「近年稀にみる駄作」グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 イクミさんの映画レビュー(感想・評価)
近年稀にみる駄作
今作の主人公ルシアスが、前作の主人公マキシマスの息子と言う設定、、これこそが今作をここまでの駄作にしてしまった根本要因だ。
前作の主人公マキシマスの息子と今作の主人公ルシアスの年齢は、ほぼ同じ(前作の作中にそれを示すセリフあり)である。
と言う事は、今作の主人公ルシアスがマキシマスの息子であるとするならば、マキシマスは愛する妻がいるにも関わらず、父親の様に愛し、尊敬し、慕っていたマルクスアウレリウスの娘と不倫をしていた事になるが、前作を観て、マキシマスがその様な事をする人物だと思えるだろうか?
マキシマスが妻と子の住む家を離れてゲルマニアの戦地に持参した、妻と子を模した小さな木彫りの像に向かって、「先祖の霊よ、お導きを。天なる母よ、私に道を示し、天なる父よ、妻子を守りたまえ。家族こそ私の生きる力。先祖を敬い、その教えに恥じぬ生き方を。」と祈りを捧げるのです。
そんなマキシマスが、妻以外の女性と子供をつくるでしょうか?
ルシアスがマキシマスの息子であるなら、観客が納得する様な説明を劇中で描くべきだが、その様な事もせず、ただ、ルッシラのセリフでのみマキシマスの息子である、と強引に成立させた為、ルシアスに感情移入も出来ず、ルシアスの行動に感動する事も心を打たれる事も無い。
そして、今作の主人公ルシアスの復讐の動機が「妻が殺害された」事に発しているが、ルシアスの妻は軍人だ。
自国に攻め込んで来た軍隊と戦い、軍人であるなら、その最中に命を落とす事は当然予想しておくべきであり、そうさせたく無いなら、妻が軍人である事を絶対に止めさせるべきである。
しかし、ルシアスはその様な素ぶりも見せず妻と共に鎧を身に纏い、戦場に赴き、妻が命を落とした事を復讐の動機として、相手国の将軍を倒す事を目的とするが、動機の設定が杜撰過ぎる。
その杜撰な設定のまま、奴隷商人に買われ、最初に闘う相手がCGで造られた筋骨隆々の猿の大軍だ。
猿の大軍の後は、鎧甲冑を身に着けた巨大なサイ、海のごとくにコロシアムに溜められたサメが泳ぎ回る海水の中での軍船での闘いと、荒唐無稽なアクションがこれでもかと連続する。
時折り、前作を思い起こさせるシーンや行動を混ぜ込んで来るが、杜撰な設定と荒唐無稽なアクションの連続で辟易している中では、その様な場面も空虚に感じられ、全く響かない。
終盤、グラディエーター達がルシアスをリーダーとして、なぜここまで連帯感を持ったのかも描き方が甘い為、よく分からない。
そして、最終的にはルシアスと異常に強いマクリヌス(デンゼルワシントン)が一騎打ちをし、ルシアスは辛うじてマクリヌスを倒し、「ローマに平和を」と、あまりにお粗末な決着の付け方で終了。
ラストシーン、コロシアムでルシアスが「父よ。私に声をお聞かせ下さい。」と言うが、マキシマスが父親と言う設定を観客に納得させていない為、全く心を打たない。
この映画を簡単に説明するなら、「大金をかけた、デンゼルワシントン主演の歴史バトルアクションムービー。」が相応しいだろう。
1は傑作、2は駄作、、これはよくあるパターンだか、せめて、あの素晴らしい名作である前作を汚すのだけは止めて欲しかった。