劇場公開日 2024年10月18日

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「パキスタンのある家族の物語を通して何を見る?」ジョイランド わたしの願い Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0パキスタンのある家族の物語を通して何を見る?

2025年3月30日
iPhoneアプリから投稿

伝統的価値観と家父長制の閉塞感と、そこから逃げ出したいという自由への渇望、しかし結局は互いに首を締め合って狭い世界から抜け出せない現実。三すくみの社会は、あたかも『ホテル・カルフォルニア』の歌詞のようでもあるが、ひょっとすると外のば、その中で幸せに暮らしていられるのかも知れない。しかし、いったん、その外の自由を知ってしまったら耐えられないものに変質していく。さらに、ビバに象徴される外の自由な世界ですらも、その中では別の苦しみがあり、どこまで行っても決して呪縛からは逃れられないのかも知れない。

途中までは(狂言まわしのビバと共に)ハイダルの物語かと思っていたのだが、終わってみるとムムターズの物語だったのかなという気になる。だが、これら3人以外のすべての登場人物が形は違えど、それぞれに葛藤を抱えているという意味で即ち、観ている観客たちもその当事者とならざ得ない、ということを意味しているのであろう。

ちなみに、日本では2024年に公開だが、本作が作られたのは2022年。パキスタンで初めてLGBTQを扱った作品ということで本国では上映禁止になったのだが、2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんらの運動により公開されたそうだ。

なお、タイトルの「ジョイランド」はラナ家の近くにある遊園地の名前。ヌチとムムターズが家を空けて束の間の自由を楽しんだ場所でもある。そこで「願ったもの」はいったい何

Tofu