「何かの加害者は、何かの被害者でもあるのかも」劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 おけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 何かの加害者は、何かの被害者でもあるのかも

2025年7月29日
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アニメ1クールが3時間に凝縮されたようなボリューム。とにかく展開が早くてノンストレス。大きく分けて3パートくらいに分かれるが、前2パートの記憶が薄れるくらいに最後のパートが分厚く、かつ内容も濃い。もう一回じっくり観たいと思えるほど満足度が高かった。

鬼滅といえばキャラクターごとのバックボーンの深さだが、今回もそれぞれがかなり良かった。3つのパートに共通するのは「敵討ち」だが、それぞれが立ち向かう鬼との関係性の違いによって、まったく別の物語として成立しているので単調にはならない。どの戦いにも、それぞれの正義や感情がしっかり宿っていた。

映像はCGとアニメーションのブレンド加減がかなり絶妙で、よくある“CGだけ浮いて見えるアニメ感”はまったくなかった。絵に全く詳しくなくても、風景の描き方ひとつひとつにかなり引き込まれる。とくに冒頭1秒目の風景画の美しさは、前回の映画と同じく、今回も幻想的でグッと惹きつけられた。

戦闘シーンが多いこともあってか、ユーモアシーンがアニメのときよりも削られていたのは個人的には良かった。テンポがより引き締まっていて、物語への没入感がより強くなっていた。

そしてやはり、この作品に惹きつけられるいちばんの理由は、鬼の一人ひとりにも悲惨なバックボーンがあるということ。これこそ“鬼滅といえば”なのかもしれない。

毎回描かれる「なぜ鬼になったのか」という原因には、ある種の「しょうがなさ」や「不可抗力感」のようなものがある。この作品ではそれを“鬼”という存在で描いているけれど、現実でも、悪人とされる人たちの中には、それぞれがそこに至るまでの理由や背景がある。

何かの加害者は、何かの被害者でもあるのかもしれない。

おけん
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