「日向坂四期生をメッセンジャーとしておひさまに贈られる「ハッピーオーラムービー」」ゼンブ・オブ・トーキョー さとちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
日向坂四期生をメッセンジャーとしておひさまに贈られる「ハッピーオーラムービー」
まず初めに言わせてもらうとアイドルが出演してる映画を映画館で見たというのはこれが初めてである。
自分は日向坂を知って4年ほど。
グループ発足のきっかけになる長濱ねるのことは知っていたが、ねる以外のひらがな(今のイッキさん)のことまでは知らなかった…という経緯である。
本格的に日向坂にはまるきっかけになったのは冠番組である「日向坂で会いましょう」からで、楽曲面では「ドレミソラシド」が好きになるきっかけだった。
日向坂はグループのテーマには「ハッピーオーラ」というものがあり、これなしには日向坂は成り立たない。
勿論この映画にもハッピーオーラが存分に散りばめられていて、四期生がその概念をこの作品中で所狭しと提示してくれている。
「おひさま(日向坂のファン)」はその養分を存分に吸収すればいい。
演技がこうだ、物語がどうだといった内容をつべこべと議論するのはナンセンス(ってかおひさまならそんな事しないよな?)
脚本は彼女たち11人のエピソードをもとに執筆しているので、役名が与えられているとはいえど、スクリーンの中で動く彼女たちはほぼそのままのメンバーの姿が映し出されているといってよい。
これはひなあいで彼女たち11人をしっかりと見ているおひさまなら容易に理解できる。
日向坂のメンバーの前提知識がない状態で見ても楽しい作品だとおもうが、より楽しく見るために4期の事は知っておくのがオススメ。
だがその「より楽しむ」の段階にまでなるにあたっては、それほど深い知識が必要とされないという塩梅になってるから面白い。
自分はひなあいの放送回を全部追えているわけではないし、4期生に関しての知識も、純然たるおひさまに比べれば全然比較にもならない程度の知識しか持たない所謂、ライト層に位置する。
でも4期メンバーの愛称やどういったキャラなのかということさえ大体把握できていれば大丈夫。
(例えば…しょげこは少年キャラ、〇天キャラもあざとキャラも両立しているかほりん、レジェはあの愛萌イズムを継承したので男をダメにするタイプである、はるはるは社会人経験ありだから常識人なのかと思いきや…中身はぶっ飛んでる、りなしは最年少メンバーなのに一番年長のみっちゃんより実はマトモである等々)
このように4期に対する知識がちょっとあるだけで映画の楽しさが増すし、所々のシーンにもおっ?とできる場面や思わず笑いがこみ上げてくる場面を見つけることができるだろう。
この映画での彼女たちを見ていると、おひさまなら、「ひなあいでの4期やんw」ってなること請負である。
演技の部分に関しても事前にアンケートをとったうえで脚本に反映させているということもあり、演技を「している」感じが皆無。本当に自然な立ち振る舞いがそのままカメラに収められていると言っても過言ではない出来上がりであった。
例えば、かほりんときらりんの恋バト?の場面は、かほりんはあざとキャラ、きらりんはキレりんちょキャラが理解できていれば、あの演技で作品に落とし込んだとしてもなんら不自然ではないし、演技を見せているというよりかは彼女2人の日向坂における素のキャラの一面を知ってもらうという意味で実に効果的なメッセージとして機能しているように感じた。
とりわけきらりんの演技は特筆すべきもので、かほりんのことをガチで嫌っていないか?と心配になるレベルだった。(当方かほりんと同郷ということもあり「仲良くしてくれぇー」と思ってしまった)
個人的なハイライトは、こにしんが下北沢の場面で、ひらほーにいろいろといいところを見せようとはするんだけど、実際は都会に関してはとんだ知ったか状態で、カフェの注文で通ぶったふりをしようにも店員とのやり取りの過程でどんどんぼろが出てしまうのだが、天然キャラのひらほーにはそれが全く理解できてないという場面になった時には笑った。
それでもなんとか都会キャラを貫こうとシンキングタイム?を取るために、トイレに行くと言うこにしん。
おいおい…演技とは言えど現役アイドルがトイレに行くっていう言葉を発したぞwと思いきや、次の場面ではなんとトイレにいるこにしんの姿がスクリーンにwww
まさに、こにしんのイメージを真っ向から破る体当たり演技である。
(いや、アイドルの常識をも打ち破る革新的な瞬間だ!)
