「我々の身の回りにある社会の闇を華やかなミュージカルに昇華させて極上のエンターテイメントに仕上げた作品」ウィキッド ふたりの魔女 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
我々の身の回りにある社会の闇を華やかなミュージカルに昇華させて極上のエンターテイメントに仕上げた作品
『オズの魔法使い』に登場する西の悪い魔女(Wicked Witch of the West)と(北の)善い魔女の女学生時代を描くミュージカルの映画化版。ただし、これは前後編の前編。私の鑑賞回では、観客の9割以上は女性だった。
肌の色のために偏見を持たれ、圧倒的な才能のために疎まれ、いじめられ、阻害される差別の構造。なにも人種や国籍の差別だけでなく、日本全国の学校で起きている、一軍がチヤホヤされ、二軍が一軍に媚びへつらい、三軍をいじめるというスクール・カーストの構造も何ら変わりはない。
そして、固有の特性によって差別が存在するのみならず、前日までは何でも無かったのに、ある日突然人権が奪われ、差別の対象になることもある。決して珍しい話ではなく、緊急事態において人権を制限できるように憲法を改正しようとしている政治家の存在からも明らかであるし、ある日を境にクラス内のいじめのターゲットが突然変わるということもよくある(だから子供たちの多くは自分が標的にされないように無関心を決め込み、長いものに巻かれていく)。
だが、世の中の「敵」というものはどうして生まれるのだろうか?敵は初めから敵なのだろうか?ただ単に、差別の意識や、自分に服従しないものは敵とみなすというエゴによって生み出されているのではないか?
そんな私たちの足を引っ張る「重力」から解放されることは可能なのか?
実は我々の身の回りにある社会の闇を華やかなミュージカルに昇華させて極上のエンターテイメントに仕上げている。ただ、上映時間161分は長い……。120分程度にまとめてくれていれば言う事なしだったんだけどなぁ。
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