グラディエーターII 英雄を呼ぶ声のレビュー・感想・評価
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業界屈指の映像派であり、美術から照明など細部にわたりディテールを詰めて構築していく完璧主義者であるスコット監督のこだわりがぎっしり詰まった本作に、その徹底ぶりには脱帽ものです(^^ゞ
本作は2000年に世界的な大ヒットを記録、米アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5部門を受賞した大作の約四半世紀を経た続編です。前作は、古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として苛烈な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション「グラディエーター」。齢80歳を超えた巨匠リドリー・スコットが再び監督を手がけ、前作とも密接につながった復讐劇です。
●ストーリー
ローマ帝国が栄華を誇った時代――。
将軍から剣闘士に身を落としたマキシマス(ラッセル・クロウ)が皇帝を討ち果たし、命を落とした前作の後、妻のルッシア(コニー・ニールセン)は、わが子ルシアスを権力闘争に巻き込まれるのを避けるため、密かにアフリカのヌミディアへ亡命させていたのです。 十数年後。ヌミディアでルシアス(ポール・メスカル)は、「ハンノ」という名前で平穏に暮らしていました。しかし将軍マルクス・アカシウス(ペドロ・パスカル)率いるローマ帝国軍の侵攻によって愛する妻を殺され、すべてを失い、捕虜になってしまうのです。その後ルシアスはマクリヌス(デンゼル・ワシントン)という謎の男と出会います。彼は奴隷商人でした。ルシアスの心のなかで燃え盛る怒りに目をつけたマクリヌスの導きによって、ルシアスは暴君カラカラとゲタの皇帝兄弟が支配するローマへと赴き、マクリヌスが所有する剣闘士となるのです。そして将軍アカシウスへの復讐心を胸に、力のみが物を言うコロセウム《円形闘技場》で待ち受ける戦いへと踏み出していきます。
一方、アカシウスは皇帝たちに忠実に仕えていましたが、彼等の悪政に耐えかねて、再婚したルッシアと共に反乱を計画したものの発覚。反乱を引き起こそうとした罰として剣闘士として戦うこととなります。ルッシアの目の前で、夫と息子がコロセウムで命をかけて戦わされることに…。
●解説
「aftersun/アフターサン」の繊細な演技で注目された気鋭の俳優ポール・メスカルが、筋骨隆々のアクショシスターとして主役を張ることにまず驚かされます。今回は絶望を経て激しい怒りを抱く役柄で新境地を見せるです。
今撮影中の『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』で主演するペドロ・パスカルは、将軍アカシウスの苦悩を体現し、多くの観客の共感を呼びそうです。
そして何といってもデンゼル・ワシントンでしょう。彼が扮する奴隷商人マクリヌスの存在が徐々に際立ち、権力の陰から野心をぎらつかせて、濃厚なドラマを堪能させてくれました。代表作「トレーニングデイ」を思い起こすような悪役で、恐ろしさが魅力的。心から乗り気で演じているのが伝わり、さすがの存在感でした。
ルシアスはマキシマスの子で、劇中では前作でラッセル・クロウが演じたマキシマスの映像が度々差し込まれます。彼が扮したマキシマスの歩みをなぞるようですが、もっと数奇な運命に直面していくのです。「歴史は繰り返す、ただし皮肉な形で」とでも言うように。物語としては"貴種流離譚"~高貴な身分に生まれた者が他郷を彷徨いながら試練を克服していく説話の類型に則ったものといえます。
物語の規模感やドラマがもたらす興奮、感動は前作の域を出ていないとも感じましたが、マキシマスに胸を熱くした人にはぜひおすすめしたいと思います。
