ゆきてかへらぬのレビュー・感想・評価
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根岸吉太郎の前作より面白かったし、好きな作品だけど…
久々の根岸吉太郎監督作品。
シナリオが田中陽造で、「知る人ぞ知る」幻の傑作だったとか。確かに短編小説ようなキレがあり面白い。
時代は、大正〜昭和の初期までを描いている。美術セットもかなり凝っている。CGなどVFXを駆使して大正〜昭和の時代の風景を情感豊かに作り出している。(新宿駅から屋外に出てくるシーンはワンカットで撮っているし、京都の下宿先の建物群のセットも目を見張る!)
今回、カメラがよかった。特に異常に被写界深度を浅くして人物にフォーカスを合わせ、周囲がボケる撮り方が今回の濃密な人間関係に合っていたし、さまざまな場面での色調の変化も美しく暗示的。
などなど映像は素晴らしく、飽きない。
広瀬すずが長谷川泰子、木戸大聖が中原中也、岡田将生が小林秀雄で、この三角関係の演技陣の絡みも見応えがあるが…。
全体的にとても上手く上品で、楽しませてくれるしセンスもある。見ながら飽きない。でも…。何か物足りない。
多分、突き抜けたものがない。
広瀬すずは熱演で、申し分ないけど、やはり男女の絡みのシーンでは、演出に遠慮がある。何も広瀬すずの裸体を見たいわけではないけど(見たいけど)、ちょっと踏み込みが足りなかった。その分嘘くさく見えた。いくら神経がやられている芝居を見せても…
最初の下宿屋のシーンやローラスケート場、ダンスホールのシーン。母娘で入水するシーンなど見応えのあるシーンが数多くあり、見ている分にはとても楽しめる。でも見終わった後、思ったより残らない。
何かが足りない…。真剣さ?リアルさ??
根岸吉太郎の前作より面白かったし、好きな作品だけど…。
疲れた身体に悪い意味で効く映画
期待半分不安半分で観に行きました。
予告編でかなりヤバそうと考えていたけれど、結局、悪い予感が当たりました。
中原中也を演じた木戸大聖さんが酷過ぎる。主役の広瀬すずさんはいつもの感じだけど、やっぱり同じような演技しか出来ないのね、という印象。岡田将生さんの演技は、悪くなかった。
中原中也の作風についてはよく知らない。
映画は、大正浪漫的な雰囲気を何かそれっぽく映画で見せようとしていることで、結果として、ものスゴく安っぽい映画になっている。
カネ返せ!と叫んで立ち上がるほどの怒りはないけれど、疲れた身体に悪い意味で効く映画でした。
広瀬すずファッションショー
大正〜昭和初期あたりの文学作品が好きで、中原中也についても色々調べ、長谷川泰子と小林秀雄とのあれこれも知っていたので、本作予告を観てから非常に楽しみにしていてやっと鑑賞できました。
まず、映像がとても綺麗でした。京都の町の静かな寂しさとか、東京の賑やかな寂しさとか、映像から伝わってきました。
しかし、物語に対する期待値が高すぎたのか…元々関心ある分野で先入観があるのがよくなかったのか…今いち入り込めず、だいぶ距離を感じながら(置いてけぼり感を抱きながら)観ていました。
何が物足りなかったのかなと考えたのですが、主要な3人それぞれについての掘り下げが足りなかった気がする。個々のキャラクターとしても、関係性としても。個々の掘り下げがないので、魅力がいまいち感じられず、なぜ惹かれ合うか釈然としないし、なぜ離れがたいかも理解できない。言葉は悪いですが、『有名な三角関係』を上っ面だけ描いてる感じで、とにかく入り込めない…。やはり恋愛を描く以上は、キャラの魅力が分かるようにしてもらわかないと感情移入できないし、そうなるとだんだん「なんか3人でワチャワチャやってんな〜」みたいに客観的にしか見られなくなってくるんですよね。
それで後半はもう、綺麗で可愛い広瀬すずのモダンガールファッションショーだと思って鑑賞(笑)。いやほんとめちゃくちゃ可愛かった。和モダンな大正ファッションがすごく似合ってた。写真集出してほしいくらい。
とか思いつつ見ているうちに、制作陣もファッションショーのつもりだったのかなと思えてきた。だって、そうじゃないと、昔の男の葬式にバッチバチにキメた喪服姿で乗り込んできて、奥様の目の前でなんか思い出の品っぽい意味深な物を棺に入れて、意味深なことを言ってスタスタ去っていくの、嫌な女すぎるだろ笑。あの喪服姿もすごく良かった、写真集あるなら絶対のせてほしい。
