「五つ子の成長」五等分の花嫁* おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
五つ子の成長
勉強嫌いで成績の芳しくない同級生の中野家五つ子姉妹と、その家庭教師として彼女たちと向き合った上杉風太郎の織りなす青春ラブコメ「五等分の花嫁」シリーズ。本作は、放送5周年記念のテレビスペシャルアニメとして製作されたものの先行劇場公開です。きれいに完結した物語にどんな展開を与えてくれるのかと期待して、公開2日目に鑑賞してきました。
ストーリーは、結婚した風太郎と四葉の新婚旅行に便乗して計画した、姉妹全員参加のハワイ旅行で、二乃が突然現地の少女から相談を受けたことから始まる騒動の中で、今は別々の道を歩む五つ子がそれぞれに抱える悩みに向き合っていくというもの。
2022年の劇場版で、これ以上ないほどきれいに完結した物語ですが、その終盤ですでに匂わせていたハワイ旅行。当初から本作の製作は想定内だったのかもしれません。でも、結婚後の物語となると、恋の駆け引きや切なさをもう描けないので、シリーズの魅力が半減するのではないかと危惧していました。しかし、そこは抜かりなく、冒頭は5年前の五つ子の水着選びの回想シーンが用意され、甘酸っぱいドキドキの関係性を思い出させるとともに、ファンへの嬉しいサービスショットとなっており、本シリーズの魅力を改めて感じます。
ただ、今回はハワイ旅行が中心に描かれるのですが、バカンスシーンは思ったほど多くはなく、ストーリー自体もそこまで興味をそそられないのはちょっと残念です。ハワイで出会う少女からの依頼も、唐突すぎてイマイチ乗れません。その少女の悩みに答える形で、五つ子の悩みも解消していこうという流れは悪くないのですが、五つ子の悩みがしっかり描き込まれてないので、なかなか共感しにくかったです。
それでも、風太郎の提案する“入れ替わり作戦”を受けて、五つ子が出した答えには、心に響くものがあります。少女の悩み相談は、この結末に導くための“振り”であったと思えば、ここまでの茶番のようなストーリーにも納得がいきます。テレビアニメのための尺の都合でしかたなかったかもしれませんが、ここはやはり五つ子の悩みとその背景を丁寧に描いてほしかったです。基本プロットがいいだけに、非常にもったいなく感じます。
とはいえ、シリーズの新作が観られるのは嬉しいかぎりです。もし次作があるなら、劇場作品かテレビシリーズで、尺を気にせずにじっくり描いてくれたら最高です。
キャストは、松岡禎丞さん、花澤香菜さん、竹達彩奈さん、伊藤美来さん、佐倉綾音さん、水瀬いのりさんら、お馴染みの布陣。プロの演技は、さすがの一言です。
今回は舞台挨拶中継があり、松岡禎丞さん、竹達彩奈さん、伊藤美来さんが登壇されました。みなさん口々に新作製作への感謝を語っており、作品愛が伝わってきました。ただ、上映後であったにも関わらず、裏話があまり聞けなかったのは残念でした。でも、それ以上に残念だったのは、関連グッズの宣伝が多かったことです。特別興行料金、高額な豪華版パンフレットとあわせて拝金主義を感じ、鑑賞後の気分が下がります。