「悪から見れば、善は悪」ウィキッド ふたりの魔女 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
悪から見れば、善は悪
冒頭、
「誰もウィキッドの死を悲しんだりしない」の大合唱が不気味。
チャウシェスクが銃殺刑になった時のルーマニア国民の心境?
どんだけ迫害されてたんだろうか。
だがそのエルファバによる「迫害」は、
この「パート1」では全く描かれない。
次に感じたのは、
エルファバ以外の人間たちが皆こぞって
サイテーであること。
ガリンダあらためグリンダに至っては、その頂点。
体裁を繕うことにだけ熱心。で、これが「善い魔女」になる。
その他の連中も、付和雷同著しく、
扇動によってあっさりなびく群衆でしかない。
アホな群衆の群舞は、
いかにもアメリカン・ミュージカルなんだけど、
その底の浅さが、見るに堪えない。
そういう描き方を、あえてしてるんだろう、きっと。
でも見てて気分悪い。
こうして、
この映画の主張が何なのか、たどり着いたのは、
「悪から見れば、善は悪」
つまり、
「人気」という価値基準で生きているグリンダとオズの世界では、
正しいかそうでないかを価値基準にするエルファバは「悪」になってしまう、ということ。
これはまさしく、
もともとの「オズ」と「ウィキッド」がどうであろうと、
現代批評にほかならない。
そしてその見識には、はげしく同意。
ただ、
周りが嫌なやつばっかりでエルファバが不憫だったのと、
嫌なやつばっかり見て気分が悪くなったのは事実。
とはいえ、
オズに裏切られても、グリンダがついて来なくても、
エルファバは、「重力に抗して」生きようとする。
その歌は、感動的でありました。