ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?

劇場公開日:

ブラッド・スウェット&ティアーズに何が起こったのか?

解説

米ソ冷戦の渦に巻き込まれた悲劇のロックバンド「ブラッド・スウェット&ティアーズ」の真相に迫るドキュメンタリー。

1967年にアメリカで結成された同バンドは、ホーン入りロックバンドの先駆者として注目を集め、グラミー賞を受賞したセカンドアルバム「血と汗と涙」でヒットチャートを席巻した。そして70年春、彼らはアメリカ国務省主催により、東欧諸国を巡る“鉄のカーテンツアー”を敢行。しかしその直後、二分化した大衆の社会騒乱に巻き込まれて人気絶頂から転落していく。

半世紀以上の時を経て初公開となる鉄のカーテンの向こう側で撮影された映像をはじめ、バンドメンバーや関係者から提供された写真と証言、禁じられていたロックに呼応する聴衆の姿も収めた未発表ライブ映像、ニクソン大統領とキッシンジャー国務長官の間で交わされたアメリカ政府文書、ルーマニア秘密警察からのファイルなど貴重な資料の数々を通し、ロック史のみならず現代の世界情勢にもつながる分断の歴史を浮かび上がらせていく。監督は「ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン」などの音楽ドキュメンタリーで知られるジョン・シャインフェルド。

2023年製作/112分/G/アメリカ
原題または英題:What the Hell Happened to Blood, Sweat & Tears?
配給:ディスクユニオン
劇場公開日:2024年9月27日

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映画レビュー

3.5やっぱり音楽に国境は無い

2024年11月16日
Androidアプリから投稿

グリーンカードを剥奪されて、バンドの活動を続けるためには、ツアーを引き受けるしかなかったのだろう。
冷戦時代にこのような興行が行われていたとは全く知らなかった。
BSTの演奏に熱狂する東欧やソ連の人たちの姿を観ていると、音楽に国境はないと感じる。
ライブの妨害のために犬を放ったりする様子、撮影したビデオテープはダミーを作って中身はダンボールに入れて、持ち帰る時のミッションインポッシブルなど興味深い映像だらけだった。
こうやって検閲をすり抜けて映像を持ち帰ったからこそ、この映画もできたんだよなあと考えるととても感慨深い。

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momo

5.0論文が書けそう

2024年11月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

ロック、ブラスロック、米ソ冷戦、社会主義国家、鉄のカーテン、ユーゴスラビア、ルーマニア、ポーランド、チャウシェスク、ニクソン、ベトナム戦争、イッピー、反体制運動、キャンセルカルチャー…。論文が書ける。
ロックとジャズの融合を図り1968年にレコードデビュー。その斬新さを売りにしたBS&Tは二枚目のアルバムからデヴィッド・クレイトン・トーマスをボーカルに迎え大ブレイクした。代表曲のスピニングホイールは日本でもヒット。ロック少年だった僕もシカゴとBS&Tをブラスロックの二大バンドとして認識していた。人気絶頂の最中の1970年、BS&Tは東ヨーロッパツアーを敢行。なぜ東欧に行ったのかという裏話も興味深い(好き好んで行ったわけじゃないんだよ)。そして、彼らのロックに社会主義国家の若者はどう反応したのか、それに対して政府はどう反応したのか。ユーゴスラビア、ルーマニア、ポーランドそれぞれに異なり、とても興味深い。さらにそれに対してBS&Tはどう対処したのか。これもまた面白い。そして帰国。彼らに対してアメリカ合衆国はどう対応(予め用意されたもの)し、またそれに対してアメリカの若者はどう反応したのか。とりわけ反体制の代表とも言える過激な若者の集団であるイッピーの反応、発言と行動。そしてBS&Tは人気の頂点から奈落の底に(シカゴがトップのバンドとしてミュージックシーンに君臨し続けたのとは対照的)。何もかもが興味深く面白い。そして気の毒なBS&T。音楽好きな僕としては、ロックって心を開放してくれるものなんだなと改めて痛感し、またそこに政治的なものを絡めてみることに強い違和感を覚えた。
*BS&Tのロックをスクリーンで楽しむことができる素晴らしい映画です。

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ゆみあり

4.0これは観ごたえのあるドキュメンタリーだ。

2024年10月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

これは観ごたえのあるドキュメンタリーだ。

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Mr. Planty

4.5カッコよさに痺れる

2024年10月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

難しい

西側がソフトパワーで冷戦に勝利したという言説はよく聞くが、東の人々の禁じられた西側文化への傾倒が実際はどうだったのかを知りたくて鑑賞。

BS&Tというバンドも楽曲のことも知らなかったが、挿入される東欧ツアーライブ映像の、音と歌の迫力にただただ圧倒された。このパフォーマンスにぶん殴られたら、そりゃあ感化されずにいられないだろうと思う。実際、観客の反応も、ルーマニアの会場では熱狂した聴衆に当局が警備犬をけしかけて追い出しを図るほどで、国によって違いはあるにせよ(アングラの音源で聴いていた人もいただろう)、多くの人の心に今までにない強い印象を残し、影響を与えただろう。

だが、西側文化(とそれが含意する自由)への憧れと、同等の価値を提供できない自国体制への幻滅が、結果としてパワーになったというのは納得だが、そのために文化を「武器」に使おうとするとどうなるか。その一つの帰結が、BS&Tの悲劇だったといえる。米国の政策としては成果があったかもしれないが(ロックは彼らが初だが、音楽家の派遣自体は50年代から続いていた事業だという)、彼らに関する限り、それはバンドの将来の成功を犠牲に成り立つものだった。
ベトナム戦争下の米国社会の分断という状況のせいでもあるが、政府のプロジェクトとして不可避的に政治の介入を受ける、という点は、(すでに1回失敗している)クールナントカを進めたい向きにはぜひ教訓にしてほしいところ。

メンバーや関係者へのインタビュー、公電など外交記録に加えて、ライブの素晴らしいフィルムとサウンドトラックがふんだんに使われているのはこのツアーを映画にする予定だったからで(ツアースポンサーの米国務省が許可を出さず素材も回収された)、冷戦史、BS&Tの活動史のドキュメンタリーとしても、音楽映画としても楽しめる。

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LS