「新婚旅行と最初の夜を家族総出で押しかけて台無しに! これは新婦がカワイソすぎる……(笑)。」五等分の花嫁* じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)
新婚旅行と最初の夜を家族総出で押しかけて台無しに! これは新婦がカワイソすぎる……(笑)。
キャラクター推しのファン・ムーヴィーとしては百点満点。
でも、お話の内容としてはどうなんだろう??
『五等分』は本編も完結編の映画版も、
脚本はゆるんゆるんだったからなあ(笑)。
(そのへんの文句は、映画版『五等分の花嫁』でネチネチ書いたので繰り返さない。)
このシリーズとしては、まあこんなもんなんでしょうか。
★なお、この感想では「誰が風太郎の結婚相手なのか」に関して、固有名詞の記述があるので、アニメシリーズ本編を未見の方はご注意ください。
また、このあとは概ね文句ばっかりなので、ファンの方はスルーされるか、あまりお気になさらないように……。
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水着。着替え。リゾート。デート。
ファン向けの目に楽しいイベントには事欠かない。
なので、長年『五等分』を観てきた身としては、
ふつうに愉しく観られる映画であったことはたしかだ。
ただ……、
●新婚旅行に4人(しかも全員もともと風太郎のことが好きだった女)がひっついてくるって設定自体、四葉に対する扱いがひどすぎないか? 新婚旅行といいながら全員分のしおり作ってうっきうき気分の風太郎も、四葉の鷹揚さに甘えすぎてるようにしか思えない。
いや、「五等分の花嫁」のタイトル通りっていえばタイトル通りなんだけど。
●ハワイに着いてからも、延々5人+1人で遊んでて、周囲に新婚カップルに対するデリカシーのかけらもない。何よりひどいのが当の風太郎で、4人がさすがに気を利かせてドロンするまで、自分から二人きりになろうとする気配がかけらもないのは本当にひどいと思う。けっきょく二人きりになってからも、たいしてイチャコラしてるわけでもないし。
こいつはマジで結婚しても、いまだに気分は「五等分」なんだろうか……。
●ホテルに泊まる最初の夜に、新郎に無理やり飲ませて、大切な新婚(旅行)初夜を叩き潰そうとする父親も、たいがい頭がおかしいと思う。付き合う風太郎も風太郎だ。
で、実際に父親の謀略に見事にはまって、四葉との夜をスルーすることになる風太郎。四葉は泣いていい。
●結果的に新婚旅行最初の夜を「別々に寝るはめになった」カップルが、翌朝そのことを気にしている様子がないのも淡泊過ぎる。まさか、レスカップルなのか? 少なくとも風太郎は、四葉にさみしい思いさせてごめんなさいを、ちゃんと言わないといけないでしょう。
ほかにも、
●到着して一番核となるイベントが、「風太郎と四葉」の話ではなくて、突然でてきたハワイの女の子のお守りってのも、なんとなくしっくりこない。
だいたい、路上で偶然知り合った英語も覚束ない旅行中の日本人女性に、いきなりデート指南を頼みこんでくる子供とか、まずもってあり得ないだろう……。
●いくら観客が期待している「お約束」だからって、20歳もとっくに過ぎた五つ子が、相変わらず全員で変装して入れ替わり作戦とか実行してるのも、かなり子供っぽすぎないか?
