「この映画は、エストニアの人々には全く違って見えただろう。」エストニアの聖なるカンフーマスター 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画は、エストニアの人々には全く違って見えただろう。
エストニアと言って思い出されるのは、バルト3国の一つで、バルト海の向こうはフィンランド、合唱が盛んなことか。長いこと、ヨーロッパ(特にドイツ)とロシアの間で揺れてきたエストニア。この映画の背景は、1973年のソ連占領下。
中国との国境警備隊に駆り出されて、西洋のロック(ブラック・サバス)と、アジア(中国―香港)のカンフーの洗礼を受けた青年ラファエルが、エストニアに命からがら戻り、なぜかカンフーの盛んなエストニア正教(ギリシア正教とロシア正教の間か?)の修道院に紛れ込み、一度はモンク(修道士)になるなど、まるで神様のような取り扱いを受ける。
おそらく、エストニアは、西洋(ロック)とアジア(カンフー)の力を借りて、ロシア(ソ連)の影響と斗いたいのだろう。その象徴が言わずと知れたKGB。ロシアとの戦いに苦しむウクライナの今と全く同じ。
もちろん、エストニアの人々は、そんなことは一言も口にせず、映画を楽しんだに違いない。ほんの少しだけ、フィンランドの名匠カウリスマキの映画の香りがした。ウオッカをラッパ飲みしたり、黒パンが出てきたりするところなど。
そういえば、ロシアの宮廷では、長くモンゴルの影響が残っていたことを思い出した。
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