「飲酒喫煙する十三億人の妹」国境ナイトクルージング TRINITY:The Righthanded DeVilさんの映画レビュー(感想・評価)
飲酒喫煙する十三億人の妹
北朝鮮のさらに北側に位置する朝鮮族自治州の中心都市・延吉。
知人の結婚式のためにこの地を訪れたハオフォン。現地の観光ガイドを勤めるナナを介し、その友人シャオとも親しくなり、しばし三人で行動を共にすることに…。
ヒロインのナナを演じるのは「十三億人の妹」と称されるチョウ・ドンユイ(周冬雨)。本作で飲酒喫煙だけでなく、濡れ場も演じている。
三十歳すぎたのでいけなくはないが、前に観た『少年の君』(2019)では高校生役だったから、そのギャップに正直驚き。
『ソウルメイト/七月と安生』(2016)を観た際も感じたことだが、イメージの定着がいやなのだろうか、妹キャラには程遠い大胆な演技を本作で披露している。
彼女の「絡み」の相手ハオフォン役は、TVシリーズ『榔琊榜弐』(2017)や『九州縹緲録』(2019)で若くして主役を演じたリウ・ハオラン(劉昊然)。
透明感ある瞳にどこか戸惑いの色を宿す彼に神経症で自殺願望もあるハオフォン役はぴったりだが、チョウ・ドンユイも含め若い世代に人気のある二人。知らずに観てショックを受けるファンも多いのでは?!
目標を見失った若者が何となく肩を寄せ合い、理由なく離れていくプロットは古くからある青春ドラマの定型。
怪我でアスリートを断念したナナ。
親の期待どおり高給取りのエリートになっても生き方に悩むハオフォン。
勉強嫌いで親族の下で料理人に甘んじるしかなかったシャオ(チュー・チューシャオ(屈楚蕭)演)。
「生きたいように生きる。それが人生」という彼の言葉は、まったく胸に響かない。
霧に阻まれ辿り着けなかった天池は、彼らの人生の暗喩なのだろう。
「これで終わり?!」と言いたくなるようなラストも含め、鑑賞者の想像に委ねるタイプの映画だが、見る人の推測を誤誘導させる仕掛けを最後で空振りさせてる手法がユニーク。
大きな起伏もなく、肩透かし的な終わり方に賛否はあると思うが、個人的にはそれなりに退屈せずに観ることができた作品。
本作のリウ・ハオランと、『西湖畔に生きる』(2023)のウーレイ、対称的な若い二人の共演作(できれば歴史劇)を、いつか劇場のスクリーンで観てみたい。
鑑賞後に目にした週刊文春シネマチャートでの本作の評価は、意外にも概ね好意的。
芝山先生なんか『ジョーカー2』で星2つしか点けなかったのに。