劇場公開日 2025年1月10日

「孤独のグルメは初見だったけど、普通に楽しめた。」劇映画 孤独のグルメ おけんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0孤独のグルメは初見だったけど、普通に楽しめた。

2025年2月14日
iPhoneアプリから投稿

めちゃくちゃ良かった。孤独のグルメは初見だったけど、普通に楽しめた。
今回松重さんが監督も務めているというのもすごい。

ストーリーは「スープを作るための材料探し」というトレジャーハントものでありながら、行く先々で出会う素敵な人とグルメを楽しんでいく物語。予定調和だけではない展開ながら、2時間できちっとまとまっているコンパクトさがとても良かった。いろんな土地を巡ることもあって、物語のテンポが良く、爽快感もある。主人公の五郎はただスープを作るために食を線と線で結んでいたつもりが、いつの間にかその食を通じて五郎に出会う人々は結ばれていく。何かゴールに向かって生きる人生の中でも、大事な出会いや思い出は意外とその道中の脇道に転がっているものかもしれないなと思った。

映像の作り方や演出も面白く、特に画角の使い方が勉強になった。2人以上の登場人物がいるときは、話し手にカメラを向けることで画の変化を作れるけど、1人だとそれができない。その分、画角に遊びがあって、見ていて飽きなかったのが印象的だった。
その中でも特に綺麗だったのは引きの画の構図。構図のことは全くわからないけど、広い画面なのに情報が洗練されていて、どこを見ればいいのかがすぐにわかる。不思議な感覚で、構図の勉強をしてみたくなった。
お店を探すシーンから入店し、食事をするまでの流れは編集の凄みを感じた。画角や構図、BGMの選曲とタイミングなど、細かく分解してじっくり見たくなるほどだった。お腹が空いたときのお決まりシーン(ポンポンポンという音と共に徐々に引きの画になっていくやつ)が印象的なモチーフになっていたのも良かったし、食事シーンでのBGMのタイミングも絶妙で、進行に緩急をつけていてとても心地よかった。

また、五郎と出会う人々との距離感も絶妙で、出会った人と深く関わるわけでもなく、何かひと段落すればまた1人に戻る。その流れが、「孤独のグルメ」はこれからも続いていくんだなと思わせてくれる。松重さんのコワモテな雰囲気と、たまに出るチャーミングなおとぼけやコミカルな走り方とのギャップも面白かったし、キャスティングも豪華で、次は誰が登場するのかというワクワク感もあった。

ネタバレになるので詳しくは言わないけど、主人公の井之頭さんに対して善福寺さんという人が出てくる。どっちも吉祥寺あたりの地名っぽいけど、詳しい人ならもっと深い意味に気づけるのかもしれない。もし深掘りできる人がいたらぜひ教えてほしい。

観終わったあとは、2時間の映画以上の物語を観たような感覚だった。ちょっとした頼まれごとのはずが、いつの間にかたくさんの人々の人生や運命をいい方向に変えてしまう展開がとてもハートフルだった。

おけん