あと、中也役の俳優さん、申し訳ないことに存じ上げなかったのですが、すごく良かった!黒目がちでつぶやな瞳が中原中也ぽかった。そして、喧嘩っ早くて危ういんだけど純真で人懐っこい中也の魅力をよく表現されていたと思う。あと、結核に冒されてからのやつれぶりが物凄く、一瞬俳優さん変わったかと思った。役作りすごい。
岡田将生さんもさすがシュッとしていて、当時のファッションがよく似合っていたし、大人の男の安定感も醸されていて小林秀雄としての説得力がありました。
内容的には、全体に没入しづらいストーリーと展開で惜しいな星3くらいかなと思ったけど、広瀬すずの可愛さを満喫できたのと、中也と小林のキャスティングが良かったので、0.5プラスしました。
大正ロマネスク‼️
大正時代の京都と東京を舞台にした、女優と詩人、文芸評論家の三人の男女の三角関係を描いた大正ロマネスク作品‼️作品としては、森田芳光監督の「それから」みたいな作品かなと思ったら、大正時代を舞台にした、トリュフォー監督の「突然炎のごとく」だと感じました‼️16年ぶりにメガホンを取った根岸監督が、男女三人のまるでつっかえ棒で支え合っているかのようなもろい恋愛関係を、レトロに描いてます‼️大正時代の京都や東京の街並みの再現も完璧だし、衣装や風俗も同じく、色を抑えた映像も大正時代っぽいし、そしてすずちゃんや岡田将生の演技もちゃんと大正してる‼️ただ中原中也役の木戸大聖の演技が思いっきり令和で、違和感ありまくりでした‼️
入り込めるか、込めないか。評価は変わる。
美術、照明、衣装、メイクアップ、全てのスタッフを絶賛したい。
全編美しい❗
中也と泰子が暮らし始めた京都の路地、
雨に濡れる黒瓦、俯瞰に流れる朱の傘、白く積りゆく雪、風に流れる桜。
部屋の調度品、窓ガラス、食器に至るまで
細部にまで神経を研ぎ澄ませた根岸監督の作品に魅せられた。
星5はこの映像美に捧げたい。
物語にはなぜか入り込めなかった。
恐れなく言ってしまえば、現実味のない芝居に退屈してしまった。
広瀬すずの全力演技をしても、ヒリヒリとした軋みが伝わってこない。
中原中也という詩人の魂も、小林秀雄の裏切りの痛みも。
ふと、気がついた。
コレはこの映画は、原作ゆきてかえらぬは、2人の男に揺れた長谷川泰子の口述筆記による著作を原作にした、長谷川泰子の視点で描かれた映画であると。
彼女にとっては、後の天才詩人も(17才の傲慢と繊細にゆれるセンチメンタルで世間知らずな)一人の若者であり、後の大評論家も(頭でっかちで理性を重んじる)窮屈な大人であるのかもしれない。
広瀬すずの渾身演技に胸打たれたのは映画後半、中也が亡くなったと知った後に、その死に慟哭し、中也のくるりと折り畳んだ赤い手袋を(彼の心臓として)唇に寄せ食べようとする無言の数分のシ−ンだった。
求めるものによって、この映画の評価は変わるのかもしれない。
3人の演技がよかったです!
出演者でちょっと気になってたので鑑賞!
京都。
まだ芽の出ない女優、長谷川泰子は、まだ学生だった中原中也と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども、相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。
東京。
泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も評論の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。
しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。
というのがあらすじ!
個人的にはちょっとよくわからない難しい印象でした…
最初は見逃した?って思うぐらい一気に同棲までいってそして東京に出た感じ…笑
そして中原中也と長谷川泰子と小林秀雄の三角関係は理解しにくい…
途中は掴み合いの喧嘩とかしてたけど迫力がすごかったですね!