1800年ごろの近世が舞台の「デュエリスト/決闘者」でデビューしたスコット監督にとって、因縁と対決の物語を描いたコスチューム劇の「グラディエーター」は原点回帰と呼べるものでもふりました。今回の「Ⅱ」も、「最後の決闘裁判」「ナポレオン」といった近作と同様に、業界屈指の映像派であり、美術から照明など細部にわたりディテールを詰めて構築していく完璧主義者であるスコット監督のこだわりがぎっしり詰まった最新作で、その徹底ぶりには脱帽ものです(^^ゞ
●感想
配役が素晴らしいうえ、映像のスケール感が圧倒的。 民衆を熱狂させる残酷ショーが繰り広げられるコロセウムには、怪物のような猿も登場するなど、血塗られたケレン味は前作より増ていました。なんといってもコロセウムに水を張り、歴史上の有名な海戦を再現する“模擬海戦”シーンの迫力に舌を巻きました。これは実際に古代ローマで行われていたというから驚きです。
剣を取り合わない世の中へ
正直期待しすぎていた。
前作はあの湿っぽさと静寂した雰囲気が評価されていると勝手に思ってるんだけど、本作にはそれがなく、ただひたすらに1の展開をなぞってるだけの映画になってしまっている。それでも十分面白く、150分弱にして飽きることは一切ないんだけど、所詮は2だなって感じでやっぱりどうしても劣って見える。
およそ24年ぶりの新作となったわけだけど、映像的な部分は技術の進化によりとんでもなくパワーアップしており、息を飲むほど圧巻ですごく興奮したものの、脚本はかなり雑。というか、リドリー・スコットの俺様を見てくれ!感がスゴくてちょっとな...。
目で見て、感覚的に面白い!と思える要素は前作と比較して明らかに増えている。映画館映えする映画であり、配信が主流になりつつある現代において大スクリーンで見ることを必須とするこのスタイルは、素晴らしいなと思った。87歳にして映画館を盛り上げ続けるリドリー・スコット。流石だ。
現代技術をふんだんに使いながらも、対人戦には癖のあるカメラワークと演出で圧倒的な没入感を与えてくれる。ハッキリ言って話はどうだっていい。音がなくてもわかる破壊力。年々、暴力描写に磨きがかかっている気がする。R15+になったこともあって、絶対的な権力に仕えることの辛さとグラディエーターという恐怖がより伝わってきた。
ただ、キャラクター性はかなり弱い。役者陣は相当頑張っていたし、ポール・メスカル、ジョセフ・クインに至ってはつい最近売れたばかりなのに、こんな難役よくも手を取るようにこなせるよなと驚きの連続だったけれども、そもそもの設定が前作と比較した時にかなりチープな感じだし、先程も言ったように前作をなぞっているだけの作りになってしまっているから、全体的に二番煎じ感が強い。
まあ可哀想な話でもあって、いまや大俳優のラッセル・クロウとホアキン・フェニックスの跡を継ぐというのは正直無理な話。ペドロ・パスカル、デンゼル・ワシントンも強烈だったものの、ちょっと映画用にデフォルメされ過ぎていて、内から出る憎悪や自己顕示欲といったものが感じられなかった。
「ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー」とすごく似ていて、あの時の主人公が不在というのは続編としてかなり難しく、みんなのヒーローに勝てるキャラを用意するのは相当難しい。地味になるのは必然とも言える。それを本作では、より壮大なアクションと暴力による恐怖を真正面から描くことで、ストーリー以上に魅力的なものを用意しており、尚且つそれを取っておきにすることなく定期的に見せてくれるもんだから退屈は全くない。のだけど、アクションにワクワクするとはいえ、ストーリーにワクワクしないもんだから、いくら大それたことやっていても上手く乗れない。というか、総じてエンタメ色が強すぎるがあまりに、おふざけ感が出ちゃってる。サメとかサルとか...ちょっとちゃうでしょ。
