視点が加わる事で、カンナの解像度があがったような気がします。ありがとうです😊
ひなさま
コメント&フォローありがとうございました。
拙いレビューを褒めてもらって嬉しいやら恥ずかしいやら恐縮です。タイトルに関しては悩ましいところですが…好意的に受け取っていただけてるようでホッとしてます。ひなさんのレビューはなんか優しさに溢れてて、読むと和やかな気になるなと思っておりました。今後ともよろしくお願いします。
ひなさん、いただいたコメントの最後の段落。ハッとさせられました。
彼だって、半信半疑ながらも、運命は本当に変えられないのだろうか、何かの偶然で変わることもあるかも知れない、なんて思ってたはずですよね。
捻くれ者の私はこんなことまで考えちゃいました。
線路に落ちたのが赤ちゃんじゃなくて、どこかのくたびれたおっさんだったら、反射的に線路に飛び込むことはないだろうな…自分の人間性の薄さが突き付けられてゾッとしますが、現実的には…
ひなさん、素敵なレビューとコメントありがとうございます。
そういえば、カンナが彼の手紙を読んでいる時の彼の部屋のカレンダーが6月のままでした。
アレは7月10日なのに、なぜめくっていなかったのか。7月10日以降の予定を書き込むことができなかったからなのか。
なんだか色々と想像してしまい、なかなか眠れません。
「現在」「過去」「未来」が共存する世界は、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」にも出てきていましたね。
私は、映画「メッセージ」でその考え方を知り、とても優しい考え方だなあ、とあたたかな気持ちに包まれたのを思い出しました。
ひなさま
コメント、フォローありがとうございます。
冷たい関係になった後でも、話すと一番気が合うのが夫だった。そんなところもこの映画にうまく描かれていたと思います。
(私も妻と話していると一番が合うなと思うことが、年に数回ですが、あります)
作品の出来以上に、共感してしまうところが多く、気に入っている作品です。
ひなさまの感想を読んだら、もう一度観に行きたくなりました。
ひなさん、『エターナル・サンシャイン』へのコメントどうもありがとうございます。
相手のことをよく知っているけど、その相手は自分のことを全く知らないというシチュエーションが面白いポイントだなと思います。
相手が初々しいだけで、なぜか自分まで新鮮な氣持ちになる感覚があります。
ここにコメントするのも3回目になってしまいました。松たか子さんが扮するカンナは、何回過去の駈に会いに行ったのかを数えていたのかはわかりませんが、行くたびに新鮮な氣持ちだったのだろうと想像に容易いです。
パンプ、売り切れてるんですかね、私が行った劇場では売ってなかった気がするんですよね。次に劇場に行ったら、探してみます。
キネ旬の表彰式は、コロナ前までは毎年行ってました。ベスト・ワン作品の鑑賞会がセットで、3本観た後に表彰式だったので、朝から晩まで会場の中でした。
コロナ後は鑑賞会もなく、会場が渋谷に変わって遠くなったので行ってないんです。
ネット中継も今回は見逃しました。スピーチの時間制限もなくて、面白いんですよね、キネ旬のは。
また、鑑賞会を復活してほしいものです。
フォローありがとうございます
私、2015年くらいから、キネマ旬報、kinenote、地元紙などに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報採用です。
宜しくお願いします。
ひなさんの本作レビュー、共感数も多く絶好調ですね。
作品愛を強く感じるレビューですね。
今後のレビューも楽しみにしています。
では、また共感作で。
ひなさん、こんばんは
コメントありがとうございます。
ほっくん呼びは初知りです笑
グループでわちゃわちゃやってる感は可愛いけど、俳優業は上手いなぁって思いますね!
私は映画を観た後に自分に置き替えたりしながら妄想が続いてます。いつまでもラブラブな夫婦は今さら無理だけど、お互いに居心地いい夫婦は目指せるかな?なんて今は思ってます。
パンフレット購入おめでとうございます。
てっきりすでにパンフレットをお持ちだと思って33ページなどとコメントしてしまいました。
ちなみに私は、パンフレットのトウモロコシの写真を見て涙が出ました。不思議なパンフレットです。
コメントバックありがとうございます。
松村北斗って、ファンからは「ほっくん」て呼ばれてるんですか…
「やっくん」「もっくん」「ふっくん」の伝統ですかね…古くてスミマセン🙇
共感&コメントありがとうございます
ひなさんの私のレビューへのコメント、2月15日の夜に読んだ記憶があるのですが、2月16日には見当たりませんでした。
私の勘違いだったらすみません。
さて、ひなさんのレビュー、
様々な視点で本作を捉えていてお見事です。
確かに、靴下は本作のキーアイテムでしたね。
私は、前半の頻繁なタイムトラベルでのカンナとカケルの会話の多さに着目しました。冒頭の倦怠期のカンナとカケルの会話の少なさとは対照的でした。やはり、人間関係はコミュニケーションだなと感じました。
私もカミさんとのコミュニケーションが多いとは言えないので、
数年前から料理を始めた次第です。
では、また共感作で
ー以上ー
コメントどうもありがとうございます。
ひなさんのレビューを読んで、パンフレットの33ページにあるミルフィーユ状について語っている個所を読み返し、再び感動しました。
反芻して咀嚼して楽しめるように、いつでも読み返せるような持ちやすいコンパクトサイズのパンフレットに愛を感じます。
15年間を愛されながら過ごすという世界線で生きたカンナは、駈からのプレゼントである餃子をきっと丁寧に美味しく焼くのでしょうね。
共感・コメント・フォローありがとうございます。
運命は変えれないけれども、時の過ごし方は変えることができる。坂元監督が気にしていた「ネタバレ」は、そういうことかなって思っています。
運命を受け入れ、若い命を救う決意をし、愛に溢れた15年間を選択する。そんな結末を想像できません。素晴らしい物語だと思います。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。