間違いなく観賞後のおひさまは「いやまさか、こにしんがトイレに入ってる絵を見れるとはw」という感想が、いの一番に口をついて出てくることだろう。
そして、そのシーンの最中に、しょげがそのカフェにやって来て、なんとしょげも出る間際にトイレ行く!とか言い出す!w
アイドル×トイレのシーンがこんなに描かれる映画ってあるんだろうか?すげえなこの脚本w
さらに、ひらほーがこにしんを(よく理解してないであろうが)アシストする場面の部分で、「出てくるのに反応が無かったり時間がかかってるってことは臭い(大のほうしてる)ってことだよ」というセリフを言った時にはまさしく「!?」となったw
この瞬間、今作のMVPはこにしんで決まりだとこの時点で確信した、もう間違いない。
この後に本作のハイライトになるであろう、りなしのスマホを取り返そうとする場面すら、完全にこのシーンのインパクトに上書きされた。
たまちゃんチームの、キャラグッズゲット作戦の1連のシーンなんてことごとく蛇足になってしまったw
おひさまの間では未来永劫語り継がれるシーンになることは間違いないよ。こにしんお疲れ様!
あ、ひらほーもいい仕事してたよ。
もちろんこんなふうにキャラが立っているのはこにしんだけじゃない。
はるはるはギャルの出で立ちがはまりまくってて、意気揚々と整理券ゲットしたよ~と余裕をかますが、ひょんな油断から強風に煽られてあっさり整理券をなくしてしまい、無くしたことには暫くたってからようやく気付くというドジをやらかす。
こんな何気ない場面も、ひなあいで共演しているオードリーの番組、「あちこちオードリー」にて明かされた、社会人時代での彼女の失敗エピソードを知っていれば、これまたリンクして笑いが生まれるのだ。
りなしのエピソードは、現役アイドルが映画の中でもアイドルに憧れてオーディションを受けに行くという、メタ要素に富んだ一連のシーンなのだが、彼女が憧れと仰ぐ存在の役として過去回想のシーンで2期生のこさかなが登場。
脇役という扱いでありながら、あれだけの尺であれほどのオーラを残すというのは流石は日向坂の顔である。
おすしやKAWADAさん擁する2期生メンバーの凄さを、映画に直接関係ないことだが再認識する機会になった。
こんな感じでおひさま観点からみて場面が多い本作だが、フラットに1つの映画作品という観点で考えてみたい。
全体的に見て本作は何かひねりやとんちが効いた感じがあるわけではなく、修学旅行の自由時間と言う限られた場面が作品舞台のすべてであるが故、映されるシーンは全てが昼間の時間の出来事であり、煌びやかな東京の夜景といったシーンはない。
また映画のキャッチコピーに「クセつよ」という言葉があるが、自分の場合は日向坂に関する知識がある状態で見ているからか、作中におけるその「クセつよ」の部分が何に当たるのかということが全く理解できないまま終わっていた。
主人公のしょげは自分の立てた旅程(もともと明らかに無理がある)が、実際に現地に行った時に起こるさまざまな予想外の出来事で頓挫したようになるのだが、一人になってしまったとしても自分の出したプランをなんとか自分だけであっても遂行しようと、(寂しさを口にはしつつも)動き続けるというのは、「主人公としてはクセつよ」なキャラだろうか?
もう1人の主人公的な存在であるりなしに関しても、自分だけになれたチャンスを逃さずオーディション会場に颯爽と到着するが、時間待ちなどの流れで自撮りなどしているうちに映り込みにうるさいタクシードライバーに因縁を付けられ、その流れで担任に単独行動が運悪くバレてスマホも取り上げられてしまい、オーディションを受ける気力を失ってしまう...という流れは「映画としてはクセつよ」なストーリーになるのか?
