「Make Roman Empire Great Again そして 失われたローマの夢 これが本作のテーマであったと思いました もちろん21世紀のアメリカへの当てこすりです」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
Make Roman Empire Great Again そして 失われたローマの夢 これが本作のテーマであったと思いました もちろん21世紀のアメリカへの当てこすりです
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
「英雄を呼ぶ声」は原題にはなく、邦題独自のものです
とはいえ、ラストシーンを切り取った良い副題をつけたと思います
2024年11月公開
前作公開から24年目の続編です
前作は、稀に見る傑作で世界的大ヒットとなり世界的な映画賞を総なめにする程の高い評価を勝ち取りました
自分も人生の中でも屈指の大好きな作品です
とはいえ、物語は完璧に綺麗に閉じられており、そう簡単には続編を作れる余地はありませんでした
だから、これほど長い時間がかかったのです
本作は前作で12歳の少年だったルシアスが成人してからの物語です
前作から、ローマ帝国はどうなったかが描かれています
物語は良く出来ていると思います
そこは満足しました
アクションシーンも過度な期待に負けない大迫力でした
ところが、大きな満足と同時にガッカリ感も感じてしまいました
VFX の進歩で映像の解像度は上がっています
なのに、脚本の解像度は逆に粗くなってしまっており、前作と比較すると大幅に劣ってしまっています、そこが不満です
前作では、名もないローマ兵の一人一人にも、台詞もなく台詞が号令だけであっても、彼らには、兵士として長年訓練して生きてきた半生があり、マクシマス将軍と幾多の戦場で苦楽を共にしてきた様子や、信頼関係がうかがえることが脚本にありそれが生き生きと簡潔に映像化されていたものでした
その解像度が大幅に後退してしまっています
まるでカメラが何百メートルも後退したかの様です
例えば、冒頭のローマ軍の侵略シーンでは防衛側がカタパルトで燃える油壺を投射してローマ艦隊を攻撃していますが、前作でも冒頭のゲルマニアでの蛮族との野戦に於いてカタパルトは登場しており、カタパルトの準備に余念なく忙しく働く各科各級のローマ兵の様子がキチンと表現されています
本作ではそういったものは表現がなされておらず遠くから漫然と眺めているような視点になっているのです
アカシウス将軍の初登場のシーンでも、「強風だ、」と見て取って色々指示を下すのですが、本作ではそれを誰に下令しているのはかは表現されません
前作だったらこのシーンはどう撮られていただろうと考えてしまうのです
アカシウス将軍は総司令官であっても陸戦の専門で、海戦は素人のはずです
だから彼の傍らにはローマ艦隊の海戦のプロの提督がいて、アカシウスの攻撃意図を聞いてその後に続く細かい指示を提督が、さらにその後ろについている顔馴染みの古参の海軍士官に命令している様子が脚本にあってそれが映像化されていたはずです
さらにその命令が各持ち場のローマ海軍士官達に次々に伝達されてテキパキと各持ち場で実行されていく様子や それだけでなく、こうしたほうがさらに良いと思われますと意見具申している様子まであっただろうと思ってしまうのです
前作では蛮族ですらシュプレヒコールのシーンで彼らなりの組織と統率が表現されていたのに、本作ではヌミディア側の体制の描写は何もなく単に個人の集団のようなのっぺりとした描き方なのです
前作ではそうした積み重ねに加えてVFX が細かく映像を見せていたのに、本作では画角が狭くスペクタクル感が薄く感じられてしまっているのです
アップに寄った時は細部まで凄く細かいのになんかカメラが遠くにあるようで画面の中央部だけが濃密で視野の周囲は粗いのです
なので作り物、CG ぽさが残ってしまいます
音楽も前作のハンス・ジマーのような格調高く印象に残るものではなく薄ペラいと感じられてしまい残念です
前作では要所要所に取り入れられていた特殊効果の映像表現は全くなく、淡々と劇が脚本通りに進行するのみです
結果として、全体の印象としては大いに満足して、ラストシーンでは感動すらしているのにも関わらず、前作には遠く及ばない、何か巨額の予算をかけたテレビスペシャルを観せられたよう残念な印象に止まるのです
Make Roman Empire Great Again
そして
ローマの夢
そんなものはもはや失われて無いのだということ
これが本作のテーマであったと思いました
もちろん21世紀のアメリカへの当てこすりです
前作のローマはローマ帝国の絶頂期を描いていました
そして本作では、劇中でも前作からほぼ同じだけの時間が流れていてローマは荒廃し始めていると明確に描かれています
前作では清潔で塵一つない美しく都市が機能していたのに、本作では悪臭が漂い、埃ぽく、物乞いが道端に大勢いるのです
中世の暗黒時代はもうすぐそこに迫っているということです
Make America Great Again
こんなことは本作のローマの夢と同じことだ
アメリカは衰亡するだろうという予感の映画です
かってローマには名誉があったが今のローマには失われている
というような台詞がありました
今のアメリカも同じです
Strength and honor
力と名誉を
名誉がうしなわれたなら
残るのは力のみです
そして暴力は共通語だと本作の劇中の台詞にあります
本作公開から、2ヵ月後新大統領が就任しましたそして100日があっという間に過ぎさりました
ヌミディアへの侵略シーンのようなロシアのウクライナ侵攻には、ロシアの肩を持ち、そして全世界を向こうに回して関税戦争を吹きかけています
正に名誉が失われた
Strength and honor.です
共和党の大統領候補への当てこすりだけではなく、本作では黒人の元グラディエーターの皇帝のように民主党の対立候補もなんら信頼できそうもないと、デンゼル・ワシントンはオバマ元大統領に寄せているのは民主党も50歩百歩だとのメッセージだと思いました
本作の公開は正に大統領選挙の直後であったのです
どちらの大統領に決まったとしても現代のローマ帝国たるアメリカ合衆国は衰亡しつつある
世界は中世に逆行するかも知れない
それが本作の真のテーマであったと思います
ではどうしたらよいのか?
本作の終盤のようにローマの夢を実現しようとする英雄を望むしかないのか?
それこそ夢です
大統領を選ぶ我々民衆自体がコロシアムにグラディエーターの試合のような血なまぐさい見せ物を喜んで見物に集まるようなレベルにまで劣化しているのですから
「英雄を呼ぶ声」という邦題独自の副題は、そこまで考えてのことかと思いました
本当に良くできた邦題です
最後に
ルッシラ、カラカラ帝、ゲラ帝は実在の人物で概ね史実通りです
特にカラカラ帝は史上最悪の皇帝であったとされています
あき240さん、共感ありがとうございます😁
どんなレビューを書いてるのかな?と覗きにきたら実に面白い角度での考察✨
こういう観点で映画を鑑賞する方はココでは珍しいのでは🤔
マ王も色んな考察を(グタグタと)するタイプなので楽しくレビューを拝見させてもらいました😆