リドリー・スコットが「オレ、人生かけて古代ローマ史勉強してきたんだ!だから見てくれ!オレすげぇもん作れるから!」と自慢を垂れてるのが容易に想像できる。好きな監督だけど、「ナポレオン」然り、最近はちょっと自分の知識を自慢する面倒くさおじさんになりつつあると思う。こうなったらマズイ。「最後の決闘裁判」は個人的にリドリーベスト映画だと思うから、まだまだいけるはず。
まあねー、監督の出世作にもなった映画の続編はなかなか難しいよねー。そんな中でよくやったと思う。IMAXで見てよかったと思える映画であったことは間違いないし、バイオレンス描写でしっかり恐ろしさを感じたのは久々で、やっぱすげぇなーと思うところは沢山あったし。
満足度は高いけど、時間が経ってよく良く考えれば...あれ?そんなにじゃない?と思っちゃう系の映画。前作のインパクトが強すぎた。改めて前作見たら、評価爆上がりしてしまうかもな。でも、もし見るなら映画館必須。映画はやっぱり映画館じゃなくっちゃ!多額の予算をかけて、それを証明してくれました😆
名作の続編だけあってお金かかってるとは思う
なにせ、前作から時間が空いているもので、内容がうろ覚えでした。
映像としては闘技場をはじめローマの大きな建物や船の戦いなどの規模が大きく、迫力があってすごいと思いました。
かなりお金をかけたことでしょう。
残虐な剣闘を見せ物にしている古代ローマということで、首を刎ねとばしたり、暴力的な表現が多いのも、異文化を表現した映像として、良いとは思います。(個人的には残虐なのは嫌いだけど)
ただ、ドラマとして感じる面白さはいまひとつだと思いました。
例えば、死んだ妻が本作で主人公に与えた影響は、どれだけあったでしょう?
戦争で妻が死んだところまではとても愛していた風に見えたのに、実際に将軍と剣闘の一騎打ちになったとき、戦いながらちょっと喋っただけで心変わりして、「え?奥さんの仇がそんなに簡単に許せるの?」と思ったし、奥さんの存在感が空気だと思いました。
それに、母親に捨てられたと感じて恨みに思っていたのが心変わりするには、何かもっと、ドラマチックで大きな出来事があるべきではないでしょうか?
心理や登場人物同士の感情のつながりという点で見たときに、ドラマとして表現が薄いと感じました。
それなりに良いと思います。
ただ、なんとなくいまひとつ足りない気がします。
古代ローマに吹き荒れる血汐の嵐!
あの名作「グラディエーター」の続編を、名匠リドリー・スコットが創るんだから、期待しないわけにはいかない。
予告編で見かけた数々の映像は、まさに興味をそそるものばかりだった。
平日の昼間って事もあってか、映画館内は壮年世代の人で、かなり入ってました。
さて、本編ですが・・・
大猿?との戦いは、なかなか見応えありましたね。まぁ、全体をとおしても、手が飛ぶ、首が飛ぶ、ストレートなグロい映像はリアルで楽しませてもらいました。
ただ、予告編で見たサイとの戦いとか、コロッセオに水を敷き詰めての海軍戦を模倣した戦いとか、思ったほどではなかったかな。
オープニングで海戦を見せつけられているもんだから、大掛かりであってもコロッセオのそれは、ちょっと迫力不足に感じてしまった。そもそも、あの時代にコロッセオに水を敷き詰めて船を入れることが可能なのか?ってところが気になって、リアルさを感じられなかったのも要因かもしれない。まぁ、そういうストーリーだからと割り切っちゃえば良かったんだろうけど。
主役の俳優さんもちょっと弱いかな。
グラディエーターとしての戦いが、安心して見れちゃうと言う致命的な感じだった。ラッセル・クロウみたいな危機感というか、迫力があまり感じられなかった。
【ネタバレ】
ラストにしても呆気なかった。
