「がむしゃらに突き進むと失うものもある」ACIDE アシッド Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
がむしゃらに突き進むと失うものもある
9月3日(火)
有楽町駅を降りたらいきなり強い雨が降って来た。酸性雨でない事を祈りながら映画館へ急いだ。
TOHOシネマズ日比谷シャンテで「アシッド」を。
冒頭、労働争議のシーンがあり占拠された会社に突入した警察官をボコボコにしたミシャルは逮捕され、仮釈放中で足にGPSを着けられている。争議の原因になったのは事故で脚を怪我して手術を受ける事になったカリンのようで、ミシャルの今の彼女らしい。殆ど説明がないまま展開するので、壁に貼られたカリンの紙や殴っているのがミシャルである事を見落とすとこれはナンノコッチャ状態になりそうだ。
警察官をボコボコにした時の動画が拡散され、それで娘のセルマは学校でイジメを受けている。セルマは厩で馬糞をイジメの相手の口にネジ込み問題になる。学校に呼び出されて来たのはミシャルの元妻で母親のエリーズとエリーズの兄で、父親のミシャルはカリンの所に行っていて来ない。この辺りの人間関係も展開が荒く上手く表現されていないので、イマイチである。
南米で甚大な被害をもたらした強酸性雨を降らせたのと同じ雨雲がフランス上空に発生し、被害が出始める。授業で馬のトレッキングに森に行き置き去りになったセルマを迫りくる雨雲から助けるために、ミシャルとエリーズは車を飛ばして森に向かうのだが…。
やって来る雨雲と降り注ぐ強酸性雨から逃げ回る人々とその混乱を描くだけで、深みが無い。南米で発生した事例があるなら、何らかの対策を講じる事が出来たのではないかとか、川に落ちた人が亡くなるのも、あんなに流量がある川でだめなら地面に溜まった雨で車は走れないだろうとか、フランス側は駄目でベルギー側は大丈夫なのかとか(ベルギー政府?は被害者救済しているのにフランスは何もしていない。皮肉か)
トレッキングで遅れたセルマと馬をそこに待たせたまま先に行く教師の行動や、あんなにイジメの相手に対して強い気持ちを持っていたセルマが雨中ではただ助けてと泣き喚くだけだったりとツッコミどころ多すぎ。
「ツイスターズ」みたいに雨雲に何か打ち込み雲散霧消させるとか中和させるとかがあったらまだ面白かったのにフランス映画はそんな事はしない。
激情型ミシャルの(世話になった親子もほったらかしで)彼女に向かって一方的に突き進む姿だけを見せられた映画だった。