「設定が今時代日本へのメタファーだとしたら就職氷河期世代への冒涜だろ!」ヤマトよ永遠に REBEL3199 第二章 赤日の出撃 ミスターKさんの映画レビュー(感想・評価)
設定が今時代日本へのメタファーだとしたら就職氷河期世代への冒涜だろ!
まず先に言っておきます。私は筋金入りのヤマトオタです
旧作は幼稚園時代にVHSで頭にすり込まれるほど見ました。当然プラモも買ってますし、リメイク版も全て見てます。
2199は大絶賛を送ったクチです。出渕裕監督はあの作品に「今のアニメ技術でやれることをヤマトでやってやろう!」という、新しい意気込みがすごく感じられる作風となっていました。
ところが福井監督に代わった2202以降は、ヤマトにSFとしての面白さより、現代に向けてのメッセージ性をのせることに力を入れたらしく、パンフレットの前書きを読んでも少々説教くさい内容が続いていました。が、監督の個性の差だと思って大目に見てきましたが、今回は目に余るメタファー的設定が散見されたので、さすがに腹に据えかねたため今回一意見として筆を執らせていただきます。
設定としては既におおよそがネット上にあふれかえっていますが、今回の敵は旧作のなんちゃって未来人ではなく、正真正銘未来の地球(らしいです。まだ第2章なのでどんでん返しがあるかもしれませんが)。その連中によると、なんとガトランティス戦役での波動砲大量使用により、かのユリーシャが危惧していた「宇宙が引き裂かれる」現象、空間裂傷が生じ、地球は骨のような姿、旧作の母星デザリアム本体のような姿に変貌、それまでの間に人類はAIを進化させ、マザーデザリアムなる統合AIによって全てを管理される文明になっており、これにより人類は旧ガトランティスの「レギオネル・カノーネ」に集結していた艦隊残骸からガトランティス人の肉体を解析して自らの人体に応用するようになり、機械的進化を遂げたというわけである。
そして2205年時点でデザリアムが最初に事を起こしたのはイスカンダルをデザリアム時空間に持ち去ること、すなわち今回の舞台となる3199年に引っ張っていき、波動砲多用の影響でボロボロになった地球を再度コスモリバースで再生させることが目的だったことが判明。なんともはや、地球人類が生き残るために行ってきたやむを得ない所業の結果とは言え、業の深いこと超巨大ブラックホールの深淵並である。
さて、イスカンダルを持ち去るという行為は因果は巡るというかなんというか、波動砲問題の張本人ヤマトに邪魔されてしまうわけで、そこから彼らの計画は、自力で作ったコスモリバースもどきを1000年前に送り込み、イスカンダルの欠片たるサーシャと、ヤマトに搭載されている純正波動コアを手に入れようとする。そのための第一歩として、2207年時点の地球との融和を図ろうとするが?・・・
言ってみれば、ここまでが第2章のあらすじ。
さて、察しの良い方々なら既にこの時点で数々の矛盾点に気がついているでしょう。
まず第1に、あのガトランティス戦役の土星沖海戦で使用されたマルチ体形の「沢山」波動砲wは、イスカンダルが過去に使った波動砲の数より多かったということなのか?いくら時間断層で波動砲艦隊を大量生産したとはいえ、文明の開きが天と地ほどもあったイスカンダルが過去に使用した波動砲の数より土星沖での波動砲の使用数の方が多かったって?
そして第2に、土星沖で波動砲艦隊が使ってた波動砲の数を遙かに上回る威力のトンデモ波動砲を、ヤマトが地球近海で撃ってるんですけど?そう、復活篇からとってつけたような名前の「トランジット波動砲」とかいう、通常の何乗倍にも及ぶ威力のヤツ。あんなもん撃ってたら土星沖より先に地球近海で空間裂傷が発生するとちゃうの?
第3に、イスカンダル純正の波動コアって普通は量産できるなら解析用に回されてヤマトにも量産型の波動コアが乗せられるんじゃないの?さらに言うなら、2199にてビーメラ4でもう一つ純正波動コア(水色)を手に入れてるのに、あれはどうしたの?
さらにはデザリアムが2205年の時空間に現れることが出来た点について、劇中ではアルフォンさん曰く「偶然」の一言でかたづけられている。どうやらこの世界には時空間を超えて人為的に移動する技術はないらしいが、ならば波動エンジンのワープ機能に備わった光速を越えても通常の時間通りに進めるアインシュタイン真っ青の機能がこの世界にはあったはずだが、それもどうなってるの?
