劇場公開日 2025年2月7日

「擬人化されるロボットと動物たち」野生の島のロズ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5擬人化されるロボットと動物たち

2025年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

幸せ

絵柄がとてもセンスがあって美しく、動物たちもとてもかわいい。ロボットのロズもとても優しくて癒される。人間に奉仕するためのロボットだからその声も優しい女性の声に設定されてるのだろう。吹き替え版と両方鑑賞して綾瀬はるかさんの吹き替えは物凄くマッチしていた。さすがサイボーグ役もこなした俳優さんだけのことはある。

舞台は未来の地球で温暖化による気候変動で大都市が水没していることから同時期に公開されたやはり動物たちしか出てこない「Flow」とほぼ同じ。ただ、かの作品と違い本作は内容的にあまり深みはないように思われた。
何か深いメッセージが込められているかと鑑賞中考えたがそういう作品ではなくもともと児童向け絵本が原作なのでそこまで深く考える必要もないのかもしれない。

強いて言うなら自然(野生)と文明の共存をテーマにしていると考えられなくもない。しかし本作で描かれる動物たちは完全に擬人化された存在で本来の野生の姿ではない。
ロズが世話をする雁の雛キラリは本来兄弟の中では一番小さく生まれた個体で、捕食要員だった。彼が捕食されることで他の兄弟は生き延びることができて種の保存に役立つ。人間から見れば残酷な自然淘汰のシステムもちゃんとした理由があってのこと。肉食動物は自分の子供に食べさせるために狩りやすい小鹿を狙う。彼らも命がけの狩りをしている。間違えば大人の鹿の角に致命傷を負わされるとも限らない。
人間社会では子供を餌食にすることは残酷だと言われるが残酷などというのは人間の尺度でしかない。彼らは自然界でお互い狩り狩られる関係で共存関係を築いている。人間同士のように仲良く暮らすことを彼ら自然界で共存とは呼ばない。
本作は彼ら捕食する側される側を同じ場所に集めてお互い協力して苦難を乗り越えようなんて人間社会の話を無理くりに動物たちに投影させている。
児童向け絵本だから動物たちのそういう姿を通して子供に人間社会でそのように生きることの大切さを教えようという本作の意図が見えてくる。そういう意図で本作は作られたものなのだとしてようやく納得できた。
元来擬人化とはそのように子供が学びやすくするために使われてきた手法なんだから。大人だともっと深い意味があるのではないかと考えて見てしまうが本作はむしろ前述の「Flow」とは真逆な作品として楽しむのが正しんだろう。

ちなみにロボットの擬人化と書いたけどロボットが限りなく人間に近づいていくとこの言葉は意味をなさなくなる。人間と何ら変わらない感情や心を持つまでに至れば人間そのものなのだから擬人化の余地はなくなるんだろう。

キラリたちの群れが嵐を避けるために人間が食料栽培をしてるドームに潜り込む場面、あんなにたやすく潜り込めるのだから今までも他の鳥の群れが侵入することなんてあったはずなのにあの混乱ぶりが可笑しくて笑えた。侵入を許すどころか自分たちでドーム破壊してるわけだし。あれじゃあ森で動物たちに簡単に追い返されるわけだ。文明は所詮自然にはかなわないと言いたいのかな。温暖化で水没することも避けられなかったわけだから自然をなめるなと本作は言いたいのかも。

レント
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