「この重いテーマの深化を見届けないわけにはいかない」劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
この重いテーマの深化を見届けないわけにはいかない
【2025.8.11 追記】
原作未読、1回目の鑑賞後、ネットフリックスでアニメの柱稽古篇まで視聴。
本日2度目の鑑賞後に「鬼から見た世界」について考察。
<鬼についての前提条件>
・無惨は1000年前に出現
・自身の血液を注入することにより、不特定多数のクローン鬼を作り、太陽を克服できる突然変異種の誕生を待ち続けた
・鬼狩り(鬼殺隊)に対抗するため、江戸時代に強い鬼(上弦)を12体創出
・以降、炭次郎の時代(大正時代)まで約100年間は、鬼の勢力は安泰(少なくとも上弦の鬼が鬼狩りに負けることはなかった)
・すべての鬼は無惨の血液(濃度の違いはあれ)から生まれているため、無惨より弱いし、無惨がその気になれば死ぬ(絶対に逆らえない)
⇒アカザが上弦の壱を倒すのだ、と思うことはあっても、無惨に逆らうという発想は生まれない(無惨を脅かす鬼が出現しないように無惨が鬼社会の制度を設計した)
鬼の強さや人間を鬼化する能力を考えたら、人間社会はとっくに鬼に支配されていてもおかしくはないのに、そうはなっていない。ということは、あれほど太陽を克服した完全体を渇望しているにも関わらず、無惨にとって「人間社会の支配」は目的ではないということになる。完全体となる目的はあくまでも「食物連鎖の頂点に立つ」ということなのだろうか。
鬼の栄養源となる人間が絶滅してしまったら、鬼は共食いして生きていくしかないし、その帰結は鬼という「種」自体の滅亡に繋がる。ということは、鬼の生存のためには一定数の人間がそこそこ健康体で生きている社会でなくてはならない。だから、鬼の存在があまり知られないようにしてきたし、鬼殺隊以外の一般人には日常生活が脅かされるほどの存在として認識されては困るはずだ。
無惨が完全体となった暁には、もう鬼のクローンは必要ないし、自分を守る盾としての上弦の鬼も必要性がなくなる。人間社会が混乱しない程度に、無惨が栄養源として人間を食らって生きていくのなら(神隠しとか行方不明事件として処理される程度)、上弦を含め鬼たちはむしろ邪魔な存在となるし、鬼殺隊も社会からは存在意義を認められなくなってしまう。
そう考えると無惨が完全体となることによって、人間社会は初めから自分を倒すことを諦めるから、闘いのたびに人間を見下すことで得てきた優越感や支配欲を満たす機会もなくなり、とても寂しい人生となるし、不老不死となることでその寂しさは永遠に消えることがなくなる。
無惨よ、本当にそれでいいのか?
(以上、2025.8.11追記)
この物語の世界にすべて持っていかれてしまう吸引力という点では満点以外つけようがありません。
正直、既視感のある映像ばかりなのに、受ける感動は新しい、という不思議な斬新。
インセプション、インターステラー、ジョジョの奇妙な冒険、AKIRA…。
大正ロマンという言葉があって、新しいものと伝統的な文化との融合による斬新さが、人々の心を捉えたのだと言われていますが、鬼滅の刃の世界観ももしかしたら、そういう現象の延長線上にあるのかもしれませんね。
【大正ロマンの主な特徴】(ご参照)
和洋折衷:西洋の文化や様式を取り入れつつ、日本の伝統的な美意識も大切にする。
自由な雰囲気:従来の価値観にとらわれず、個人の解放や自由を求める傾向が強かった。
新しい女性像:「モダンガール」に代表されるように、社会進出する自立した女性像が登場した。
普段は意識していないけれど、心の奥底に根付く忘れてはいけない家族や友だちとの絆。
大事な人を失ったことで理性のタガが外れて極大化する怨嗟。
まったく相容れない情動なのに、裏表の関係で簡単に入れ替わってしまうこともある。
異物なはずなのに簡単に同化できてしまう鬼と人間。
身近な人が殺された恨みが激しいほど強くなれる、という不条理は鬼も鬼殺隊の人間も変わらない。
この重いテーマが次作以降どこまで深化していくのか。
見届けないわけにはいかない。
グレシャムの法則さま🙂
投稿した後に何となく恥ずかしくなって、コメント削除してしまいました。返信いただいてごめんなさい、再投稿しておきます↓
そう言えば、偶然出会った気が合う人の本棚を見て、恋に落ちる映画がありましたね。恋が冷めていく場面も、恋が終わる瞬間も、本が小道具として登場していました🤭
✎____________
ちなみに、先日の内田樹教授のブログを教えてくれたのは、ウチのダンナ様なんです。
医師という職業柄、人の生死について達観・客観視しているので、映画を観て私のように泣いたりすることもなく、そもそも映画を観る時間がほぼほぼ無いのですが。
ダンナ様は「鬼滅」の鬼をフィジカルではなくメンタルな存在として捉えていて、柱が鬼と戦って命を落とす意味や鬼舞辻無惨についての解析を教えてもらいました。
※ネタバレなので、またいつか。
グレシャムの法則さま
コメントありがとうございます。
TVシリーズイッキ見、お疲れ様でした。
私も1週間前に「無限城編」3回目を観てきました🫡
なるべくネタバレを踏まないように…
残りの上弦の鬼の「父親からの継承」は、第二章以降に回想シーンが登場すると思います。
鬼舞辻無惨については、産屋敷家のお館様と同じ一族、ということまで…🫢
グレシャムさんの追記を読んで、「鬼」と人間の関係は、ウィルスの宿主、ゾンビの捕食対象、ヴァンパイアの吸血対象…自然界に天敵のいない人間の前に現れた「天敵」かもしれないと考えました🤔
「柱稽古編」に登場した岩柱・悲鳴嶼さんのエピソードから、TVシリーズと「無限城編」の間を埋めるパズルのピースを一つ…😗
鬼殺隊に入る前はお寺で子どもたちと一緒に暮らしていますが、ある男の子が鬼に襲われた時、自分以外の子どもの命と交換条件に1人だけ助かります。その男の子は善逸の兄弟子になり、後に鬼の獪岳となって善逸と対決しました🥲
こんばんは。
お!!!「遊郭」まで来ましたか!
