アイミタガイのレビュー・感想・評価
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こういう地味な作品が心に染みる。
喪失感に苛まれた人たちが葛藤しながらも、少しずつ前に進んでいくお話。人と人との縁がRingのような繋がりをみせて観客を魅了するとこはツボを上手く押さえているなと感じる。人間の不器用さ、機械のように割り切れないモヤモヤ感は実に共感できた。
蛇足ながら、結婚は結局勢いだと、この歳になっても個人的には思います。シチュエーションとかそういう細かいことは関係ないです 笑。
心が洗われるとはこのこと
いい作品にはただ良かったと言うばかりです。涙はなく爽やかな気持ちになります。私の場合、あれこれ語りたくなるのは不満があるときのほうが多いみたいです。
予備知識なしでラストのタイトルロールまで来たので、ストーリーとは別のサプライズがありました。
オーソドックスに見えて、人間を深く理解した優れた秀作でした!
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作を大変心動かされ面白く観ました。
私がこの映画『アイミタガイ』で初めに優れているな、と思われたのは、主人公・秋村梓(黒木華さん/中学時代:近藤華さん)が、叔母でホームヘルパーの稲垣範子(安藤玉恵さん)の顧客である小倉こみち(草笛光子さん)に、秋村梓の勤めるブライダル会社が行う金婚式のピアノ演奏を頼む場面です。
90歳を超える小倉こみちは、戦時中に自身のピアノで当時の同世代の若者を戦地に送ってしまった傷を抱えていることをこの時、秋村梓と稲垣範子に伝えます。
なので本来であれば、ピアノにまつわる戦争体験の話を聞いてしまえば、普通であれば引かざるを得ない場面だとは思われます。
ところが秋村梓は、中学生の時に、親友の郷田叶海(藤間爽子さん/中学時代:白鳥玉季さん)に連れられて、当時の小倉こみちのピアノ演奏を聴いていた話をします。
そして、小倉こみちの戦時中の想いに踏み込んで、彼女に金婚式でのピアノ演奏を依頼するのです。
しかし小倉こみちは、(一旦は)この秋村梓の依頼を断ります。
私がこの場面が優れていると思われたのは、誠実さありながらの相手の心の中に踏み込む姿勢と、一方で、踏み込まれた相手の自然な心としての拒否する姿勢の描き方でした。
この相手への誠実ながらの踏み込みと、一方での自然な相手からの拒否は、人間の関係性を深いところで理解している描写になっていると思われました。
なぜなら、例えどんなに相手が誠実に想いを伝えていても、誰もが踏み込まれたくない自身の想いを持っていて、相手をそれで拒否をするのは自然であると思われるからです。
加えて、とはいえ相手への踏み込みなしに人との関係性をきちんと構築するのも困難だと、一方では思われるのです。
この誠実な踏み込みと自然な(一旦の)拒否による関係性の構築は、この作品に一貫して流れていると思われました。
例えば、主人公・秋村梓の恋人である小山澄人(中村蒼さん)が、秋村梓に(結婚につなげるための)指輪を店に見に行こうという踏み込んだ提案をしますが、秋村梓は両親の離婚の経験から結婚へのわだかまりがあり小山澄人のこの提案を(一旦は)拒否する、という場面もありました。
(その後、この時の秋村梓による小山澄人の提案の一旦の拒否は、美しいラストにつながって行きます。)
そして、この相手に踏み込んで行く姿勢は、主人公・秋村梓の親友の(映画の冒頭で事故で無くなった)郷田叶海が、2人が中学生の時に秋村梓に踏み込んで彼女をいじめから救う場面から、時系列的には始まっていたと思われます。
郷田叶海の、誠実さを持ちながら被写体に踏み込んで行くカメラマンとしての姿勢も、映画の根底描写として一貫していたと思われます。
