「【”幻のスープの具材を探して三千里”食材探しの波乱万丈のロードムービーからの名作ラーメン映画”タンポポ“風の流れがじんわりと沁みる作品。主演、初脚本兼初監督でこの作品レベルって松重豊さん、凄いなあ。】」劇映画 孤独のグルメ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”幻のスープの具材を探して三千里”食材探しの波乱万丈のロードムービーからの名作ラーメン映画”タンポポ“風の流れがじんわりと沁みる作品。主演、初脚本兼初監督でこの作品レベルって松重豊さん、凄いなあ。】
■飛行機で、且つての恋人で今は亡き小雪の娘、千秋(杏)の祖父一郎(塩見三省:嬉しい。)の願いで絵を巴里まで届ける所から、もう美味しそうである。機内食のビーフシチューか、焼鳥丼で悩むところから(機内食あるあるである。)、巴里について相変わらずの嗅覚で選んだビストロでオニオンスープとビーフブルギニョンを頼み、美味しそうに食べるゴローさん(松重豊)。
で、千秋と一郎に絵を届けると、一郎から”想い出のいっちゃん汁を探してくれないか?”と頼まれて、引き受けてしまうゴローさん。
で、ナント、サップボードで五島列島の島へ向けてゴー!と思ったら、台風に遭ってアッサリ遭難。流れ着いた島は韓国領域で、曰くある女性だけのコミュニティ。出会った志穂(内田有紀:ホント、不老の人だなあ。)達に美味しそうな韓国料理を御馳走してもらい、韓国入国手続きをわざわざ入国審査官(ナント、ユ・ジェンミン!)に港まで来てもらい、その後東京で志穂の元夫(オダギリジョー)で、半分やる気がないラーメン屋さん”さんせりて”で炒飯を頼んだら美味しくって、スープ作りを常連の中川(磯村勇斗)と共に頼んじゃうゴローさん。
良くまあ、尺2時間に満たない中で、このストーリーを収めたモノである。
◆感想
・ヤッパリ、ゴローさんの食事を美味しそうに食べながらの、脳内ナレーションが良いんだよね。そして思うんだ、食事を美味しそうに食べる人に、悪人は居ないよねってね。
・個人的には、塩見三省さんを久しぶりに観れた事が、嬉しかったな。キャスティングも松重さんが指示したのかな。若手からベテラン、そしてユ・ジェンミンまで登場するとはなあ。
・ご飯も当然美味しそうで、特にユ・ジェンミン演じる入国審査官を待たせての、食事シーンは面白かったな。ゴローさんならぬユ・ジェンミンの脳内ナレーション。”コイツ、ホントに美味そうに食うな・・。”クスクス。で、そこで重要な食材ファンテ(タラの干物)を見つけてしまうのである。巧い脚本だなあ。
・で、東京に戻って志穂の元夫の店に行って、炒飯を二度食べて腕の確からしさを確認した上で、”いっちゃん汁”を作って貰うシーン。ナカナカ味が出ない所で、ゴローさんはファンテの干物を思い出すのである。
そこからの展開は、伊丹十三監督の名作「タンポポ」を思わせる。志穂が考えた”さんせりて”のロゴマークがタンポポのロゴマークに似ていて、ようやく完成したスープで作ったラーメンを、ゴローさん、中川、滝山(村田雄浩)がカウンターに座って、夢中で食べてスープを一斉に飲み干すシーンは、絶対に「タンポポ」へのオマージュだと思ったな。
<その後の展開も、とてもハッピーで、ドラマに敬意を表したような嬉しいサプライズ(ナント、遠藤憲一さんが主演のグルメ番組ロケで”さんせりて”が使われる。)が韓国の志穂のコミュニティで流れて、送られて来た元夫のスープを飲んだ彼女が、コミュニティの皆にラーメンを作ろうと立ち上がったり、ユ・ジェンミン演じる入国審査官の家族が、同じくTVで流れるグルメ番組を見ながら、あのゴローさんが美味しそうに食べた店で、漸く焼きサバを食べるシーンの連動性など、見事でありました。
今作は、食材探しの波乱万丈のロードムービーからの、名作ラーメン映画”タンポポ“風の流れが、じんわり沁みる作品なのである。重ねて書くが、主演、脚本を兼ねた初監督でこの作品レベルって松重豊さん、凄いなあ。>