劇場公開日 2025年4月25日

「記憶は嘘をつく」花まんま ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0記憶は嘘をつく

2025年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

癒される

もう一昔前の映画になるが、
〔スープ 生まれ変わりの物語(2012年)〕は
タイトル通り「生まれ変わり」をモチーフにした、なかなかの良作。

古くからの題材に、複数の捻りが効いた仕掛けを持ち込むことで、
笑わせて、泣かせてほろっとさせる良作に仕立て上げている。

で、本作。
「生まれ変わり」とは違った印象を受けるのは、
『加藤フミ子(有村架純)』が見ず知らずの他人の記憶を語るようになったそもそもが
冒頭に示されているからで、
生まれた子供に故人の記憶が入り込んだ、が
正しく思える。

とは言え、手垢のついた構図に変わりはなく、
ではここでの差別化は何かといえば、
徹底した{ヒューマンドラマ}化。

亡き両親、とりわけ父親から妹のことを託された
兄『俊樹(鈴木亮平)』がいる。
周囲も彼の境遇を理解し、なにくれとなく手助けをする。

片や結婚式を直前に控えた娘『喜代美』を不慮の事故で亡くした『繁田仁(酒向芳)』がいる。
勿論、彼を気遣う長女や長男は存在も、
あまり救済にはなっていない。

両者を『フミ子』が仲立ちをすることで、
二つの家族が再生する。

そのキーアイテムとなるのが
タイトルにもなっている「花まんま」。

「まんま」は「ご飯」を示す幼児語で、
元々は「飯事(ままごと)」から出ているらしいが、
ここでは「花」を手折って弁当箱に詰めたもの。

それが『仁』に亡き娘の記憶を呼び起こし、
二回の泣かせどころで効果的に使われる。

当然、鑑賞者の側も胸アツ。
場内の彼処からは鼻をススル音が・・・・。

『繁田』家の再生は言わずもがな。
では『加藤』家のそれは何だろう?

『俊樹』の、自分一人で妹を育てた、
そのために多くの犠牲を払ったと
繰り返される自慢話は鼻につく。

一方、妹の身に起こった不思議に困惑し、
幼心にもそれを隠し抑え込もうとする態度には共感する。

とは言え、長じてもなを、妹をコントロール下に置こうとの態度は
自身の価値観の押し付け以外の何物でもない。

役割を果たしたかのように、
次第に薄れていく『フミ子』の中の『繁田喜代美』の記憶。

しかし、『俊樹』にとっての、
妹を守らねばならぬとの呪縛は解けないまま。
父親との自身だけが持つ記憶がプレッシャーになり、苦しめる。

それを一気にひっくり返す出来事がファンタジーなのは
少々興醒めも、終わりよければ全てよし
との言葉がこれほど当てはまる幕切れもそうはあるまい。

ジュン一
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