嬉しいです!!
「刀鍛冶」は地味目ですが深い深いのですよぉぉ!!
ワタクシは無一郎むいちゃん推しです。
むいちゃんが出てくるだけで泣きます😭
グレシャムの法則さま
大学入試に出題された『鬼滅の刃論』について、寄稿者のブログがネットで読めると教えてもらいました(ネタバレ注意です)🫡
内田樹「『鬼滅の刃』の構造分析」で検索すると、研究室のブログが見つかります。
──『鬼滅の刃』は病と癒やしの物語だが、パンデミックの寓話ではない。──
YouTubeに溢れる考察は、人の思考の機会を奪ってるのではないかと常々思っているのですがw、このブログの洞察は興味深かったです🤔
──身近な人が殺された恨みが激しいほど強くなれる、という不条理は鬼も鬼殺隊の人間も変わらない。──
グレシャムさんと同じ視点のレビューはまだ1件もないので、私のベスト・レビュー候補です(何の名誉も権威も無いアワードですw)🥳
こんばんは。
大谷選手4戦4発出ましたね!
負けてられないワタクシこれから急遽!再々々??
鬼滅行ってきますw
そして、大変興味深いコメントありがとうございます。
「古き良き日本人」への憧れや郷愁。
炭治郎達と同じ血が流れていると思い込みたい。
凄い所突いてきますね!
私はコミックス3巻発売辺りからどハマりし、新刊が出るたびに追っていて、YouTubeの考察も見まくっていましたが、グレシャムさんのこの着眼点は誰も指摘していない、唯一無二のご意見でした。
それなのに凄く共感出来たし説得力がありました。
(YouTubeはじめましょ!私編集しますからw)
本作はコミックス16、17、18巻の内容で、鬼滅は23巻で完結しています。
先生はこの先ご存知ないんですね!
まだまだ盛り上がりまくります!
が、とりあえず、本作の余韻を噛み締めて頂きたく存じますw
行って来ます♪
こんにちは。
冒頭2行から激しく共感です!!
大正時代ってすごく昔の事の様に思いますが、実際そうでもないですよね。
私の両親、祖父母、それ以前も皆んな離婚していて(爆)家族の絆とか繋いでいくって事に対してあまり実感がなかったのですが、鬼滅に出会って、私も先人から確実に繋がれているんだな〜
そして子にも繋いでいくんだな〜って、言葉では表せない感情になりました。
加熱前の考察では、柱は十二支、上弦の鬼は疫病、伝染病をモチーフにしているんじゃないかとの説を読んで、なるほど!と思いました。
実はワタクシ鬼滅が大好きでもう6回も観に行きましたw
25日再びIMAX行きます。
結末が分かっているのにハラハラドキドキして泣いてしまう。。
凄い作品ですよね!
グレシャムの法則さま
おはようございます。
コメント×2ありがとうございました🙂
朝から“覚醒”されてるということは、鬼化してなくて良かったですw🤭
私は「遊郭編」を観た時に、これは『国宝』の世界だ…と感じたので、もし『鬼滅の刃』のスタッフに制作リクエストできるとしたら、『国宝』かなと思います🤔
グレシャムの法則さま
共感ありがとうございます🙂
>身近な人が殺された恨みが激しいほど強くなれる、という不条理は鬼も鬼殺隊の人間も変わらない。
>この重いテーマが次作以降どこまで深化していくのか。見届けないわけにはいかない。
『国宝』のレビューに「グレシャム文学の筆致と語彙力」とコメントしました。返信コメントは「私には過分で勿体ない」でした😗
もっとぴったりな表現を思い付きました。グレシャムさんのレビューは“Bookish”なんですよね、謙遜しないでくださいね😙
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。