「大胆な創造性で攻め続けるリドリー作品にはずれなし」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
大胆な創造性で攻め続けるリドリー作品にはずれなし
24年ぶりの続編を製作する上では無限の選択肢があったことだろう。失敗の神は常に嬉々として手をこまねいていたはず。だが一作目と二作目とで多くの要素が対を成す構成はとても明確で潔い。メスカル演じる主人公は前作のクロウとほぼ同じ運命を辿るし、さらにクロウの役柄をメスカルと二分するかのごとく将軍役のパスカルの存在がある。その上、狂った皇帝は本作ではまさかの寡頭化。かくも「II」さながら鏡に映ったかのような反復、増幅を楽しみつつ、狙い定めたタイミングでの効果的なズレが観客の心を大いに沸かせる。さすがリドリー。大胆で抜け目ない。しかも相変わらずの光と影を駆使しダイナミックな人間絵巻を描くカラヴァッジオぶり。後半に本性を剥き出す”あの男”もすこぶる楽しいが、その中で飛び出す「私は芸術家だ」という台詞には監督自身の言霊の響きすら感じた。これはある意味、リドリーの怪物的な芸術魂を存分に覗く作品かもしれない。
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