「マリー=テレーズのドヤ顔は、彼女に恋する2人も知らない表情だと思った」ロール・ザ・ドラム! Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
マリー=テレーズのドヤ顔は、彼女に恋する2人も知らない表情だと思った
2024.10.9 字幕 アップリンク京都
2019年のスイス映画(90分、G)
1970年代のスイスの村にて実際に起こったブラスバンド部同士の諍いを描いたコメディ映画
監督はフランソワ=クリストフ・マルザール
脚本はニコラ・フレイ&フランソワ=クリストフ・マルザール
原題は『Tambour Battant』、英題は『Roll The Drum』で「太鼓を鳴らせ」と言う意味
物語の舞台は、1970年代のスイス・ヴァレー州のモンシュー村(架空)
この村の唯一の楽団は、村のワインセラーのアロイス(ピエール・ミスフッド)が指揮を執ってきたが、これまでに一度も連邦政府の楽団に選ばれることはなかった
3年に一度行われるオーディションに向けての練習を積み重ねてきたが、団員たちはアロイスではオーディションに勝ち抜けないと考えていた
そこで、村の元医者のロベール(ジャン=リュック・ビドー)の息子ピエール(パスカル・ドゥモロン)を呼び寄せることになったのだが、彼はアロイスと犬猿の仲だった
それは、かつてアロイスの妻マリー=ルイーズ(サビーネ・ティモテオ)を取り合った仲でもあり、ピエールの心から彼女が完全に消えていなかった
それがアロイスの不甲斐なさとリンクする形になってしまい、あらぬ誤解を生む火種にもなっていたのである
映画は、アロイスとピエールの楽団にメンバーが分裂してしまう様子を描くものの、多くの団員がアロイスの畑の労働者ともあって、半ば脅しのような格好で引き止める様子を描いていく
対抗するピエールは移民、主義主張、男女を問わずにメンバーを募集し、それなりの形になっていく
きたるオーディションに向けて村の代表を射止めるための特訓が始まるかと思えば、ユニフォームを隠したり、誹謗中傷のビラを配るなどの舌戦へと展開してしまう
そんな様子に呆れるマリー=テレーズは、かねてから気になっていた「女性参政権運動」へとのめり込んでいってしまう
また、アロイスの娘コリネット(アメリ・ベルテリ)は新しいワインを開発しようと奮闘していたが、彼は女性が仕事をすることに否定的で、それによってさらに捻くれてしまうのである
時代的に女性の地位向上が叫ばれていて、少しずつ参政権が認められる世の中になっていた
そんな流れがこの村にもやってきていて、さらに労働者としての移民も流入する時代になってきていた
アロイスの農場でもイタリア系移民のカルロ(ジュゼッペ・オリッキオ)が働いていて、彼も楽団員の1人だった
だが、アロイスはカルロをスパイ要因としてピエールの元に送り込むと言う鬼畜な行動に出ていて、そういった精神的に腐った部分が自らの首を絞めることに繋がっていくのである
映画は、かなり緩やかなテンポになっていて、音楽映画の割にはブラスバンドの演奏はそこまで出てこない
その割には劇伴はやかましいくらいにずっと鳴っているイメージで、このあたりは好みが分かれるところだろうか
ラストでは「葬式のような演出から結婚式」というわけのわからない流れになっていたが、これがスイスのスタンダードなのかはわからない
いずれにせよ、軽く観れるタイプのコメディだが、お笑い要素よりも卑劣すぎる戦いに引いてしまう印象があった
カカシにするのはまだしも、牛の毛を刈って落書きとかまで来ると余計なものまで引き入れてしまいそうに思える
映画としては特に印象は残らないものの、ラストで「プロテスタントではなくてよかった」みたいなことをボソッと言っていたので、出身よりも宗教対立の方が根深くてややこしいのかな、と感じた