「良くも悪くもパワーのある作品」劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 AKさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5良くも悪くもパワーのある作品

2025年8月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

連日満員の映画館。常軌を逸した上映回数に、どんどん伸びていく興行収入。相変わらず人気だなwと公式サイトを覗いてみたら、今回はなんとインターステラー並に長い上映時間。果たしてどんなスペクタクルドラマが繰り広げられるのかと少しばかり期待して映画館に足を運んだはいいものの、蓋を開ければ一級品の映像に、あまり一級とは言えない脚本演出がくっついた、コロナ禍の時に観た列車のやつと同じような「粋じゃない」作品、という印象だった。
 冗長な説明、セリフ、過剰な演技。あれ、さっき同じこと言いましたよね?みたいな場面が幾つか見受けられた。変なタイミングで寒いギャグを入れてくるのもシリアスな世界観を壊してしまっている気がするし、長い回想シーンも中弛みが激しく、泣き所への持っていき方がチグハグでどこで泣いていいのかまるでわからない。泣ける人は泣けるだろうし、それはとても素晴らしいことだと思うが、僕はもっとこう「背中で語る」みたいな、観る側に想像の余地を与えるような話が好きだ。これは個人的な好みなんでアンチの戯言だと思って聞き流してもらいたい。
 一方、善逸と獪岳の対決は、煽り合いにキレがあって善逸の師匠や兄弟子への想いも伝わって良かった。お金を沢山かけて作られたという無限城の3Dセットは和の中にサイバーパンクなテイストがあって、AKIRAやブレードランナーが好きな僕は夢中になって観た。そこで隊士や裏方の人達が頑張ってる様はシンプルに心揺さぶられたし、特に序盤は無限城の広大さと底知れなさが余す所なく描かれていて、入りは完璧だったように思える。だが本作のメインである、猗窩座に関するエピソードは個人的にくどいなぁと思ってしまったので、上映時間を短くして演出もパリッと淡白に仕上げたほうが良かったのかもしれない。
 誤解があるかもしれないが僕は鬼滅の漫画版はそれなりに楽しく読ませてもらった。好きなキャラは黒死牟。不死川兄弟のエピソードは不覚にも泣いたよ。だから次回作は是が非でも見逃せないところだが今作のような冗長演出が引き続き採用され続けるのなら、少し身構えてしまう。原作もそれなりに説明とセリフが多かったものの、漫画という媒体故かそれとも原作者の力量か、アニメ程の冗長さを感じる事はなかった。だが、結果として漫画にもアニメにも目を通してしまっているということは、鬼滅という作品自体が自分にとって無視できないものになっているという、作品としてのパワーをその身を持って証明することとなった。
 鬼滅は良くも悪くもパワーのある作品だと思う。悪を憎む主人公が正義を叫ぶ。そんな普遍的でストレートなメッセージが不安定な世の中を生きる人達に勇気を与え、今や日本で一番勢いがあるコンテンツに成長した。作品が伝えたいことを正しく汲み取れるのならば、その人はきっと優しく真っ直ぐな人間になれる。世の中のお母さん達に受け入れられているということは、詰まるところそういうことなんだと思う。
 しかし、その一方で作品としての危うさも感じる。特にここ最近、世界情勢が一気に不安定化し、社会全体が殺伐とした余裕のない雰囲気になっていく中。これは正しい。これは間違っていると決めつけるような二元論が蔓延るようになったと感じている。
 もちろん正しいことは大事だし、悪は裁かれなければならない。それはそうなのだがSNSなどでヒステリックになっている人達を見ていると本当にそうなのかと思えてくる。そしてその二元論が、鬼滅の根底に流れている勧善懲悪の精神と重なっている部分があるんじゃないかと、個人的に思えてならないのだ。考えすぎだと思うし、この駄文をここまで読んでくれた人は何いってんだコイツと感じるだろうが。ここまで人気になった作品。世の中に与える影響は結構大きいと考えている。このレビューサイトだけ見ても、絶賛の声の中に時折混ざる酷評や批評を爪弾きにするような雰囲気を感じる。自分が好きなものに文句を言われる怒りは理解できるが、生憎ここはファンサイトではない。多様な意見を取り入れることは新たな名作を生み出す上でも、実生活を豊かにする上でも大事だ。自分の意見を見て聞いて炭治郎達がどう思うか、過激なファンの人達には今一度考えてもらいたいところである。
 鬼滅が公開されたのは、奇しくも参院選真っ只中の7/18。映画館は連日鬼滅に沸きに沸き。選挙は大荒れに荒れた。その様にも何か重なる部分を感じてしまったのも僕の思い過ごしだろうか。あなたはどう思いますか?。

AK
セブンエイトさんのコメント
2025年8月3日

感じ方は人それぞれなんだし、それを他人からとやかく言うものでもないですものね。

「絶賛の中にある批判」に対して爪弾きにするというのは確かにあり、それは良くないと思います。
ちゃんと、レビュー主様のようにきちんと映画を観た上でのコメントは批判であれウェルカムなんです、ファンとしては。あぁ、そういう見方があるんだなと。なるほどなーって思いましたもん。

ただ、中には、必要以上に攻撃的な言葉で煽ってファンを挑発する方がちらほらいらっしゃいます(本人は気付いていないようですが)。その塩梅が分からない方のレビューに対してはみんな反論しているような印象です。私も反論してるかもしれませんが多分(汗)

なにはともあれ好きな映画に出会い楽しむのが一番。私自身はこの映画とても心にぶっ刺さりましたので、この作品に感謝でいっぱいです。また観たいなって思うシーンがあり日々膨らんできます。
そういう映画に出会える楽しみがあるってのは素晴らしいですよね!

レビュー主様も第二章第三章ともし観られることがあるのなら、またコメントお願いします。楽しみにしてますね!

セブンエイト
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