かほりんときらりんのシーンに関しても、どっちが意中の相手に思いを伝えるのかということに関してシーソーゲームのような舌戦を繰り返しながら、やきもきして2人とも切りだせぬまま。結局はその生徒に本命がいたことを知り、儚く夢破れたことで、やけになったようにもんじゃ焼きの店で浴びるように食べる…という展開も「クセ強い?」と問われたら自分は「ん~」となってしまう。
特にたまちゃんを筆頭に、りおたむ、レジェ、はるはるがグッズをゲットしようとチーム戦術でアニメショップやゲーセンに赴く場面に関しては、それを東京であえてやるのか?と1番疑問に感じた部分である。今の時代はインターネットで簡単にグッズなんて手に入るし、クレーンゲームなんて地方にもあるでしょ?
こんなふうに、「一風変わった作品?」という印象を与えるキャッチコピーが打たれている割には、内容に「クセ」に当たる部分があまり感じられない、よく言えば外連味のない、悪く言えばフレーズにそぐわない内容になっていると感じてしまう。
もちろん自分は日向坂に関する知識がある状態で見ているから、知識が全くない状態で見た場合には本作が「クセつよ」と映る人もいるのか?と思う余地はあれど…
本作はオリジナル脚本と謳ってはいるものの、先に述べた通りその格子となるのは彼女たちの実体験がベースなわけだから、台本や演技の部分にクセつよ要素を反映させるということがそもそも難しいんじゃないだろうか?
演技の部分に関しても台本がやはり実体験がベースだから、あまり演技っぽくない形で自然になってしまってるせいで、クセの要素を演技で表すという部分に関しては形骸化してしまっている。
こにしん、ひらほーに関しては外連味が強いと映る人は多いとは思ったが、これまた2人のキャラを理解したうえで全く違和感なく自然に見れてしまうわけである。もっぱらトイレというシチュエーションにかなりの部分が依存しているといわざるを得ないだろう。
おひさまなら分かりますよね?こにしんはボロ出しそうwひらほーもなんか臭いとか言いそうwって。(無いか?)
こう考えると本作の脚本の巧みさが光る。
でもこれらも日向坂のコンセプトを知っているのであれば実に気の利いた演出と理解できる。
日向が生まれるのは太陽が昇っている時間帯だけ。
この作品が日向坂の作品であるということを伝えるためには場面はすべて昼間じゃ無いとダメなのだ。
無論人によってハッピーになれる時間帯は昼間だけではない。
しかし太陽の光というものはやはり爽やかさをもたらすのであり、青空の天気の下暗いエピソードなど一切なく脈々と進んでいくアオハル系ストーリーこそが、今の彼女たちが最大限にその魅力と本領を発揮できる「ステージ」であるということは間違いなく、これぞ正に日向坂の本領である。
映画という舞台でも「ハッピーオーラ」を最大限に表現する4期生の姿を宣伝文句関係なし、もっと言えば日向坂の要素も関係なしにしてまずは1回見てみるべきだと思う。
(もっともこさかなが脇役と言えど出てくる時点で、日向坂要素を考慮しないというのは難しいかもしれないが)
総括として、日向坂の知識があれば見るたびに味わい深く、無くてもフラットな視点でベタな作品として手堅くまとまった作品だった。
日向坂が何たるかということを知るきっかけになる作品として作品を彩った4期生たちの活躍に賛辞を。
そして本作のオファーを受け、自身初めてのジャンルに挑戦し、この作品をまとめ上げた熊切監督に感謝を。
P.S.
舞台挨拶でレジェを皮切りに北海道を舞台に2作目制作を監督に熱望している話があったが、本作のヒット具合ではあり得るかも見たいな話があるけど、難しいのでは?
それこそ尚更パラレルの設定にしないと無理がある。
とはいえ日向坂✖️北海道は望む人は多いはず。