この映画『アイミタガイ』は、一見するとオーソドックスな設定とストーリー展開ではありますし、円環的な関係性の脚本でもあるのですが、個人的には単調にも作為的にも一切感じませんでした。
その理由は、誠実さある踏み込みと、自然な(一旦の)拒否と、さらに進んだ人間関係の構築という、深い人間に対する理解ある作品だったからだろうと、思われました。
郷田叶海の父・郷田優作を演じた田口トモロヲさん、母・郷田朋子を演じた西田尚美さん、主人公・秋村梓の(両親が離婚した)父方の祖母・綾子を演じた風吹ジュンさんなども含めて、どの演者の皆さんも素晴らしい関係性ある演技だったと思われました。
(劇的な展開というより積み重ねる作風で、一方で傑作評価は難しい面もありますが)
今作は元々、亡くなった佐々部清 監督が準備していた映画だと後で知りましたが、なるほど佐々部清 監督らしい優しさあふれる映画だと思われました。
そしてそこに、草野翔吾 監督による現代的な新しい風が吹き込んでいる、優しさだけでない人間理解の深さと的確さある、優れた秀作だったと、僭越ながら思わされました。
愛を見たかい
それぞれの何気のないエピソードがつながる快感、点と点を結ぶ見えない線。それは亡き親友が仕組んだ愛にあふれたいたずらなのだろうか。辛すぎず甘すぎず、熱すぎずぬるすぎず心にとても優しい映画。
良い人しか出ない映画はつまらない、そう感じていた私。でも本作を鑑賞してこういう映画もいいもんだと思えた。
黒木華さんのエンディング曲も優しい歌声で癒される。彼女の持つ柔らかなイメージの通り。
主人公の梓は澄人との結婚に一歩を踏み出せないでいた。学生時代からの親友叶海はカメラマンになれたきっかけをくれた梓に今度はあなたが困ったときには背中を押してあげると言いながら旅立ってしまった。
叶海の死を受け止められない梓は彼女のスマホにメールを送り続ける。けして既読とならないメールを。
梓の叔母が介護ヘルパーである家に訪れた時、まるで止まっていた時計の針が動き出したかのように物事が動き出してゆく。
その家こそ学生時代いじめから救ってくれた叶海が連れてきてくれた決まった時間にピアノが鳴り響く家だった。
その家の主人小倉は戦時中自分のピアノで若者たちを戦地に送ったことを悔やみ、それ以来人前ではピアノを引けなくなっていた。ブライダルの仕事で訪れたそんな小倉に梓は過去このピアノに心を癒されたことを告げる。この縁で小倉は再び人前でピアノを弾くことができるようになった。
叶海の両親のもとに娘への郵便が転送されてくる。それは福祉施設からのひな祭りを祝うカードだった。娘が仕事をきっかけに施設の子供たちと交流を続けていたことを知る。娘が生前何を思い何をしてきたか、それを知るために両親は福祉施設を訪れる。そこから施設との交流が生まれる。
親友の存在、娘の存在が無ければけして生まれなかったであろう思いがけない人々とのつながり。亡き親友が、亡き娘が紡いでくれた人との関わり。これが彼女がこの世に生きた証でもある。残された人々は悲しみに暮れるのではなく彼女の遺した軌跡を辿る。
澄人のプロポーズに躊躇する梓に叶海の母がメールを返す。行っちゃえと。叶海は約束通り梓の背中を押したのだった。
これらメインのエピソードから、澄人が乗客の居眠りに機転を利かせた話や宝石店の孫の宝物の話といったほんと何でもないような細かなエピソードがすべてつながる時、とてもやさしい気持ちにさせられた。
こんな何でもないようなお話を見て幸せな気持ちになれるなんてと。
泣かそう、泣かそうとしてくる。 そして泣かされます。
ここ何年か「自己責任」が世間の風潮になっています。電車の中、駅、街中でなるべく人と関わらない様に過ごして来ました。関わってもそれは仕事ビジネスとしての事。お仕事ですから。
基本的に人の尊重を第一に考えます。また自分も尊重されたいと望んでいます。
頼られてばかりの人、間の悪い人、空気の読めない人、都合の良い人、要領の悪い人、
他人は他人という世の中で生き辛さを感じる時もあります。
