「彼女の名前をちゃんと呼ぶ時(長文)」ウィキッド ふたりの魔女 hachiさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女の名前をちゃんと呼ぶ時(長文)
アカデミー賞オープニングでアリアナとシンシアが歌っている動画を観て期待感が高まり鑑賞。字幕版で2回鑑賞(2回目はDolby)。どっちにしても素晴らしかった。
オズの魔法使い、劇団四季などの舞台版も知らずに、あらすじ程度の前提知識を仕込んで観に行ったが、別に知らなくても全然楽しめたと思う。
冒頭のシーン、酷い事を歌にするなあって感じだったがそこまでするなら、そんなに悪い魔女だったの?って興味を引かれる作り。皆歌上手いし鮮やかな色合いも良い。
歌詞はともかく、ここの曲の合唱結構好き。Dolby版だとアリアナの声がサントラほど際立たない感じがした。
で、エルファバ(シンシア)のThe Wizard and I の歌唱で泣く。ここが通常字幕版だと歌声が埋もれてる感じがして、Dolbyの方だともうちょっとクリアでこっちの方が好きだった。
中盤弛むように感じるのは二部作だから必要なシーンも入ってるんだろうというのと、それまで結構アップテンポの曲が多いのでその落差で感じちゃうのかなと思ったくらいで、そこまで気にならなかった。
フィエロのミュージカルシーンから動物への弾圧が始まっていく様は社会的政治的なメッセージ性も感じた。自由に楽しく生きようと知性を踏みにじる間にも、声が奪われ、ひっそりと歴史をなきものとされていく様が描かれていて(あれ、これはどこかの国で起こってる事って感じがしなくもない)メッセージ性もある。
フィエロの内面の空虚さに気付いているエルファバにも引き込まれる。この辺りのシンシアの演技と歌も秀逸というか、字幕じゃなくて表情を追ってしまう。
エルファバとグリンダの友情の始まりになるシーンは若干キツくて涙してしまった(他でも泣いてるけど)。
周りからのエルファバに対する反応はあくまで物語上当然だとしても、同調するグリンダに対しても同様な視線を向けられる所がリアル(経験上そうなるよなあって感じで見てはいたが良くできてるだけに悲しくもなる)。特に妹ね。彼女は彼女なりに色々あるだろうけど、強烈。
グリンダは同部屋で嫌いって感じる位相手のことを見ているだけに気付けたんじゃないかなと思った。よく気付いてくれた。
そんなグリンダのキャラクターが秀逸。いわゆる天然な感じなのかと思ったが、良くも悪くも彼女の行動がエルファバにとって良い方向に転がっていくのが面白い。
良い事をしている私というのが揺るがないが、話が進むに自分にもできないことがあり、認められたい人には認められず、本当に手に入れたいものは手に入れられない、という現実に直面していく変化が魅力的。だからこそ彼女はエルファバと一緒には行けないんだな、と。
さらに、先生は前歯がないから仕方ないにしても自分の名前をちゃんと呼んでもらえてないのがね、サラッと片付けられてるように見えてしまうけど。後半のマダム・モリブルとの会話の時などに映る寂しさとも何とも言えない表情とか見ると話が進むにつれ結構ダメージ受けてる感じがして。
だからか、エルファバがちゃんとグリンダって名前を呼び歌うdefying gravityに余計グッときた。歌も良いが助演ノミネートにも納得できる。
シンシアは全体的にパーフェクトな感じで、特に物語が繋がってくるラストシーンは圧巻。歌がやっぱり凄いし、似たような実体験もあるのだろう(インタビューでそんなようなことを言ってた)、その分エルファバというキャラクターを体現している感じがした。
友達はいないし疎外感を味わい続けて来たが魔法が使えてその才能に惚れ込まれているエルファバと、友達はいるし人気者だが魔法が使えず才能がないと言われてしまうグリンダの対比が絶妙で、まさに最高のベストフレンド。故にラストシーンは友情と歌唱とエルファバとグリンダのそれぞれの想いがブレンド。もうね、ウワーっとなりますよこっちは。
どっちがハモってるのかわからなくなる位シンシアとアリアナの声が似ている所があって、そこも良い。相性抜群とでも言うのだろうか。
魅力的なキャラクター、現代にも通じるメッセージ性、最高の世界観を作り上げた美術性、音楽、ダンス、演技と歌。昔はミュージカル苦手だったけど、物凄い感動を貰えて感謝。
それを踏まえるとコスパが良すぎやしないか。
3回目はもっと没入感が欲しいのでスクリーンXで観る…と思う位。映画館で観れて良かった。
もうちょっとファニーとシェンシェンのシーンも見てみたかった気がする位で総じて素晴らしかった。
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