「世界の不公正が作る溝を越えて、いかに友情を維持するか」HAPPYEND jinminさんの映画レビュー(感想・評価)
世界の不公正が作る溝を越えて、いかに友情を維持するか
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「みんなの安全のため」「食べ物を大切にする」といった道徳を盾に、権力が静かにじわじわと人民の自由と権利を奪っていく世界。
マジョリティゆえに弾圧を賢くやり過ごせるユウタと、マイノリティゆえに弾圧をリアルに感じ反発せざるを得ないコウ。
幼馴染で親友の二人の溝は深まっていくが、職質でのコウへのあからさまな差別を目にしたユウタは、だんだんと考えを変え、コウのために自己犠牲を果たす。
ユウタとコウの二人をはじめとする、多様なバックグラウンドを持つ友人たちは、不公正で抑圧的な社会に触れるたびに、その多様性ゆえにお互いの溝を広げてゆく。それでも友情を維持し関係を続けていく事の重要さを思い知る、素晴らしいラストだった。
地面が震える度に権力は抑圧を増し、弾圧の予感にコウは怒りと恐れで震える。この連動が特に印象的。
権力の静かな弾圧は賢く受容し、お上に歯向かう抗議やデモを迷惑で愚かなものだと疎ましがるマジョリティの描写も見事だった。
コウが感じた、世の中の不公正をやり過ごしてひたすらに楽しもうとする友人たちへの苛立ちや孤独感は、日本で社会運動をやらざるを得なかった人たちみんなが共感できると思う。
主人公二人のありかたから連想した『ガキ帝国』では、なんのためらいも葛藤もなく民族差別への怒りが表明されてたのを鑑みると、いかに日本で正義が笑われ続けて民主主義が後退したかを思い知らされる。
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