「パイの様に何層にも重なった感情」ザ・ルーム・ネクスト・ドア ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
パイの様に何層にも重なった感情
ラストシーンを迎えた時に、感謝、希望、悲しみ、やるせなさ、安らぎといった感情が何層にも重なったパイの様に押し寄せてきて、この気持ちを例える言葉が見つかりません。
私は過去に日本人の安楽死に関するドキュメンタリー番組を3本観たことがあり、安楽死に非常に関心があります。理由は、死期が近いのに強い痛みが続くことに耐えられないと思っているからです。日本社会では安楽死はおろか死もタブーになっているので、なかなか本気で死を語られることもありません。だから、ドキュメンタリーで安楽死を選んだ方の気持ちを知りたかったのです。
本作はもちろんドキュメンタリーではありませんが、アルモドバルのクリエイティブが妙に身体にしっくりきて“死”を受け入れた先にあるのが、“決して恐ろしくない何か”ではないかと感じました。
そして、マーサとイングリットの友情の描き方がいつものアルモドバルらしさ満載で、これは男性の立ち入る隙はないですね。もし、イングリットが男性だったら絶対に逃げ出すと思います。アルモドバルの描く女性はいつも肝が据わっているし、それこそが女性の本来の姿なんですよね。
マーサのデスクの中にあった数えきれない小物やノート、レコードや本やアートが、マーサの想い出の象徴の様で、なんだか妙に心に残りました。
“死”は隣のドアを閉める様に自然なこと。でも隣のドアを開けた先には新しい始まりがある。のかもしれないと言われているようでした。
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レントさんのコメント
2025年2月17日
わたしも確か報道特集でスイスで安楽死する日本人女性を追ったドキュメントを見ました。今度劇場用に編集したものが公開されるらしいですね。正直、見るとメンタル的に応えますけどね。