ナミビアの砂漠をちょっと思い出しました笑
3人ともちょっとめんどくさい人たちだなーという感じ笑
有名な3人の実話の話を元にした話らしくそこを知ってる人はかなり楽しめる作品なんだろうなと思います
私は全く知らない人たちだったので調べていればもう少し楽しめたかなと思います…
でも3人の演技が素晴らしかったですし大正や昭和初期が好きなので楽しめました!
あと広瀬すずさんが美しかったですし衣装もお綺麗でしたね!
いい映画をありがとうございました😊
岡田将生はさすが!広瀬すずも頑張っていた、中原役の演技が
岡田将生さんが好きなので広瀬すずだし、これはなかなか良い作品なんじゃないかと思って見てみましたが中原役の人の演技があまりに学芸会すぎて「これは見て失敗した〜」と序盤からだいぶ萎えました。はっきりいって主演を張るにはこの人ではだいぶ力不足です。
事務所がゴリ押しで金積んだのでしょうか?笑
ま、見ていくうちにこの人の演技も見るのに慣れてはいきましたが。しかもアイドルかと思いきや肩書きが俳優のトライストーンの方みたいなので事務所の先輩である綾野剛を見習ってもっと演技力を頑張ってほしいです。
広瀬すずは頑張っていたなと思います。広瀬すずはただのアイドル女優かと思いきや最近の彼女は良い演技する女優になってきたと感じます。
今作では特に神経症でイカれてきたとこや、中原との取っ組み合いのシーン、時計を聞いて泣くとことその後に破壊するとこは大爆笑しちゃいました!
ただ、この作品でのこの女性像は何というかエロティックで色気あるような女性として映したいように私は解釈しましたが、広瀬すずではその女性像を映し出すための色気が足りないなーと思います。
これは年齢的にもまだ若いしこれから歳を重ねてそういった色気的な魅力をつけていくのかなとは思いますが、この点で言うと広瀬すずに合ってない役柄だな〜と思いました。なんていうか演技はうまいが幼すぎるように見えました。
倉科カナとかがやったらめっちゃ色気ムンムンにやれたのかな?と、最近のブレイクしてる人でなら松本若菜あたりでもいいかなとか思ったり。
岡田将生さんはさすがでした、途中一瞬だけ金を貸してくれってとこのシーンで出てくるおじさん、あの人と岡田さんとの掛け合いのシーンが一番見ててしっくりきて安心して見れるシーンだったなと思いました。
内容的には奇妙な三角関係を描いた、なんというかぶっとんだ作品です。
昨年公開された「雨の中の慾情」に少し通じる世界観もありました。
こういう作品は演技力の爆発さをいかに魅せれるかが大事かと思うのですが、やはりその点でいうと中原役がとんでもない素人演技なので見てて恥ずかしくなりました。
せっかく岡田将生さんが出てるのにだいぶ駄作で岡田将生の無駄遣いだなと思いました。
ユーモア
キャストは豪華なのに全然話題になってないな…と不思議になりながらの鑑賞でしたが、あーこれはヒット難しいわと納得させられる感じのマニアックな作品でした。
モデル元の登場人物は名前聞いた事あるかな?くらいの認識なのでほぼほぼ初見です。
ほぼほぼ登場人物3人でのやっかみ合いがメインですが、そのやり取りが中々に狂気に満ちていて本来なら大好物なはずなんですが、現代でいう厨二病チックなところが強すぎて引きながらの鑑賞になりました。
ちょい捻くれ文学学生な中原中也と転がり込んできた役者見習いお姉さんの長谷川泰子、数年後に編集者として2人と携わる小林秀雄の3人芝居ですが、これだけで2時間オーバーの時間を持たせてる、なんならもっと尺伸ばして深掘りすればより良かったのでは?となるのが惜しいところでした。
序盤のちょい粗いお姉さんだったのがマシだったのかと思うぐらい泰子のメンヘラっぷりが加速していくんですが、それまでの背景が濃く描かれていないために、精神病でおかしくなってると言われても、事細かいところまで他人に指示させるところからの大女優への昇格までの繋がりがうまいこと見出せずで頭の中クエスチョンマークだらけでした。
