「続編に期待」カルキ 2898-AD SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
続編に期待
神話とSFとインド映画っていう、面白くならないわけがない!という要素満載で、期待感MAXで観たのだけど、ちょっと残念だった。
映像、スケール感、世界観は素晴らしいのだけど、脚本がめたくそ。シーン単体で観ると素晴らしいのだが、全体的な整合性がなくて、つまらない。
シーンだけで観ればすごいお金がかかっている、非常に完成度の高い映像なのに、なぜ脚本がこんなに未熟なのか不思議。インド映画がどんな作り方をしているのか知らないけど、脚本を練り込んで完成させたあとに映画を作っているのではなくて、未完成な脚本の状態で見切り発車で映画を作り始めて、シーンを撮りながら、場当たり的に次のシーンの脚本を作ってるんじゃないか、という気がする。
たとえが適切かわからないが、むかしのジャンプ漫画みたい。その場その場の勢いで展開が決まっていて、ストーリーが緻密に考えられているわけではない。つなげて見ると矛盾点だらけで人物の考えに一貫性がなく、感情移入できない。
それでも、主人公に魅力があれば、勢いだけでも面白く観れると思うのだが、本作は主人公に決定的に魅力がない。この映画の最大の欠点だと思う。普段はなまけもので能天気でお調子者で、困ったちゃんだが、いざというときは義侠心に熱く、圧倒的強敵を打ち破る、みたいなベタな性格で全然良いのに、この主人公の性根の良さみたいなものが全然見られない。嫌われる要素しかないのに、なぜか愛されキャラみたいになってたり、信頼されてたりするのが腑に落ちない。
また、世界観は正義側と悪側に明確に分かれているのに、主人公が戦う相手は正義側、という展開も良くない。もちろん「巻き込まれ型」のストーリーではそういう展開もよくあるのだけど、この映画の場合は脚本の未熟さのために、主人公の戦いを応援できないし、主人公の戦いにカタルシスを感じることが難しい。
そう、カタルシスのなさもこの映画の欠点。続編があったとしても、正義側の勝利で締めてほしかった。期待してたダンスシーンも、なんかイマイチ。ストーリー的な矛盾はこの辺が一番大きかった。1時間だけ働ける、ということで入れたコンプレックスで、なんで主人公と恋人は贅沢できたのか、そのあと彼らは処罰を受けたのか、恋人はそのあとどうなったのか、全部よくわからなかった。
インド神話の壮大な世界観で、6000年後の超未来を舞台にしたSF叙事詩をやる、っていうすごい設定なのだから、今からでも絶対面白い展開にできるはず。続編こそ「こういうのこそ観たかった!」という作品にしてほしい。