ローマ帝国が新たに生まれ変わるってのが、メイン・テーマになるのかな。
五千の反乱軍と六千強の近衛兵が対峙して一触即発の場面(CGかエキストラか分かりませんが、凄い人海戦術でした)も、ただの睨み合いで済んじゃったし。
どの場面も迫力満点で大掛かりだし、面白い作品ではあるんだけど、危機感っていうか、ドキドキする興奮がイマイチ感じられなかった残念な一本です。
競技場のスケール感が凄いがグラディエーター物語としては前作の繰り返し 主人公の人として、剣闘士としての優秀さ、説得力が今一つ感じられない
ローマ軍により捕虜となったルシウスは奴隷としてコロシアムに送られる。
彼は剣闘士として買われ、やがてローマ帝国の圧政から奴隷を解放し、自由と正義のために戦い始める。
前とは別のグラディエーターの話と思っていたら、まさかの前作の主人公の子だったということが中盤以降明かされる。
自分は知らずに鑑賞したが、あらすじとして、あちこちで事前に明かされていたので、知ってたとっしたらなんともったいぶった明かされ方か。
ヒット作2作目の良くない方のあるあるとして、前作と同様の展開で、1作目よりスケールアップ。
より派手な見せ場を用意。
冒頭の海戦だけでなく、実物大に建設されたコロシアムで再現される海戦がすごい。
競技場に水を張り実物の舟で戦い、観ずには鮫まで解き放たれてる。
他に人間だけでなくもサイやサルまで決闘に導入。
しかし、緊張感と、最初の目新しさでは前作に譲る。
しかも血縁者の復讐と言う話で、本人の人として、剣闘士としての優秀さ、説得力が今一つ感じられない。
主役俳優は、前作ラッセル・クロウの圧倒的な存在感には負けてて、小さく見える。
デンゼル・ワシントンの狡猾ぶりと皇帝兄弟の凶悪さは、憎たらしく策謀巡らせ自ら剣をとって戦うホアキン・フェニックスの悪者ぶりと拮抗するか。
何分前作の続きで、前作の焼き直し感は否めない。
前作が無く本作が初ならもっと評価が高かったと思う。
あと、これだけの超大作なのに、なぜパンフレットが未製作???
以下余談ですが、それにしても最近は、お金がかかってるとCGの使い方がとても上手くて、全くわからない。
いまだにすごいシーンが実物であったほうが、本当に凄いと感じてしまう。
さすがにサイ、サル、サメはCGだろうが、実物で凄いシーンがあってもCGと見分けがつかないので、なんかもったいない気分がするのは自分だけでしょうか。
デンゼルパイセン
お金は掛かってますね。
リドリー・スコット監督万歳
話がチャチくて重みがないのは脚本のせいですかね。最近、日本もアメリカも古い時代背景の重厚な映画を全然作ってくれないので(お金が掛かるのにヒットしないから?)、そんな映画に飢えていた自分には観たいと思わせてくれた映画でした。
ちょっと話が嘘臭過ぎないかとは思いましたが(格闘場の舟戦は大迫力でしたが、絶対にサメなんか入れてなかったでしょうね)、どこがセットでどこがCGかわからない古代ローマの映像は圧巻でした。主演のポール・メスカルは確かにラッセル・クロウの息子と言われても違和感ないなと思っていましたが、髭がないと似てないですね(笑)
しかし、何よりおん歳86才のリドリー・スコット監督の精力的なこと。(普通はかつての名匠でも、年を取るとだんだん作品を撮らなくなりますよね) 40年以上も前の「エイリアン」や「ブレードランナー」は大好きな作品ですが、その監督が未だにこんな大作の監督をされているとは、尊敬しかありません。
ワンを観てないけど面白かった!
楽しみにしていた作品に大満足
前作が偉大なだけに
その続編となると期待も大きくなります
しかし、その大きな期待の更に上の感動をもらいました
完璧な続編です
この作品の映画としての評価は自分には分かりません
自分なりの感動ポイント
前作からの時間の経過が大きな要因になっています
初めて前作を観たのは20年くらい前か?