終盤の哀愁漂う感じは好みだったので、良い部分悪い部分が観る人によって分かれるんだろうなぁとはなりました。
多分敢えてだとは思うんですが、台詞回しがわざとらしいのが序盤から中盤にかけてくどくなってしまっており、一瞬持ち直したと思ったらやっぱりくどくなったりと胃もたれしてしまいました。
大正時代のリアルと演劇っぽさが噛み合わさった結果、イマイチ世界観にのめり込めないのがずっとノイズになっていました。
濡れ場らしい濡れ場が2回あるんですが、全年齢対象の時点で期待せずでしたが脱いでも映るのは背中のみだったり、後ろ姿が多くて本当にすずちゃんがやってるのか?と疑って観てしまうところが多く、そこがエロティックならもっと時代とか関係性とかにハマれたのかなと思うとキャスティングからミスってたのでは?となってしまうのが残念でした。
木戸くんは「先生!口裂け女です!」で初めて出会って、去年の「きみの色」でドカンと興味を持っていたので、木戸くん目当てで今作を観たといっても過言ではないんですが、その2作に比べて演技が拙い…?となってしまいました。
台詞回しが独特なのはあるんですが、すずちゃんと岡田くんと並ぶとどうしても幼さが出てしまってバランスが悪くなってしまっていてモヤモヤしっぱなしでした。
ただ晩年の中也の燻っている感じはとても好きでした。
岡田くんが出ると画面がキュッと引き締まるのもあり、安心安全安定してくれて肩の荷が降りたのもこれまた事実です。
大正時代を感じさせるセットや背景だったりはとても良かったですし、止まったところを切り取ったようなカットは綺麗でした。
地味に気になったのが上から下へ、下から上へ動くカメラワークの時にプルプル震えていたところだけは固定じゃないんだ…となりました。
今年に入ってから気になってる事なんですが、大作で主演を張ってる役者陣が大衆ウケではない作品に出た時にガクッと興行収入が下がる現象が2ヶ月で連発してるんですけど、洋画離れに近いものがあるのかな?と勘繰ってしまったり。
2時間タイムスリップした感覚は確かにあったので、それだけは儲けもんかなと思いました。
鑑賞日 2/25
鑑賞時間 16:05〜18:25
座席 L-13
三人三様に切なく、美しい
中学生の頃に中原中也、長谷川泰子、小林秀雄の関係を知り、興味津々。逗子に住んでいたので、隣の鎌倉にいたことに親しみを感じ、映画になったのが意外に遅かったと思いました。
レビュー評価はそんなに高くなかったので様子見でしたが、良かったです。特に中原中也。木戸大聖の清潔感が、退廃的、暗くなりがちな話を救っていました。
文人たちよりも泰子の方が神経症で世話を焼かせていたなんて面白い。確かにそうだったかもしれない。
自分の元を去る彼女の身の周り品を運んであげて。小林と泰子の部屋に柱時計を贈り、自分も同じ柱時計の音を部屋で聞く中也。それに泰子は錯乱するのだが、何だかかわいい。今だったらお揃いのスマホか。
17歳の学生の身分で泰子をフランス料理のレストランに誘い、贅沢ねと言われた中也は、自分にとっての贅沢は詩なのだと語る。印象的なシーンでした。
大正時代の家、TOBACOOSの看板、ダンスホール、メリーゴーランド、無声映画、舟遊び。美しい映像と恐ろしい結核の対比。宮沢賢治や石川啄木も同じ死因だったと思うと、なんてもったいないことか。
彼らの青春の時の流れが切なく、生きた時代も切ない。でも中原中也は有言実行。短い人生でちゃんと後世に残る詩を書き、親孝行した。残され、長生きした2人には死ぬまで忘れえぬ人だったろう。まさに天使のような詩人だ。
シナプス
泰子を中心とした3人の、独特な愛憎を描いた作品。
彼らの職業もあってか理解も共感もできないが、それを求める作品でもないとは思う。
中原中也が出る割に創作の方には話がいかず、惚れた腫れたに終始している。
それで成り立つのは、恋愛や友情だけでは語りきれない、言葉にできぬほど複雑な内面が描かれているから。