そんな時代を前提に夫婦、親子、家族、親友、恋人との間柄をもっと密に、素直にしようよというのがテーマかなと受け取りました。
長い人生の中でささやかな事が知らずに誰かの心の支えになっていたなんて人生観が一変するよね。
でもなぁ 人の人生に
「行っちゃえ!」
ってのは、ちょっと言えないかなぁ~。
善意のピタゴラスイッチ
善意人の為ならずと言うけれど、本当にそうだなぁと思わせてくれる映画。「善人ばかりの小説はつまらないと思っていたけど、それもいいもんだ」まさにその通りだ。登場人物がみんな精一杯生きているけど、なんか、不器用でうまくいかなかったり、一歩を踏み出せなかったり、それでも人生何とかやっていけるのは、自分の知らないところでアイミタガイしてるからなんだ。優しい気持ちになれる感動で涙した。
この世に絡み合う無数の糸の奇跡
その奇跡がたどる軌跡そのものが人生なのかもですね。
主人公がだんだんと自分に向き合って素直になるのをみつめながら、誰かとかかわりあえる時間の積み重ねを大切にしていきたいなと思いました。
やっぱり私は、人が人を思いやる世界が好き。
そんな世界を信じて生きていたい。
優しい温度に触れ自分を感じ、気がつけばあたたかい涙が滲んでいました。
冷えてきたこの季節におすすめの作品。
⭐︎訂正あり
禿げたオッさんとアイミタガイ
映画『アイミタガイ』を鑑賞してきました。
ーー『アイミタガイ』(=「相身互い」)は、事故で大切な友人を失った主人公(黒木華)や、様々な背景から立ち止まっている登場人物たちが、周りの人々とのほんの小さなつながりや想いに支えられ、それぞれが前を向いていく姿を描いた物語ーー
邦画は映画館ではあまり観ないのですが、映画.comでの皆さんの評価が高かったので観に行ってきました。
主役の大好きな黒木華さんが可愛かったのはもちろんで、それは良かったのですが、映画的にはTOHOシネマズのギフトカードをもらっていなかったらわざわざ観に行かなかったかも。良作ではありますが・・・。
皆さんの感想では、涙が出たとか、何度も目頭が熱くなったとかありましたが、うーん、それほどでもなく・・・。私はココロが汚れてるのかなぁ・・・。
金曜日の19時30分からの上映で
観客は私ともうひとりだけ。
3つか4つ前の席に禿げたオッさん。
これもアイミタガイになるのかな?
あっ、そうそう。
エンディングロールの黒木華さんの歌がすごくよかった。彼女、歌も上手いんだなぁ。で、星半分追加。
書(本・書きもの) ⇒ 映画化は上手く行ってないかなぁ
私の評は表題の通り残念ながら高くはならない。
原作未読ですが、調べると5話オムニバス形式とのこと。なるほど。
きっと本で読んだら、時間軸や、人の心の動きを、ジグソーパズルを仕上げるように、自分自身の取り込みたい手順と速度で取り入れられ面白かったと思う。
本作(映画)は、なんというのか「映画という四角い箱に、物語(書)を小さく正方形に切りそろえて、キッチリ整えて収納した」という感じで、感情が揺さぶられない。
うまく言えないが、私としては整いすぎて趣しろさが半減したのかなと。
ここで言う「整いすぎ」というのは、脚本だけではなく、画の作り方も手伝ってのこと。なんというのか画づくりは教科書的というのか・・・。
整えるなら、小さく正方形ではなく・・・万華鏡を覗いたように華やかで繊細で美しく整えて欲しかった。
映像 ★★ 教科書的でつまらない、監督の個性・拘りが全く伝わらない
音 ★★★ 可もなく不可もなく
物語 ★★ 原作ではなく脚本化が上手く行っていない
役者 ★★★+0.5 中村蒼の空気感が良かった、
編集 ★★ 小さく正方形に切って、小さい箱に詰めないで
粗さ ★★ もともとが出来過ぎ物語、でもそれを上手く包んで欲しい
総合 ★★★ 個別評価は低いが総合では次第点かな
本作において、準主役の中村蒼は良かった。演技なのか素なのかは?
