「切なく、悲しく、温かい」花まんま おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
切なく、悲しく、温かい
予告から絶対に感動する話だと期待していた本作。公開2日目に鑑賞してきましたが、期待どおりしっかり泣かせてもらいました。
ストーリーは、大阪の下町で暮らす加藤俊樹は、亡き父との約束を胸に妹のフミ子を守り続け、母を亡くしてからは親代わりになって妹を育てあげ、いよいよフミ子も結婚することになった矢先、幼き日にフミ子に表れた不思議な記憶と、二人だけの秘密にしていた出来事が、俊樹の心をかき乱していくというもの。
ちょっとファンタジーな要素はありますが、不思議な絆がもたらす人情物語として最後までしっかり楽しませてくれます。悪人はいっさい登場せず、みんながみんな温かくていい人ばかりなので、安心してどっぷり浸りながら、気持ちよく泣かせてもらえます。
父との約束を守り責任を一身に背負って妹のために人生を捧げてきた兄・俊樹、そんな兄の思いを受け止めつつも別の人物の記憶を宿す妹・フミ子、この二人にあふれんばかりの愛情を注いだ両親、兄妹を親身に支えるお好み焼き屋の父娘、そして末娘を亡くした繁田家の人々など、それぞれが周囲の人をどれほど大切に思い、どれほど優しい気持ちで接してきたかが、ひしひしと伝わってきます。
だからこそ、フミ子は繁田家のために文通を続け、繁田家は感謝しつつも甘えすぎることはなく、互いを思いやりながら適切な距離感を保ってきたのでしょう。そんなフミ子と繁田家の気持ちを知り、これまで独りよがりだった自分の生き方を顧みた俊樹の言動が熱いです。結婚式でのスピーチは涙なしには聞けません。人を動かすのは理屈ではなく、人の思いなのだと胸に深く沁みてきます。切なく、悲しく、温かい、それぞれの思いに触れ、大号泣です。
主演は鈴木亮平さんと有村架純さんで、不器用で熱い俊樹と兄思いのフミ子を好演しています。どのセリフからも互いを思う心情が伝わってきて、まるで本当の兄妹のようです。脇を固めるのは、鈴鹿央士さん、ファーストサマーウイカさん、オール阪神・巨人さん、酒向芳さん、キムラ緑子さん、六角精児さんら。流暢な関西弁の話せる実力派ぞろいの盤石の布陣で、子役も含めてすばらしいです。あえて言えば鈴鹿央士さんだけがちょっと浮いてる感じですが、ユーモラスなアクセントになっていたようにも思います。
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