「赤、赤、赤!」ザ・ルーム・ネクスト・ドア 関東Bluesさんの映画レビュー(感想・評価)
赤、赤、赤!
まず感動したのが赤色の使い方。イングリットのコートの赤、ランプの赤、キッチンベンチの赤、鮮やかなブルーのソファのパイピングの赤、ドアの赤、二人の口紅の赤…と挙げればキリがないほどに赤。 日本では皆同系色にコーディネートする傾向があるが、赤とブルー、グリーンとのクッキリとした鮮やかな色のコントラストがとてもオシャレで記憶に残る。自分の家もあんな風にしたいとワクワクした。
私は映画を観る時、自分の経験に置き換えたり、自分ならどうするか考えながら観る傾向がある。この映画に関して言えば、四年前までオーストラリアで看護師をしていた時を思い出させた。救命救急で働いたせいもあり、抗がん剤治療の副作用や痛みで来る患者さんを多く見た。生に対する執着や死に対する恐れは人それぞれ違う。私が住んでいた州では当時、安楽死は認められていなかった。忘れられないあの50代の女性の癌患者さんは、痛み止め以外の全ての治療を受けない選択をしていた。痛みが治まり、物静かにベッドの上で読書をしていた。かっこよかった。とはいえ、知らないだけで、実は取り乱したり、泣き叫んだりしたのかもしれないが。今は合法になった安楽死があの時あったならば、最後の最後まで痛みに苦しみ大量の鎮痛剤を朦朧とするまで打たなくとも、マーサの様に癌に支配されるのではなく、自分で自分の人生をコントロール出来たのにと思うと少し悲しくなる。 私自身、同じ立場に立ったなければどうなるかわからないが、マーサやあの患者さんの様に最後は潔く、かっこよく逝けたらいいなと思う。
色、デザイン、女優さん達の揺らぎの表現力、素晴らしかった。 強いて言えば、マーサと最後に出てくる娘の二役がどうも好きになれなかった。顔も声もそのままなので、ちょっと一瞬ストーリーから集中力がそれて我に帰ってしまったので、ひようかは3.5。そっくりさんでやって欲しかった。