その間、社会情勢や世界情勢も変わり
自分自身の状況も大きく変化しました
人生って喜びもあれば
わだかまりもありますね
還暦を過ぎた自分が抱える悩みみたいな
ネガティブな気持ちへの
答え合わせのような場面や台詞が劇中にあって
そこは感極まりました
救われたような気がしました
エンタメ作品としてのみならず
自分にとっては人生の歩みを確認させてくれる
素晴らしい作品でした
大切にしていきたい作品との出会いです
IMAX版にて鑑賞
「スター・ウォーズ」続三部作(7・8・9)みたいな陳腐な続きを観ている気分🤣👎
前作「グラディエーター」が公開されて四半世紀ぶりの昨日、U-NEXTで見直して改めて涙したばかりの今日此の頃でしたが、月曜日にも関わらず感動の余韻を胸に仕事帰りに映画館へ直行💨
冒頭の船団を率いて北アフリカに攻め込むアカシウス将軍はすこぶるカッコ良かった😁👍要塞に乗り込んでからの勇猛果敢な闘い方も様になっている✨️⚔️✨️
しかし嗚呼ルシアス、君はマキシマス将軍の息子だったんだね!だけども大人になった君には華が無いねぇ😂👎
何か登場人物の誰にも感情移入が出来なかった💦
唯一、ゲタとカラカラのバカ兄弟共同皇帝はビジュアル的に面白かったけれど、ローマ時代って奴隷上りのアフリカ人でも執政官や皇帝になれるものなのか不思議でした。
物語は前作と同じ事の繰り返しで、なんの為に続編作る必要があったのでしょうか?まるで新シリーズの「スター・ウォーズ」みたい💦
「ブレードランナー」「エイリアン」をこの世に送り出した偉大なるリドリー・スコット監督が大好きなのと、前作に敬意を込めて甘口点数にさせていただきました😎🎥
映画館で観るべき作品
地味だけど良い
ポール・メスカルはまだ駆け出しでと言ったら失礼だが日本ではあまりメジャーじゃなく
見た目も華がないけどポスターでのビジュアルよりも動きのある映像や演技でぐっとひきつけられるほど、いい意味で裏切られました。異人たちで演じた青年とはまるで別人。
今回の作品でファンになりました。
デンゼル・ワシントン、お久しぶりでしたがこんなヒールも淡々と演じられるなんてびっくりしました。
そのほか、アカシウスやゲタ、カラカラを演じた役者さんもこれからマーベルとかの話題作に出演とこれからぐっと知名度を上げてきそうな人たちで何年か経ったらのちのち豪華なキャストだったねと言われそうな作品でありました。
コニー・ニールセンは若い、全然老けてない。この人がこのビジュアルを維持できたのがこの映画最大の功績かも。
偉大な前作と比較される宿命を持った映画でしたが、個人的には2時間半飽きずに鑑賞できました。なんならもう一回見てもよいかもと思うくらい。
前作に思い入れのある人はどうしてもですが、完全に忘れてる人や見てない人の方がより楽しめるかも。
この時代に黒人がとかリアリティを求める時代ではないのですが、サルモンスターやサメのくだりはもっと違う演出で見たかったので★ひとつだけ減らしました。
史実と創作の見事な融合
さすがの超大作ですが綻びもあり惜しい
御年86歳の超巨匠監督サー・リドリー・スコットのエネルギーにはほとほと感服しかない。前作「ナポレオン」の凄まじい超大作に続けてのまたまた超大作、なにしろ劇中のメイン舞台であるコロッセオのオープンセットを実際に建設してしまっての撮影なんて、御大でなければ出来ぬ算段。日本円にして300億円程の予算を任せられるわけで、肝っ玉も相当にデカく無ければ到底無理。アカデミー監督賞ノミネート3回、ゴールデングローブ賞監督賞ノミネート 4回、を誇りながらいまだ受賞叶わず。さていよいよもっての本作で受賞は叶うか?・・・残念ながらちょいと無理かな。
前作から20年後の設定(映画自体は24年後)、若き賢者が北アフリカの国土を攻め込まれ、捕虜(奴隷)としてローマに運ばれ、めっぽう強いことから時の悪政の陰謀に巻き込まれ、やがて自らの出目に目覚め、ローマ帝国を再興へ導くお話。これが流石の第一級監督・リドリーで、殆どを戦闘場面で紡いでゆく、流れが停滞する会話シーンは最小限に留め、効率よく躍動する画面で構築してゆく。その壮大かつダイナミックなこと、大局の趨勢と個々の兵士の戦いをバランスよく織り交ぜる。剣が胸を貫き、腕が切れ、頭がちょん切れる、相当にエグイ描写の微細も丁寧に描く。
