劇場公開日 2025年2月21日

「建物には人の想いが宿るもの」ブルータリスト ihatakaeightさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0建物には人の想いが宿るもの

2025年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

第二次大戦後、ホロコーストを生き延び渡米したユダヤ人建築家の半生を描くヒューマンドラマ。

冒頭数分間で一気に引込まれ鳥肌が立った。215分長尺だが、音楽・映像の演出は秀逸で話にメリハリを効かせていた。劇中メロウな曲からフリージャズ・流行曲まで流れるが、セリフとサンプリングしたり、途中からディストーションが入ると、物語は一気に締まり観客を緊張させる。映像も要所でカメラが前へ疾走するシーンが入るが、各チャプターの転換点としてメリハリがあった。図書室の陽だまり、採石場の明暗、礼拝堂の灰色の静けさ、まるで美術館にいるような独特な空気感があった。

主人公のエイドリアン・ブロディは御見事。教授然の振舞いもピンチ涙目八字眉も見惚れた。建築家の職能も踏まえたクリエイターの狂気と弱さをほどよく演じていた。また主演男優賞取るだろうか。妻役フェリシティ・ジョーンズも、信仰的背景と夫婦愛を踏まえた難しい役どころながら存在感があった。寝室での二人のやり取りをどう捉えるか、も映画の見所の一つだろう。

物語は、バウハウス出身の近代建築家がアメリカ新興富裕層に依頼された多機能礼拝堂を建築するだけだが、建物には人の想いが宿るもの。例えマイホーム・工場・駅・教会でも各々に人のドラマがある。重層的なドラマの切り口が映画内で上手く機能し厭きさせない。
鑑賞後にフィクションであった事に安堵したが、戦後心身共に傷ついたユダヤ人達の、多くを語らず現実と向き合う葛藤は伝わった。映画鑑賞としては、ストーリ中心に楽しむも良し、伏線も多そうなので深く考え没入し楽しむも良しだ。

幕中やエンドロールの音楽にも工夫があり、じっくり聴ければもう一つの楽しみがあるかもしれません。IMAXでプレミアシートに座っての観賞もいいかもです!

ihatakaeight
ihatakaeightさんのコメント
2025年2月24日

こちらこそありがとうございます。

アクションもいいけど、ああいう役も合ってますよね。オスカー楽しみです。

ihatakaeight
ゆーきちさんのコメント
2025年2月24日

共感ありがとうございました。

彼が主演男優賞取ったら2度目になりますね!

ゆーきち