「この状況を描く視点は今までなかった 「間違ったことはしていない」家族の信念」ぼくの家族と祖国の戦争 ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
この状況を描く視点は今までなかった 「間違ったことはしていない」家族の信念
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「関心領域」「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」「フィリップ」と、このところ、第二次大戦、ナチスに関する映画の公開が続いていますが、本作は、大戦末期、ドイツの難民を強制的に受け入れざるを得なくなったデンマークの市民大学を持つある街の話。
この市民大学の学長一家もまた、戦争に巻き込まれていく波乱の様子を、揺れ動く少年の心、少年の視点で描いています。
本作もまた、少年の演技、表情が素晴らしいです。
このような視点もまた、これまで知ることのなかった視点であり、こういう歴史上のあまり知られていない事実を、エンタメとして広く知らしめるという映画の存在はとても大事でであると思います。
非道なナチスの振る舞いに、正義として対抗するレジスタンスも、結局、拷問、監禁、復讐のための殺人とやっていることにどれほどの差があるのか。
個人としての善意が、国家としてまとまるとなぜ失われてしまうのか。
デンマーク解放に向けて(原題「解放の来たるとき」)、狂気をまとい先鋭化していくレジスタンスの行動。
しかし、少年が復讐のための殺人を目撃し、国家など関係ない、一人の少女の命が危ないことに、目を覚ますころには、また、徐々に個人の両親に還っていく。
少女を救うことに父親も協力し、検問でも黙って通され、最初は拒んだデンマークの医師も、少年の切なる訴えに目を覚ます。
人としての尊厳は失わまいとして、結局、町を出ていく家族でしたが、侮蔑のまなざしを向ける町の人々を尻目に、「間違えたことはしていない」と胸を張り、堂々としていて清々しくも見えるラストにs救われます。
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