「シンデレラである必然性も皆無だが、それよりも雑な復讐劇の方が問題だと思う」シン・デレラ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
シンデレラである必然性も皆無だが、それよりも雑な復讐劇の方が問題だと思う
2024.10.31 字幕 MOVIX京都
2023年のイギリス&アメリカ合作の映画(82分、R15+)
パブリックドメインとなった「シンデレラ」の設定を基に描くスプラッターホラー
監督はルイーザ・ウォーレン
脚本はハリー・ボックリー
物語の舞台は、ヨーロッパのとある町(原作ではドイツのノイシュバイエルン城近辺)
継母ダイアー(ダニエル・スコット)の召使として働くエラ(ケリー・ライアン・サンソン)は、義姉のイングリッド(ローレン・バッド)、ハンナ(ナターシャ・トシーニ)からも執拗ないじめを受けていた
家政婦のアーニャ(ヘレン・フレートン)とその息子モリッツ(フレドリック・ダラウェイ)が唯一の心の安らぎで、彼女は、かつてひと目見た王子レヴィン(サム・バレット)との妄想に耽る楽しみを持っていて、それを日記帳に書き残していた
ある日、レヴィン王子とその家族が妻となる女性探しに屋敷を訪れた
レヴィン王子はイングリッドにもハンナにも興味を示さなかったが、実はイングリットとは恋仲にあって、舞踏会で彼女を指名して、両親を納得させる算段をつけていた
お互いの親に悟られないように演技をするレヴィンは、トイレに行くと言ってその場を離れる
そこで召使のヘラと会うことになり、レヴィンに良からぬ考えが浮かぶ
それは、エラを舞踏会に招待するというもので、それに浮かれたエラは、さらに妄想を肥大化させ、日記帳に書き殴るのであった
物語は、魔法使い(クリッシー・ウンナ)の力によって舞踏会に行くことになったヘラが、そこでバカにされたことにブチ切れて、復讐を果たす様子が描かれていく
魔法使いは、本作では「フェアリーゴッドマザー」という名前になっていて、その姿は醜いクリーチャーのようになっている
冒頭では、フェアリーゴッドマザーを召喚した家族の惨殺劇があるのだが、誰の願いを叶えようとしたのかとか、そこにいる人物の関係性というものはほとんどわからない
おそらくは、ジェイコブ(サム・ブライン)とその妻フィル(サラ・T・コーヘン)と、娘のアテナ(キティ・サッドベリー)という関係性だと思われるが、最後には全員が死んでしまうので、何のためにフェアリーゴッドマザーを呼んで、その力を得ようとしたのかはわからない
考えられるのは、フェアリーゴッドマザーは「力を付与し、目的を達成させたところで手下にするか、自分の肉体を殺させて相手に乗り移って新しい肉体を手に入れる」という目的があるように思う
映画のラストでは、エラがフェアリーゴッドマザーの手下になることを拒んで殺すことになるのだが、あれで死んだとは思えない
その反発も込みで力を与えていると思うので、単に肉体を入れ替えるだけの使い捨てとして力を与え、乗り移るチャンスを伺っているのかな、と感じた
いずれにせよ、スプラッタホラーが好きな人ならOKで、シンデレラである必要も皆無だったりする
復讐劇ではあるものの、殺し方に工夫もなく、目には目をと言った関連性もない
せめて、性根が腐っているから心臓を抉るとか、思考が腐っているから頭をかち割るみたいな関連性があっても良いと思う
おそらくは、シンデレラのネームバリューを使って、流行りのスプラッターブームに乗っているだけなので、作品単体の質はかなり低い
義理の姉にいじめられる設定なのにエラの方が圧倒的に年上に見えるキャスティングも微妙で、本当にスプラッターを見たい人だけに作られた悪趣味な映画なんだなあと思った