「誰もが鬼になってしまうかもしれない。—— その正体は、ひとりの少年の哀しみだった。」劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 シネマ紳士さんの映画レビュー(感想・評価)
誰もが鬼になってしまうかもしれない。—— その正体は、ひとりの少年の哀しみだった。
冒頭から、その圧倒的な空間構成と、浮遊感を持つ立体的な描写は、まさに“地に足のつかない世界”が体験できた。
そして、映像美とアニメーションのクオリティに圧倒され、キャラクターの表情や空気感までしっかりと描かれていて、感情が揺さぶられる。
アクションも見応え抜群で、スピード感や迫力、そして重厚な音楽によって、一つひとつの戦いが感情が乗った“ドラマとしての戦い”になっていた。
ただ、戦闘と回想が交互に繰り返されるループ構成になっていて、物語が連続して流れていくというよりは、細かく切り替わる印象。
これは原作を丁寧になぞっているがゆえの構成なのだろう。けれど、映画としての「勢い」や「疾走感」は少し削がれてしまっていたようにも思う。
もう少し大胆な再構成があれば、観客を一気に飲み込む展開になったかもしれない。
それでも、猗窩座の過去が明かされるたびに、その強さの裏にある「誰にでもあるかもしれない弱さ」と重なって、哀しみや葛藤が浮かび上がってくる。
ただの敵ではない、感情の深みを持ったひとり人間として、心に刻まれた。
派手なだけではない。
静かに胸を打ち、深く残る。
そんな余韻を持った一本だった。
• 世界へ入り込む度:★★★★☆
• 感情ゆさぶられ度:★★★★☆
• エネルギー消費度:★★★★★
• 配信でも観ます度:★★★★★
• 人にすすめたい度:★★★★★
【制作エピソード】
当初「無限城」のCGモデリングとレンダリングに1作あたり3年半、三部作なら総計10年以上かかると試算していた。ところが実際には、最新型レンダリングマシンの導入による作業時間短縮、背景や反射・水面など映像に直結する技術課題の徹底解消、そして他作品を一時調整してほぼ全スタッフを本作専任とする全社的集中体制という3つの改革により、映画1本分の全工程をわずか3年半で完成。アニメ業界でも前例のないスピード制作を成し遂げた。
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