「Defying the First Scene」ウィキッド ふたりの魔女 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
Defying the First Scene
まず冒頭から、そこら中の民、百姓がわらわらと集まってきて誰かが死んだことについて歓喜のお祭り騒ぎをしているシーンで始まり、いきなり驚かされます。私はかつてアメリカの特殊部隊がテロ組織アルカイダのリーダー ウサマ•ビン•ラディンの殺害に成功した際、当時のアメリカ政府の高官たちがやったぞ、みたいな感じで狂喜乱舞していたのを思い出しました。藤田まこと演ずる中村主水は裏稼業で人を斬りますが、仕事が終わった後は人を死に至らしめた苦さを噛みしめながら江戸の街を家路へと急ぐのです(『必殺仕事人』より。古いなあ)。これだと、まあそれなりに納得できますが、こちらの歓喜シーンでは死んで皆を大喜びさせた「西の魔女」が実はこの物語の主人公エルファバであることが分かり、更に驚くことになります。そして、物語は回想シーンへと展開してゆきます。
世の中には二項対立している概念がいろいろとあります。善と悪とか、愛と憎悪とか、敵と味方、尊敬と軽蔑、友情と対立…… 我々のリアルな生活では、我々はその二者の間を揺れ動いたり、どちらともつかないグレーゾーンにいたり、徐々に片方の側に寄っていったりするのですが、この物語は0か1かのデジタル方式のようになってまして、途中経過がよく分からないまま、片方の側からいつの間にやら反対側にジャンプしています。と、ここまで記してきて、まあミュージカルだからなあ、感情を歌にのせて表現するから極端から極端に行くよなと思い始めてきました。でも、善とか悪とか愛とか友情とかが聴覚を通してアイコン化されている印象があり、ストーリーが軽い感じがします。思えば最初のシーンに感じた違和感も「死」が記号化、アイコン化されているところから来ているのかも知れません。
とは言うものの、この作品に使われている楽曲はかなり出来がいいと感じています。ミュージカルのキモの部分で外してないので、高評価をつけざるを得ないのかな。でもなあ、あの最初のシーンを見たからには、西の魔女の悪業も、不謹慎な言い方になりますが、少なくとも飛行機を世界貿易センタービルに突っ込ませて2棟とも崩壊させるぐらいの規模でないと納得できないでしょうね。なんだかエルファバに過酷な運命が待ち受けているようでかわいそうになってきましたが、パート2を待つことにしましょう。
>この物語は0か1かのデジタル方式のようになってまして、途中経過がよく分からないまま、片方の側からいつの間にやら反対側にジャンプしています。
その両極端の間がPART2で語られるのでしょうね。
すべてが記号化されたようで、軽い感じがする、は的確で、なるほど、と思いました。同感です。
ミュージカルなので、そうなるのでしょうね
エルファバはオズの悪人どもに陥れられ死んでしまい、それで、「重力に逆らう」決心をしたグリンダが中村主水ばりに黒幕を始末する、でもって良い魔法でエルファバが復活して別人となって、今度こそ本物のグリンダとの友情をはぐくみながら生きる、であってほしいなと思っています。
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