しかも、自分らで子供相手に散々やらかしておいて「嘘はつけない」とか言い出してネタばらししてるのも、大人としてどうかと思う(笑)。
●一花が二乃に変装してハワイを歩いていたら、女優と認識されて人だかりができるってことは、「同じ顔をしている」2も3も4も5も、「変装している一花」と四六時中間違われてないと辻褄があわないのではないのか。逆に「一花」と「二乃」の見た目はもう見分けがつく程度に印象が違うというなら、「二乃に化けた一花」が一花だとバレるくらいに、世間一般の人からも五つ子は「見分けられる」ということになる。どちらにせよ、作品の前提となっているロジック(=五つ子は見分けられない)と整合性がとれていない。
●二乃には無線で積極的に英語のサポートをしようとしてたのに、三玖が日本語でしゃべっててもみんなほったらかしだし、英語教師じゃない五月に英語しゃべらせたり、作戦自体が行き当たりばったりすぎる。単純に「人気者の五つ子全員に均等に出番と見せ場を与えるためだけの並列的な枠組み」に過ぎないのが辛い。
●風太郎の旅のしおりの話も途中でうやむやになっているし、5人が順番に水着試着に行く冒頭の過去話もあまりに「並列的」。だいたい娘の水着を剥き出しで持参する父親が気持ち悪すぎる。風太郎と四葉が二人でデートするシーンがあるのはとても良いと思うが、やってる手芸とか、置物づくりみたいなのに馴染みがないので、あんまり観ていて面白くないし、「そこまでないがしろにしていた正妻に、こんな高校生みたいなデートとプレゼントでおしまいなの?」という印象しか抱けなかった。
●「五人がそれぞれ悩みを抱えていて、それを風太郎が解決する」って話も、デート指南話が終わったら突然後半の埋めぐさみたいに浮上して、それぞれの悩みがしょうもないうえに、それを「入れ替わり」で解決しようって風太郎のアイディアが最低すぎる。
せっかく五人がそれぞれ「別の道に進んで」五等分じゃない人生を歩もうというのが、『映画版 五等分の花嫁』の最終結論だったと思うんだが、それを全部ご破算にするようなアイディアを意気揚々と出して来る風太郎の無成長ぶりにびっくりする。
●で、結局はそれぞれが勇気を出して目の前の試練に立ち向かって終わり。そんなんあたりまえだろう(笑)。最後も、なんとなく尻切れトンボな感じだったような。
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結論:基本的に「新婚旅行」を題材としながら、この映画での四葉の扱いはあんまりにあんまりで、さすがに不憫すぎる。
やっぱり、もともと「人気も五等分」だったから、四葉だけが風太郎の寵愛を受けるような展開にしたら、他の推し担が許さないだろうという、制作者側の慮りなのだろうか??
ああいう「同じ顔」で「同じ程度のスキル」の五つ子が「ライヴァル」としているなかで、そのうちの一人と結婚した場合、ふつうはもっと男は妻を「特別扱い」しないといけないし、他の4人は今まで以上にきちんと「線引き」して接しないといけないというのが、常識的な振る舞いではないかと思うのだが。
「五等分」の世界では、結婚しても「五等分の花嫁」は「五等分の花嫁」であり、相変わらず5人を対等に扱わないと、四葉も含めたそれぞれの五つ子が風太郎を許さないし、背後(現実世界)に存在する、1,2,3,5の親衛隊も風太郎を許さない、という悪しき構図があるということか。
高校時代特有の関係性が、20代を過ぎても持続するうえに、中の一人と結婚してもハーレム属性が変わらないってのは、かなり奇異な「結婚後」の状況である気がする。
たしかに、誰が勝つかわからなかった風太郎争奪戦を経て、それぞれの姉妹にファンがついている状況下で、「結婚後にどうなったか」を描くのはとても難しい差配を迫られると思う。
四葉と風太郎の決断のせいで、五つ子のなかで不和が生じていたり、必要以上に他の四人に「負け犬感」が出たりしたら、非常によろしくないからだ。
でも一方で、それなら高校自体のノリはそのままで新婚旅行に行かせちゃおうってのも、個人的には大いにひっかかるところがあるのも、前述のとおり。
こういったダブルバインドで苦しむくらいなら、無理して「新婚旅行」を題材にした特別編なんか作らなくても良かったと思うんだけど……(笑)。
まあでも、懐かしい六人の「変わらない」元気な様子を観られただけで、基本的には感謝し、満足しないといけないんだろうな……。