「エミリオ・エステヴェス監督・脚本の傑作!」ボビー mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
エミリオ・エステヴェス監督・脚本の傑作!
ボビーとは、68年に大統領候補選出直前に暗殺されたロバート・F・ケネディのこと。
この映画は暗殺された6月5日、暗殺現場になったアンバサダーホテルを舞台に暗殺されるまでの1日を描いた作品。彼を直接描くのではなく、その日ホテルにいた従業員やお客たち22名を「グランドホテル」形式で丁寧に描くことで当時の世相を描いていく。
当時、彼(ロバートFケネディ)はアメリカの希望の星であった。そしてその民主党の予備選挙での圧倒的勝利の歓喜のなか、凶弾に彼は倒れてしまう‥。
最初は、いわゆるグランドホテル形式の様々な人間模様を描き方がTV的(表層的、せわしない)で、もっと突っ込んだほうが良かったかなと思って見ていたが、ラストのロバートFケネディ演説から暗殺までが圧巻。演説がフェイドアウトし、彼と彼を取り巻く時代のドキュメントフィルムが挿入される。そこにサイモンとガーファンクルの名曲「サウンドオブサイレンス」が効果的に使われる。
構成が素晴しい。彼自身を描くのではなく当時の、それもその日にたまたま居合せた人々を描いていき、彼がその希望の星であることを観客に実感させた直後に暗殺シーンになる。観客は、そこに居合せた人々と同様に失望感と喪失感を味わってしまう構図だ。
彼が唱えた内容は、それほど政治的な内容でなく、暴力の連鎖を断ち切ることの大切さを訴えている。まさしく現在にも通じる内容。当時アメリカは、この暗殺によって、脱力感や喪失感を味わっていったのだろう。結局共和党のニクソンが大統領に選出され‥。それでまた暴力の連鎖を生んで‥。きっとあのときロバートFケネディが生きてたらと思った人は少なくなかっただろう。もしかするとそれ以降の時代の流れも変わったかもしれないと。それは、あの「9.11」の衝撃にも似ている。その後のブッシュの対テロ政策へと力対力の暴力の連鎖の時代‥。
監督・脚本は、エミリオ・エステヴェス。雰囲気が彼が出演していた「セント・エルモスファイアー」(彼は出演だけで監督ではないが)に似ている。それに出演していたデミー・ムーアも出てくる(また同じようにお騒がせ役)。
アンソニー・ホプキンスが製作に名を連ね、渋い演技をしている。それにシャロン・ストーンがなかなかいい。見ているときは分らなかったが、クレジットで気づいた。