「色々と考えた結果、やっぱり好きになれない」ファーストキス 1ST KISS よしてさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と考えた結果、やっぱり好きになれない
本作がよくできた映画作品であることは否定しません。
コメディ&恋愛もの&ファンタジーとして一定以上のクオリティはあると思っています。なので、他の方々の高評価も理解はできます。
ただ、鑑賞中からずっと喉に小骨が刺さるような感覚があり、その正体がなんなのかがようやくわかってきました。
まず気になるのはラストシーン。
そこに映っているのは、我々が2時間追いかけたカンナではありません。未来からやってきたカンナに惹かれ、自分の余命を悟った駈がその後に結婚した「何も知らないカンナ」です。
何度となくタイムスリップして駈の命を救おうとした45歳のカンナと何も知らない29歳のカンナは、少なくとも駈にとって別人のはず。
カンナと出会い「1ST KISS」をした後、駈はどのような顔をして「別人」であるカンナにアプローチをしたのでしょう。その後15年も一緒に暮らしたのでしょう。15年一緒に暮らしても、最初に出会った45歳のカンナとは完全に別人のはずです。
29歳のカンナは物語上の小道具として、駈の自己満足のためだけの存在にすぎないのです。脚本家の玩具と言い換えてもいいでしょう。
我々が2時間追いかけたカンナはどこへ行ったのでしょうか? SF作品ではありませんから、タイムスリップにまつわる細かな設定を説明しろとは言いませんが、本作の描かれ方では別に世界線で生きているのか、未来が変わった影響で存在が消滅してしまったのかあいまいです。おそらく前者なのでしょうが、そうなのであればそこは描写してほしかった。
あえて描かなかった可能性もありますが、「何も知らないカンナ」と彼女との関係を維持するために様々なことを我慢した駈の生活を描くことに何の意味があるのでしょう?
せめて駈が考古学者として成功し、カンナが目指していたデザイナーにもなっているような描写があれば、大人のおとぎ話として許せたかもしれません。
しかし、「何も知らないカンナ」が駈が書いた手紙を読んで、何を理解できるというのでしょう。
であれば、15年前から戻った45歳のカンナの部屋に駈との幸せだった結婚生活の痕跡を見つけ、最終的に後の手紙を発見するといった終わり方のほうが私は納得できたでしょう。
さきほど、脚本家の玩具と書きましたが、それは29歳のカンナに限りません。
いいタイミングで宅配される冷凍餃子や都合のいいところに現れてカンナの写真を撮る子供たち。多数の大型犬をリード無しで庭に放置するホテルなんて存在するんでしょうか?
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。