さて、話は少し横道にそれます。このリメイク作品には、旧作復活篇の設定を引き継いだ部分があり(つまり制作陣は復活篇をやり直す気満々のようだが)、BBY-02、つまりヤマト型2番艦の武蔵(ムサシ)が存在します。マジです。2202の際に1/1000銀河のプラモを購入した人ならご存じでしょうが、武蔵のデカールが存在しますし、1/1000の「アンドロメダDX」という、アンドロメダ級をいくつも作りたい人用の電飾なし簡易キットの方の説明書にもBBY-02の存在が記載されています。そこには、ヤマトや過去イスカンダル文明が使用した波動砲の痕跡は全て天の川銀河中心に向けて進んでいたとされ、そこに吸収されていたという調査結果も記載されています。このために武蔵は銀河中心への長期探査へ、そしてヤマトが遭遇してきた数々の異性文明の原点、アケーリアス文明の調査のため、AAA-07、すなわちアンドロメダ級7番艦の「ラボラトリーアクエリアス」という船がアケーリアス文明の調査に乗り出したことも記載されています。そしてそこには、「別々の方向へ旅立った2つの艦は、各々の調査を行ったが、数年後、銀河系中心部にて出会うことになる。2つの事象は密接に関係していたのだ。」という記載も。
これがフラグだったとすれば、時間断層をぶっ壊して古代と雪を助けたのがきっかけで、なおかつ波動砲の痕跡の影響で銀河中心に時空結節点が発生し、デザリアム進行のきっかけになったかもしれません。今のところあくまでも推測ですハイ
さて、本題です。私がこの映画を見てなぜ就職氷河期世代への冒涜と受け取ったのか、ですが、このリメイク版ヤマトの時間軸立ち位置を3者に分けてみましょう。
1、2199年まで、ボロボロになりながらもヤマトのおかげで地球を復興できた人たち、
2、その後の1000年で、さらに生き残るためにも必死に戦いながら、それでも過去の過ちにより母星がボロボロになったデザリアム文明
3、それに抗う、2207年時点以降のヤマト乗組員や反デザリアム派たち
福井晴敏監督の作品が現代に対するメタファーを含めることが多いということを前提に置くと、
1=戦後から高度経済成長の波に乗れた日本、
2=バブルにうつつを抜かし、その崩壊後負債を払い続けている現代日本とそれに取り残される就職氷河期世代、
3=今後の日本を背負うであろうZ世代以降と日本へ移住してくる外国人
と見ることが出来ます。
ここで1つ重要なことがあります。この作品におけるデザリアム、すなわち未来の地球は、2207の最後のシーンで明かされたとおり、アンドロメダ級が後年においても大量生産されている未来の地球、つまり、古代と雪が高次元世界から救出されず、時間断層が存在し続けている「選択されなかった別次元の」未来の地球であるということです(2205の設定資料集で明かされているそうです)。
2205の時点で、メルダースはヤマトを含めた第65護衛艦隊との邂逅について「彼らとの邂逅は記録にない。おそらくは大喪失に関わる記録・・・」と述べてます。大喪失とは今回の第2章で、未来の地球が空間裂傷の影響でボロボロになった際に失われた記録、ということらしい。だとすると、そもそもヤマトの記録は、ガトランティスの滅びの方舟と対消滅した時点で終了となっていることだと思えます。だからこそ、時間断層が残り、アンドロメダ級が超大量生産され、地球が戦い続け、AIが主力になった、2202で言われていた「G計画」が推進され続けた結果がこのデザリアム文明なのではないでしょうか。
そして本作は、この壊れてしまい間違ってしまった未来を、コスモリバースを使って元に戻そうというのが根幹にあります。
もしこれが現代日本に対するメタファーだとしたら、とんでもなく就職氷河期世代を馬鹿にし、冒涜しています。私は現在41歳。つまり超就職氷河期世代に分類される年齢ですが、はっきり言って今の生活は青息吐息です。給料は上がらない、余計な仕事は増える一方、上司はバブルに入り浸った無能世代、下は「残業?ナニソレオイシイノ?」なZ世代、それでいて税金も保険も物価も何もかも上がり、まともに貯蓄どころかその日の食事を得ることすらままならない始末。「こんな日本に誰がした!?」と大声で叫んでやりたいですが、叫ばなくても誰が原因かはわかっています。高度経済成長後半からバブルにかけて当時に我が世の春を歌って先のことを考えずに堕落した政治と経済基盤を作った団塊ジュニア・バブル世代です。我々就職氷河期世代はバブルの落とし前を30年以上も払い続けています。にも関わらす一行に政治も経済も改善はしません。
この3199という作品が世相を表しているなら、まさに間違った未来を進まされた我々就職氷河期世代が、バブルという負の遺産と一緒に忘れ去られるか駆逐されるかを選べと言われているように思えます。なにせ作品は最終章になればヤマトが勝つんですから、デザリアムに値する我々就職氷河期世代は邪魔者なんでしょう。
福井晴敏監督は現在56歳。おもいっきりバブル世代です。そんな彼らには次以降の世代の苦しみなど人ごとなんでしょうね。だからこそエンターテイメントなんかに仕立てておもしろおかしく描き立てることが出来るわけだ。
2199の時のワクワク感を返して欲しいです。これが出渕裕監督だったらどれだけ良かったか・・・(あ、そもそもあの人は続編は作らないぞ!と言っていたクチかw)
最後に、作中で最悪だったのがヤマトの発進シーン。
予告で出てきた発進シーンまでなら「お、良い表現かな?」と期待していたのに、その次のシーンからいきなりヤマトが全速前進していて、旧作のように岩盤の中からゆっくり存在感を表しながら全体像が出てくるあの様にはとても追いついていません。劇場で思わず「やり直せ!」と叫びたくなりました。
あと5章、大丈夫かなぁ・・・
旧作でデザリアムは地球人を騙そうとして乗っ取る展開だから、それに合わせ、騙そうとする理屈をあーでもない、こーでもないと矛盾しないように考えたのでしょう。
が、2202の時にも感じた悪いものがまた出てきそうでイヤですね。
庵野秀明ヤマトが控えてる以上、失速しなきゃ良いのですが。