神経症になった泰子は傍から見るとちょっとコミカルで、白磁の壺を投げたシーンなどで少し笑った。
役柄的に広瀬すずは色気が足りないのだけど、低く掠れた声音や重くした瞼で標準以上に仕上げていてサスガ。
20歳から始まることも考えれば、最終的にあれで正解にも感じられたほど。
岡田将生の落ち着いた芝居は全体を下支えしていた。
気になるのは役者ごとに醸す“時代感”がバラバラな点。
特に木戸大聖は突出して今っぽすぎて、マントやハットもコスプレにしか見えないのは残念。
その代わり、建物や調度品の雰囲気はバッチリだった。
正直観終わって残るものがあるわけではないけど、いくつかの価値観を覗く意味では興味深い。
それは上で少し下げた木戸大聖含め、実在感を持たせた役者の力だろう。
ただ、重さや厚みを出すまでには未だ及ばず。
『敵』で「フランス文学よりフランス書院」と宣ってたカトウシンスケが仏文学者の辰野隆役で、偶然ながら爆笑。
ボールルームでのダンスシーンも素敵でした。
愛は平和のなかになかった
17歳の少年が煙草を吸い、酒を飲み、女郎を買い、年上の女性と同棲する。
およそ現在では考えれない、ポリティカルコレクトネスから外れた物語だ。
中原中也は医者の息子で親の金で放蕩するのだが、そのような文学史など知らなくても中原自身の金でなく生活しているのは明らかだ。
中原に、そのことに対する後ろめたさなどない。
泰子の女優業で稼いだなけなしの金をその場で借り、「今からこの金で女郎を買いにいく」とうそぶく。
泰子は、世間の側にいる小林の経済と「まともさ」に寄りかかりながら、ダメンズの中原を小林よりも、より深い部分で愛さずにいられない。
小林は小林で本当に愛しているのは中原の天才性であり、泰子は中原に至る媒介に過ぎない。
泰子をただ肉欲のままに愛することができずにいることの倒錯がもどかしく美しい。
盗られた女と盗った男のもとに足しげく通う中原。
時計を贈って、その時計の時報を同じ時刻に中原が聞いているとわかりながら、泰子は、その時計を自分では壊すことが出来ない。
泰子は小林に時計を壊させるが、その壊した時計の上に、泰子は、小林の審美眼の象徴である朝鮮白磁を叩きつける。
全編、美しい画像と台詞に余計なことを考えずに浸っていられる最近では珍しい映画かもしれない。
中原中也の天才性に恥ずかしくない台詞を生み出すのは大変だったろうと推察する。
広瀬すずのすこし時代がかった大仰なセリフ回しが心地よかった。
まるきり、不幸の物語であるにも関わらず、大正の耽美に私たちは酔いしれてしまう。
「二人の不幸は終わったのよ」
の台詞が間をあけて二回繰り返される。
まるで不幸をいとおしむように。
もう病気だ。
よい!
トータス松本、柄本佑、草刈民代はワンカットのみの出演。
それでも画面に残りたいと思ったのだろう。
その価値はあったと思う。
中原中也って、あれだろ?魁、男塾のOPの作詞やった人だろ?っと、思った貴方?
全ての物事は週間少年ジャンプから生まれているというのは、貴方の妄想ですよ?いつものお薬、出しときましょうねー?
中原中也は、なよっとした、黒ずくめの優男なので、教科書で、落書きされない文豪第一位。イケメンすぎて、落書きしようがないんだもん。
森鴎外と正岡子規は、あんなに落書きされていたのにぃぃぃ。
汚れちまった悲しみには知ってるよね?最近の若いもんは、文豪ストレイドッグスか?
中原中也を演じるのは、やっと、中国で公開されたのに、キリスト教要素がカットされまくった「 アニメ きみの色」 の音楽好き学生のルイくんを演じた木戸大星。
幸薄い中原中也を見事に演じきったと思う。若者ゆえの青臭さに若い頃の自分を思い出して、何度、サブイボが立った事か。
誰よりも、中原中也の魅力をあんな事やこんな事や性感帯まで知り尽くした( おい)文芸評論家の小林秀雄に岡田将生。文芸評論家というだけあって、多分、ゲイである事は間違いない。
しかし、岡田将生本人はガチロリでバラエティ番組で小学生の女の子に
同棲しないか?俺、絶対に幸せにするよ!
