「似非金字塔」HAPPYEND ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
似非金字塔
秋映画はいつにも増して若手監督のオリジナル作品が出ており嬉しい限りです。
ただ今作含め予告から醸し出される負のオーラがどうにも引っかかってあらすじだけならまだしも、いざ予告を見るとなんかきな臭いなーと思いながらの鑑賞でしたが悪い方にその予想が当たってしまいました。
少し先の未来の日本でのお話で日本人以外にも多国籍の生徒が在籍している学校がメインになるのですが、近未来のはずなのになぜか描かれるキャラクター描写なんかは平成中期くらいに逆行しているのがどうしても気になりました。
そんな先の未来でも大して変わってないんだろうなーというのはあるんですが、特に何も進歩していないようで2024年のifですよーと言われても全然納得できる世界観だったのでそこも引っかかってしまいました。
ユウタとコウの距離が離れていくと書いてあるので序盤から中盤にかけてガッツリ仲が悪くなっていくもんだと思ったら途中途中ブチギレて突き放して、かと思いきやまたつるんでの繰り返しだったのは友情ってこんな感じなのかなってなりました。
自分はくっ付いて離れての友人関係は全く無かったのでそこへの共感はできませんでしたが、世の中にはこういう友情もあるのかなという物珍しさの体験にはなりました。
悪ガキたちが善悪の区別もつかないままの反抗を若気の至りで済ませていいものかと何度も何度も思ってしまいました。
最初のクラブへの侵入だってダメだっつってんのに入ろうとするし、なんなら違法に潜入するし、タバコも酒もダメだって言われてるのにルールに対しての反抗だなんだといってはやりまくるし、学校の教室で学校の機材が危ないかもしれないから撤収したのに、それを盗られた盗られたーとのたうち回っているのはみっともなかったですし、それを地震のアラートを使って職員を惑わせて部屋の鍵を奪って機材を回収していく流れはもうほんとク○ガキでしばき回したかったです。
監視システムでよろしくない行動をした生徒はペナルティポイントが加算されていくものが導入された事に対して苛立ちを覚えるのはまぁ分かるんですが、そもそもの原因が校長の愛車を縦向きにした事がきっかけなのに、事が大きくなっても名乗り出ず、ただただ文句をツラツラ垂れているだけというのが本当に見てて気色悪かったです。
あたろう君も格好が注意されたらその場しのぎでも良いから直せば良いのに延々と中の指を立てて挑発するばっかでぶん殴りたくなりました。
野球部の子がタバコを注意して拾っただけでペナルティを課されているのをユウタとコウが笑ってるのは本当に腹が立って、不愉快さのあまりに劇場を出ようかなとも思ってしまったくらいです。
よくよく考えたら自分が高校に通っていた時もスマホを使ったら没収ってのは当然でしたし、授業中にスマホをいじる理由が無いのにいじったから没収された事に対して疑問をぶつけまくってた同級生を見ていたのであれのグレードアップ版が今作の監視システムなんだろうなーと思いました。
校長室に立てこもっての講義も本当にただ立てこもっただけで誰にも得はないですし、寿司をテイクアウトして食べさせようとしてくれた校長(ちょっと強引だったけど)の厚意をガン無視してゴミ箱に寿司を捨てたところも非常に不愉快でした。
実際の寿司を捨てたわけではないにしろ、やはり食事を粗末に扱う作品は本当に大嫌いなので再び劇場を飛び出したくなりました。
あと完全フルフェイスのやつが持ってきたキンパはあんなに美味しそうに食べるのかよ、それワンチャン薬とか盛られてるとか考えないのかよという疑問も生まれてしまいました。
フミがやたらめったら反抗的なのは誰かしらの影響を受けていたり、日本国籍ではない生徒が差別されている事に対しての怒りも込みで行動しているんだろうなとは思うんですが、なんか自分に酔ってるんじゃと勘繰ってしまうくらいよく見る先導者みたいだったのも強烈な違和感を感じさせるところでした。
卒業式パートもなーんか曖昧でトムは何故か卒業式前に引っ越すし(もしかしたら卒業式後の映像だったかもしれないけれど)、あたろう君が服に校長の車が立っているものを刺繍して出席しているから全く反省してないなとなりましたし、その後なんか爽やかに出会いと別れをやってるけど、それまでの行動を青春として流すにはあまりにも身勝手すぎて感動のかの字も無いまま終わっていったので呆けてしまいました。
役者陣は皆々様若手の方々で主演2人は今作がスクリーンデビュー作という事ですが素晴らしい演技をされていてどのシーンも見入ってしまいました。
だからこそよりそのキャラクターに怒りも憐れみも感じてしまったんだなと思いました。
学生を卒業してから時間の経った大人から見ると今の学生ってこう思われてるのかな…と少し悲しくなりますし、「ナミビアの砂漠」と同じく若手監督ってこの世に不満を多く抱えながら生きて、そればかり映画に投影しているのかと心配にもなってしまいます。
こういう作品が評価されるのも理解できますし、こういう警鐘があっても良いと思うんですがどうにも多すぎてこの世代の自分はゲンナリしてしまいます。
そもそも車を縦向きに立てたのってどうやってやったんですか?
鑑賞日 10/28
鑑賞時間 18:40〜20:40
座席 C-12