白矢をたてられたのがアイルランド出身の若手有望株のポール・メスカル。まだ28歳ながら「aftersun/アフターサン」2022年で第95回アカデミー主演男優賞にノミネートされた演技力の持ち主。続いての「異人たち」2023年と続けてゲイの役のせいか、繊細な雰囲気の印象が強く、本作に出演の情報に驚き、多分前作でアカデミー助演男優賞ノミネートされたホアキン・フェニックスの後継のような役だろうと思ってました。が、なんとバリバリの剣闘士役、前作のラッセル・クロウ扮するマキシマスの息子役とは驚いた。バキバキの肉体にボリュームアップし、髭面で、しかし優し気な目が単なるマッチョでない事を匂わす。ただ、巻頭からいきなりの強者で、より大柄な体格を有する他の奴隷のなかでもやたら強い、主役だから当たり前とは言え、観客に説得力がないのが惜しい。
対するローマの大将軍・マルクス・アカシウスに扮したペドロ・パスカルが男臭い魅力を振りまき偉丈夫として本作を支える。美しい妻ルッシラとともにローマの行く末を案ずる硬軟の演じ分けも惚れ惚れですね。米国では男性の魅力ふんぷんでセクシー男優として大人気とか。しげしげ本作観てましたら思い当たりました。60年代の大スターであったバート・レイノルズに印象がそっくりだと。彼も逞しい肉体にヒゲが似合うタフガイとして一世を風靡したわけで、本作以降もぞくぞく映画に出演のペドロです。
そして本作の大御所が奴隷商人マクリヌスに扮したデンゼル・ワシントンで、作品に箔を与えるポジションでしょう。超大作にはそれ相応の重鎮役者が必要なのです。逆に重鎮が出演することによって、出資者も集まりスタジオも安堵するわけです。ポールとペドロだけでは現実問題まだ無理なのですね。とは言え、冒頭にリドリーの監督賞は厳しいと触れた根拠がこの役にあると考えます。現状の腐敗政治を是とするのか否とするのか、甚だ中途半端。この男に主人公の運命を委ねるのですから、彼のスタンスは明確に改革派でなければならず、反皇帝派となれば映画としてのベクトルも明確となるはず。にも関わらず。何考えてるの? 双子の皇帝殺害場面、突然デンゼルが「イコライザー」での当たり役ロバート・マッコールになってしまう! ことにも馬鹿カラカラ皇帝の殺害では大きめの釘を耳から挿入なんて瞬殺を披露する。なんてことないマクリヌス自身の権力欲しかなかったわけで。なにもデンゼルは例によって冷静沈着な演技で素晴らしいものの。キーマン設定が作品を盛り下げてしまっているのです。
腐敗皇帝に扮したジョセフ・クインは本年の「クワイエット・プレイス:DAY 1」の心優しき青年役だった人で、双子の弟でまだ良識あるゲタ皇帝役。対するカラカラ皇帝役のフレッド・ヘッキンジャーはまるで存じ上げず、役の雰囲気は前作のホアキン・フェニックスに通ずる白塗り狂気役ですが、あまりに馬鹿が前面に出て、うんざりさせられる。
この他、脇役との絡みもあるものの、さして本流に影響を及ぼさないのも本作があと一歩に留まる原因。奴隷管理のヴィゴや医療班のようなラヴィ、にもう一押しのシーンがあれば、そしてグラックス議員のような微温湯に浸かりきった奴等の腐敗を切り取れば主題も活きたはずなのです。本作が素晴らしい反面、膨らみに欠けるのはそのためなのです。
リドリーの次回作には数本の監督作と、制作のみに至っては驚くほどの作品が控えてます。クリント・イーストウッド94歳が頑張っている以上。まだまだ期待出来、後世に大監督の称号は間違いなく、同時代に観られることを感謝しかありません。尚、IMAX版での鑑賞でしたがスクリーンの天地が拡がらないタイプで残念でした。このタイプ、ホント損した気分なんですね。
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