と、口説いていたのが、SEKAINOOWARIのセカオワハウスくらい怖かったものれす。
二人で愛を育んでいた中原中也と、小林秀雄のカップル( ん?)に横恋慕をするのが、広瀬すず。キリエのうたで、岩井俊二監督にあんな事や、こんな事まで開発され( 以下、略)長谷川泰子を演じる。
この女さえいなけりゃ、中原中也も小林秀雄も幸せに過ごしていた筈なのに。ミューズと言われる事もあるらしいが、俺には只のサークルクラッシャーにしか見えなかった。
この女が怖い、怖い。
喧嘩になったら、武蔵をボコボコにした故・山本KIDの如く、馬乗りになって、的確に急所を攻めるのだ。
メンヘラ特有の、己の病気を盾にして、あらゆる人を斬りまくる。俺、過去のメンヘラにやられた行為を思い出して、PTSDを再発しそうになっちゃったよ。
中原中也に飽きて、小林秀雄に乗り換える時も、お引越しを中原中也に手伝わせるとか...。
同棲しているのに、してくれない小林秀雄と、やっと貫通するも、
私を分析しないでちょうだい!
と、逆ギレするのだ。どーせぇーちゅーねん?
次第に精神がシャイニングしてきて、
野菜は等分で切って!ご飯に乗せる納豆の粒は13個までよ?と、無茶振り。
不用品に成り下がった広瀬すずをクリーンオフ期間内だったので返却する小林秀雄。
猫の貸し借りのように、返却されるも、
ウーマンリブ、ブラックジャックによろしく、自立して、ようやく二人の男から去ってくれる。めでたし、めでたし。どっとはらい。
で...、終われるワケは無いのだが、
みなさん、知っての通り。中原中也は早逝して30年の短い生涯を終える。
長谷川泰子は、この映画の原案にもなった自伝を出版していてそこそこ売れているようだ。
時代の仇花、ミューズと評される事も多いが、これって疫病神と例えるのが正しいのではないのでしょうか?
無茶苦茶、金かけたセット、撮影、照明最高、無駄な登場人物が人っこ一人おらず、劇伴も最高、脚本も文句なし、主要キャストの演技も最高!
366日とか、ファーストキスなんて、見た後に何も残らないぜ?
ファーストフードばかりじゃなくて、たまには、高い料理を食べてみましょう!
戦前の日本を舞台にした映画なので、見る気がわかない人は多いだろうけど、充分に現代に通じるものがある映画なんだよ?
ドリカムが三人組だった時が、最高だったと思う人にお勧め。この映画を見れば、ドリカムが二人組になった理由が分かるとか、分からないとか。
先入観を持たずに見て欲しい。絶対に損はしないと思うぞ?
中原中也に興味があるかどうか
中原中也に全く興味ないけど、なんとなく良さそうなので視聴。
まず、自分はサイコパスな主要登場人物が苦手なので、中原も長谷川も苦手でした。なので☆2です。
中原と長谷川の出会いのシーンだけが謎過ぎましたが、あとは三角関係としてはありかなと。ただし、中原中也に興味がない人がこの三角関係に興味が持てるかどうかは微妙です。正直、中原中也に興味が無かったので、あまり興味持てませんでした。(なぜ観に行ったんだ、というのはさておき)
最後に、広瀬すずが「きれいではない役」をしっかりと演じていました。これは良かったです。それだけでも観る価値はあると思います。
映像が良い
キノフィルム、映像が良い
良いが、良すぎてしまって、
必要以上に鮮やかなのが気になる。
夜のシーンはちょうど良く感じるので、
昼だと作り物感が出てしまうか。
キャストも誰も良かった。
中原中也が何も説明されなくても
中原中也だと分かる絵の力は、とんでもないと思う。
性的なシーンはもっと描くか、
もっと描かない方がバランスが良いと思う。
個人的には、もっと描かない方が良いと思う。
純粋で、手に入らないもの
しみじみした気持ちが、鑑賞後の第一印象。愛って、危うくてもろくて自分勝手だね。
中也を演じた木戸大聖さんは熱演だったと思う。今後誰かが中也を演じるときは、彼を越えるためにかなりのデフォルメが必要だろう。それくらい自然だった。でももう少し、彼の狂気が表現されていてもよかった。おそらく、長谷川泰子たる広瀬すずさんがそれを担ったんだと思う。
