「女性蔑視とは「女性には自分の住所すら教えられない」という恐ろしいことだった。 問題をわかりやすく、面白く広く世界に訴えられる。 これぞ映画の大きな存在意義のひとつだ。」花嫁はどこへ? ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
女性蔑視とは「女性には自分の住所すら教えられない」という恐ろしいことだった。 問題をわかりやすく、面白く広く世界に訴えられる。 これぞ映画の大きな存在意義のひとつだ。
主役のプールは、少し天然で実に可愛らしく、優しい。
地味で大人しく真面目。
これまで、親の言いつけを守り家庭の中だけで育ってきたが、何の不満も無く、好きになった男性と結婚
こんなことが無かったら、結婚した後もそのまま新しい家庭に入り、これまで通りの暮らしを送って、幸せな過程を気付いていたに違いない。
それももちろん悪いことではないけれど、ひとたび今回のようなことが起きると、自分の人生に疑問を持たざるを得なくなる。
自分の住んでいる場所の住所もわからず、村の名前すら憶えていない。
一歩、村の外に出ると、一人では戻ってくることすらできない。
愛する夫の名前すら口にすることが許されない。
(このことだけは文化であるともいえるけれど)
それでもいいのか。
片や、もう一人の主人公ジャヤは、聡明で賢い。
自分の意見を口にし、振る舞いも自由。ビジネスの才能もあるらしい。
そんな人でも、女性だからその才能を生かすことができない。
自分のやりたいことができない。
親に言われたとおりの結婚をするしかない。
女性の権利の問題を映画にするような場合には、彼女のような話になる場合が多いと思う。
本作でも、映画の半分の重要な軸ではある。
しかし、本作では、あくまでも物語の中心がプールである点が重要である。
声も上げず、つましく生きてきて、愛する男性と結婚し、自分の村に戻りたいだけの女性が、それだけの願いをかなえたい、ということを描いている。
心が優しく他人を思う彼女のことは、黙っていても、周りの人の方から助けてくれる。
そんな優しい話だからこそ、訴えたいテーマが心に響く。
ラストのラストに、愛する夫の名を声高に叫ぶ。
このことだけで、彼女の心の変化がわかるとても良いラスト・シーンでした。
観て良かったという気持ちになれる素晴らしい映画でした。
その反面、世界のすべての人々に、男女平等が実現されるのは、いつになるのか。
女性が暴力で支配されることが無くなるのは、いったい何百年先なのか。
100年先でも実現しないことは確実だ。
そう思うと何とも悲しい。
人類とは如何に愚かで進歩がないものかと、暗澹たる気分になるのでした。
いい映画は、面白く観れて、後味がいいのに、後で自然にいろいろと考えさせられる。
コメントありがとうございました!確かに。ジェンダーギャップっていったい何なんでしょうと思うこと、しばしばありますよね。各世代ごとの価値観=文化といえばそれまでですが。今の子供たちは色々勉強してますから、これから10〜20年でインドも日本も変わると思いますね!