「【”ありのままで良い。”今作は自閉症アスペルガー症候群の息子と交わした”推し”のサッカーチームを決める為に、週末にスタジアムで試合を見るルールを必死に遂行しようとする父や家族の姿が沁みる作品である。】」ぼくとパパ、約束の週末 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ありのままで良い。”今作は自閉症アスペルガー症候群の息子と交わした”推し”のサッカーチームを決める為に、週末にスタジアムで試合を見るルールを必死に遂行しようとする父や家族の姿が沁みる作品である。】
■幼児の際に、自閉症アスペルガー症候群と診断されたジェイソン(セシリオ・アンドレセン)は、学校でも同級生には揶揄われ、手を出してしまう問題児。
そんなある日、同級生から好きなサッカーチームを聞かれた彼は、ドイツの一部から三部の56チームの試合を見て決める、と言い出す。
父ミルコ(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)は、それまで仕事が忙しい事を言い訳にジェイソンの面倒を妻ファティメ(アイリン・テゼル)に任せて来たが、妻から責められ一念発起し、息子の願いを叶えようと毎週末、ジェイソンとドイツ各地のスタジアムを訪れる。だが、その旅はナカナカ大変で・・。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・列車の食堂ではパスタにソースがちょびっと付いていただけで、大騒ぎするジェイソン。アスペルガー症候群は拘りが強いんだけど、あの対応は大変だなあ、と思ってしまう。他のお客さんから見れば、只の我儘な子供に見えてしまうしね。
・ジェイソンが、環境に悪影響を与えていないかを常に気にする所も、ミルコにしては大変なんだけれども、結構重要だし、ネオナチを含めたナチスを嫌っている所も良かったな。
・旅の途中で、ジェイソンは、ミルコに”自分の決めたルールで頭の中が戦争状態だ!”と言うのだけれども、成程なあ。
■ミルコは仕事と絡ませて行った或る週末、ジェイソンの行動で仕事に行けずに、言ってしまうんだよね。”仕事に熱心なのは、お前と接する機会を少なくするためだ!”とね。
我慢の限界だったのだろうな。
けれども、旅をする中でミルコが哀しそうな顔でエレベーターのボタンを何度も押しながら上下するジェイソンの姿を見て、息子の生き方がルールの間を行ったり来たりする”エレベーターの様な人生”だと気づいて、親として一緒に乗るしかない!と決心するシーンがとても、良かったな。
・人と接触する事が極端に苦手なジェイソンが、スタジアムで歯を食いしばって身体検査に耐える姿や、ミルコがスタンド内では息子を他のお客さんから触れられない様に必死に庇う姿なども、沁みたな。
<エンドロールでも流れるが、自閉症アスペルガー症候群の子は100人に一人いると言われている。
そして、様々な偏見にも晒されているとも。
けれども、今作ではジェイソンの両親と祖父祖母が彼の特性を認め、優しく接する姿やジェイソンがクラスメイトの前で”僕は自閉症。だから良い所も悪い所もある。”と堂々と喋り、クラスメイトもその姿を静かに見ているシーンも良かったなあ。
今作は、前半はジェイソンの態度に少し苛苛するシーンもあるのだけれども、後半の展開にそんな気持ちになった事を可なり反省した作品でもある。>
■今作は、サッカー大国ドイツのFCバイエルン、ドルトムント、フォルトゥナなどのホームのサッカー場や大観衆の姿が観れるのも、サッカー好きには堪らなかったな。
それと、ジェイソンがブラックホールや、星が大好きで量子力学の知識も凄いことを、専門博士の前でスラスラと喋るシーンには感動したな。今作は実話だそうなので、ジェイソンのモデルの子が、将来にホーキンス博士やアインシュタインのようになって欲しいなとも思ったよ。