演技が上手いというよりも、何故か、この映画にうまくハマっており、彼が画に映り言葉を発することで、不思議と調和を生んでいたと思う。
そうだ、最後のシーンは好き!
“とある喪失感から立ち直るための青春映画…”な映画
泣くな!というほうが無理な映画でした…なので、泣きたい方は、どうぞ!笑
登場人物にまつわる各エピソードは、どこか既視感のあるお話ばかりなんですが、脚本が良いのかあるいは監督の手腕のせいなのか、人々の心情が上手く描けており、観ている側も感情移入がしやすく、後半へと行くにつれ、徐々に説得力のある物語へとなっていきます。
出演者たちはみな名演なんですが、特に主演の黒木華は見事でした。この作品がキネマ旬報のベストテンに入ることは多分ないでしょうけど(すいません!笑)、この作品で黒木華が主演女優賞を獲ってもおかしくはないでしょう(あくまでも個人的意見です)。派手な役どころではありませんし、どちらかといえば淡々とした物静かな役柄なんですが、彼女の所作や細かい表情の変化など、嫌味なくとても自然な感じがしました。
良い物語、良い作品だったと思います。
*ラスト、宝石屋の主人と孫のエピソードは、とってつけたかのような演出で、ちょっと“やり過ぎ”かなと思いました。もっとさらりとした偶然を装えばスマートだったかも知れません。あと、施設に保険金を寄付するエピソードも不要だったかなと思いました(トイレの写真だけで十分でした)。
*主人公と親友の高校生時代のエピソードだけで、1作品出来そうですね。この2人に纏わる“お話”がとても素敵な映画作品でした。
*脚本の市井昌秀は、私の大好きな映画『僕らのごはんは明日で待ってる』を監督した方だったんですね!どうりで…笑
*女優・藤間爽子さん、初めて知りました。
ホッコリ
心温まるホッコリした映画でした
最近歳のせいか、映画館が暗くなると睡魔に襲われ寝ちゃう事が有るのですが
この映画では襲われることなく
エンドロールで流れる曲が
あれーなんか知ってるなーと思い途中から口ずさんじゃったりして エンドロールの中、曲名探して
あ〜 っと思いました。
何十年ぶりかに聴いたけど良い曲だねー
人の背中を押したいと思いました。
親友を亡くした主人公がさまざまな人との出会いや気付きで、一歩前に進もうとする映画。
少し出来すぎの気もしますが、「お互い様」という気持ちで、隣人に親切にしたり、できる範囲で気遣いをしたり、ほっこりする場面が多かったです。
娘を亡くした両親が児童施設のトイレに貼ってある娘の写真を見て涙する場面ではついもらい泣きをしてしまいました。
人は信じられる、信じて前に進むしかない。そんな気持ちにさせられました。
出演者、特に草笛光子さん、風吹ジュンさん、そして中村蒼さんが素敵でした。
丁寧な日常の積み重ね大切にしたい
友人の遺志が、偶然の小さな連鎖を導き、縁を紡ぐことで、
それぞれが次の一歩を踏み出すまでを描いている。
過度にセリフで説明せず、気持ちの多くを画に託し、
日常的な会話や食事のシーンなどを積み重ねて
関係性を徐々に深めていく様を丁寧に辿っていく。
さらに主役の黒木華さんや、恋人役の中村蒼さんを始めとした俳優陣の
印象的で素敵な表情を捉えたクローズアップが効果的に挟まれて
自然に映画の世界に引き込まれていくので、
普段なら一歩引いて冷静にみてしまう偶然の連鎖もしっかり心に響き、
幸せな涙に思わず目頭が熱くなりました。
素敵な作品
泣くけど悲しい涙ではない、みたいなレビューを見てましたがその通りでした。心が温まる、そして伏線がたくさん描かれている映画でした。繋がりが人の心を前向きにしてくれます。時間も短めで見やすいです。
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