「個人的にはファン以外にお勧めできない映画だとは思われました」ゼンブ・オブ・トーキョー komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
個人的にはファン以外にお勧めできない映画だとは思われました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作は個人的には、出演者である日向坂46のファン以外にはお勧めできない映画になっている、とは思われました。
特に私のような今回の日向坂46の出演者について全く知らない人間からするとそう思われました。
例えば、池園優里香(正源司陽子さん)が班長の班のメンバー間の映画の中の登場人物としての関係性が、(ある程度の仲の良さ以外は)ほぼ裏の背景が伝わらず、対立点あるドラマ性としては弱い人間関係の人物配置だったと思われました。
それぞれの登場人物の背景に深みがないので、例えば、枡谷綾乃(小西夏菜実さん)が東京に出て来る前はオタク趣味で、東京に出て来るにあたってクールキャラにイメチェンしたことが伝えられますが、上京前はどのような作品を好んでいたのか、なぜ東京に出て来るにあたってオタク趣味を捨てたのか、など、枡谷綾乃の背後にある人物の深さが全く伝わって来ず、ひたすらステレオタイプのオタクの人物描写とそこからの浅い東京デビューのイメチェン動機だけが伝わる、浅い人物造形になっていたと思われます。
それぞれの人物造形の背景の深みの無さは、例えば桐井智紗(渡辺莉奈さん)がアイドルのオーディションを受けたいという動機も、現役アイドルの有川凛(小坂菜緒さん)に勧められたから以上の描写はなく、少し消極的な桐井智紗の性格以外の深い人物造形もなかったと思われました。
この他を含めてのそれぞれの登場人物の人物造形の深みの無さは、例えば教師である日沼健二(八嶋智人さん)にも言えて、日沼健二が例えばどのような教科を担当し修学旅行まで生徒とどのような日々を積み重ねて来たかなどが伝わる、深い人物の掘り下げある描写にはなっていなかったと思われます。
唯一と言って良い例外が、女性タクシー運転手の五十嵐佳苗(真飛聖さん)の人物造形で、彼女だけはタクシー運転手としてのこれまでの背景を感じることが出来ました。
ただ推察するに、他の登場人物が余りにも人物背景の深みを感じさせなかったので、女性タクシー運転手の五十嵐佳苗の描写に関しては、演じた真飛聖さん自身が個人で作り上げたのではと、思わされました。
おそらく今作は、日向坂46の出演者を中心に、本人のキャラクターに寄せて初めから当て書きされており、それが要因で映画としての深みの浅い人物造形になっていたのではと思われました。
であるなら、もっとそれぞれの人物背景を(例えば親との関係や、過去の修学旅行前のクラスの人物間の描写など)就学旅行前のシーンとして積み重ねて描いておく必要はあったのではないでしょうか。
映画やドラマは、例えアイドル映画であろうがなかろうが、登場人物の人間描写がそれぞれどれだけ深く、関係性がどれだけ際立ち、物語がどれだけ広く重層的に展開されているか、残念ながら他作品と横一線で比較され評価されると思われます。
今回の日向坂46の出演者は、それぞれが自然で魅力ある演技はされていたとは一方では思われました。
であるならば一層、今回の企画や脚本や演出に関しては、他の映画以上に考え尽くし深みある脚本と演出にする必要があったと思われました。
このようなレベルで一般の観客を騙せるだろうとの、さして興味がないだろうと感じさせる東京やキャラクターグッズやオタク描写やアイドルなどに関する、深みの無いステレオタイプの描写の羅列の志の低さに対して、人間や社会を多角的に深く描く映画の1観客としては、残念でしかないと思われました。
特に最近の映画『#マンホール』などのような秀作を生み出している今作の熊切和嘉 監督には、正直に言って落胆したと、僭越ながら思われました。
企画者も含めて、アイドル映画だからこそ逆に、他の映画よりも何倍も志の高く深い作品を目指して欲しかったと、僭越ながら今後のリベンジを期待しています。