「「スター・ウォーズ」を超える!?」ウィキッド ふたりの魔女 ノンタさんの映画レビュー(感想・評価)
「スター・ウォーズ」を超える!?
最初は観るつもりがなかった。アリアナ・グランデのキラキラしたお姫様ぶりが宣伝でも目立ち、興味を惹かれなかったのだ。
でも今週は他に観たい映画がない。「オズの魔法使い」には興味があったので、試しに観てみることにした。
結果的に、観てよかった。最高のカタルシスを感じる、そして考えさせられるテーマがたくさん盛り込まれた作品だった。
物語はエンディングから始まる。
オズの国の人々が「西の悪い魔女」の死を知り、歓喜に包まれる。彼らの前でそれを告げるのは、善の魔女グリンダだ。いきなりエンディングの盛り上がりに巻き込まれ、気持ちが掴まれた。
しかし、何か違和感がある。グリンダはヒロインのように称えられるが、彼女自身は戦士として戦ったわけではなさそうだ。それに、なんだか最近揶揄されるキラキラ広報のような、空虚というか、芯のない人物像をアリアナ・グランデが見事に演じている。冒頭のつかみから最高である。
ここから物語は過去へと遡る。グリンダとエルファバは魔法学校の寮で同室になり、対立しながらも友情を育む。グリンダは現代的な価値観を持つ少女で、差別はいけないと教育され、困っている人を助けるべきだと知っている。それが「人気者」でいるためにも必要だと理解しているからだ。彼女の善意はどこか薄っぺらいが、それでも結果的に良い影響を与えていく。
対照的に、エルファバは幼い頃から見た目の違いで嫌われ、親にも疎まれてきた。孤独を抱えながらも、彼女は自尊心を失わず、自分の力を信じている。その強さが、周囲からさらに異質視される要因にもなっている。
この対照的な二人が友情を築いていく過程がとても楽しいし、リベラルな価値観が広まる世界での人間関係の深まり方ってこういう感じなのかなとも考えさせられる。
エルファバはその才能を教授に見出され、個別指導を受けることで自分の力を開花させていく。この流れは『スター・ウォーズ』のルークとヨーダを思い出させる。
この映画が特に面白いのは、ビジネス書『The Oz Principle』(日本語版タイトルは『主体的に動く』)と重なるテーマを持っていることだ。この本は主体性の獲得こそが、成長するということであり、より能力を発揮し生産的になれることを説いた本だ。「オズの魔法使い」をその主体性獲得の物語として解読する本でもある。
エルファバの覚醒は、まさに「主体性の獲得」として描かれる。周囲は「その生き方は損だ」「みんなに認められない」と彼女を引き止める。しかし、彼女は自分の内面の声に従い、自分の可能性を信じることを選ぶ。その瞬間、彼女は覚醒する。
まるで『スター・ウォーズ』でルークが自分のフォースを信じた瞬間のようだ。ミュージカル映画ならではの音楽の高まりと相まって、最高のカタルシスを感じさせる場面だった。
ただし、スター・ウォーズとの決定的な違いもある。エルファバは世界から「悪」として認識されるが、絶対的な悪ではないことが描かれている。この物語では、善悪が二元論ではなく、相対的なものとして描かれている。スター・ウォーズは最後まで「ジェダイ vs. シス」という枠組みを超えられなかったが、ウィキッドは最初から「善悪の枠組みそのものが歪んでいる」ことを示している。
物語の冒頭では、エルファバの死を歓喜する人々と、それを告げるグリンダがいた。その世界は「善が悪を倒した」と信じる単純な構造だった。しかし、映画を観終えた今、その世界の見方は揺らいでいる。後編では、このラストシーンがどのように更新されるのかが最大の注目ポイントだ。原作を読まずに、続編を待ちたいと思う。
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