広瀬すずって、こんなにいい役者さんなんだ。後半、ほんとに自然に長谷川泰子だった。まあ見たわけじゃないけどそう思った。そういう意味では小林秀雄を演じる岡田将生さんは難しいポジションだったね。常識人の狂気って、どうすりゃいいのって感じ。作品全体としては、詩壇における中也の立ち位置とかが分かればなおよかったのにね。
さらに言えば、のちの泰子の私生児を中也が猫可愛がりしたエピソードは完全割愛だったけど、あれこれが中也なんだけどなー。別れた恋人の私生児ですよ?愛する事に純粋無垢。普通じゃないよね。ずっと愛したらよかったのに。でもできなかった。彼のせい?彼女のせい?人って、みんな狂ってるから。
対比がよかった
中原→泰子→小林→中原で、見事なまでに三角関係でした。
中原が泰子と喧嘩をして負けるのは、途中まで気づかず劇中の会話で言われてから気づきました。
泰子が中原の客である小林に失礼な態度を取れるのも、中原の泰子への愛が大きいからですね。
泰子が小林を好きになりすぎて病気になったのを見て、少し分かるような気もします。
中原に対しては傍若無人だった泰子ですが、小林に対しては髪を整えたり身なりを気をつけてたのがこれも愛の大きさがわかる。
“小林の客”である中原にはしっかりもてなして、ティーカップも持ち手が右側“でないといけない”。
病気になったのも“でないといけない”ことが多かったからでは。
本当に小林の事が好きなのが伝わってきました。
『神経と神経で繋がろうとしましたの。それが1番深い愛、潔い愛だと思ったから』
小林と泰子のセックスシーンがありましたが、上記の台詞から察するに、結局最後まで出来なかったんですね。
時計のシーンで泰子がおかしくなったの何となく気持ちわかったような。小林と中原が神経で繋がりそうで気持ち悪いと見た時は思いました。
最初に小林は傍若無人な自由そうな泰子に惚れたのかと思ったら終盤の中原の奥さんを褒めてるの見て、お前もそういう人がいいんかい!って気持ちと同時にまた手を出そうとしたんじゃないのかと思いました。結局、中原の泰子だからよかったんですね。
泰子と叩き合いして、でも結局は負けちゃう中原と、優しく寄り添うのに最後は叩いて払っちゃう小林。その対比もすばらいですね。
岡田将生さん出てきてからのワクワク感、さすがだなと感じました。ほんと空気が違うというか物語が動き出した感じが、より一層泰子の気持ちがわかった。
広瀬すずさんは今まで作品を見た事無かったんですが、演技が上手でよかったです。
目で語る演技や、違和感のない喋り方とか。
期待しただけにちょっと残念
中原中也と小林秀雄と長谷川泰子の実話を基にしたお話なんだけど、かなり変えてしまっていました。
より濃厚な面白い話になっているならまだいいんだけど、逆なんですよね。wikiで「長谷川泰子」を見てもらえるだけでもわかるけど、実際はもっと複雑で、それをもっと描いてくれれば、こんな淡泊なお話にならずにすんだのに。
あと、小林秀雄役の岡田将生さんは相変わらずの感情がイマイチ伝わらない演技で、軽い気持ちで泰子を誘ったけど、扱いきれなくなってさっさと逃げちゃった情の薄い男にしか見えなくて残念。
小林秀雄をあそこまでたんぱくにするなら、もっと中原中也を軸にした話にしてほしかった。
中原中也にリアリティがあったのと、中也と泰子が取っ組み合いの喧嘩をすると泰子が必ず勝ってしまうのはちょっと面白かったけどw
境界を失ったソウルメイト
主役は長谷川泰子ではあるが、3人の関係性の中心にいるのは中原中也であるように感じた。
泰子と中也、中也と秀雄、秀雄と泰子。
色恋の三角関係だけでなくそれぞれがもっと深い心の場所で繋がっているような、いわばソウルメイトのような存在、という解釈なのかもしれない。
それぞれが境界を保つためにする選択とその過程が見えた。
広瀬すずさん、今まであどけなさと辛さを表には出さず堪える姿が魅力的な役が多かったように思うが、中也からみて年上女房の佇まいで喚き壊れる姿は新鮮のように思った。
映像美
冒頭の京都シーンでの和傘、雨、そして雪。カイドウの花など映像がまず美しい。広瀬すず、木戸大聖の寄りも多く時代背景や小物にも余念がない。
出来るだけ3人について調べてから観賞したが、泰子はそんなには悪女には思えなかった。これは監督が脚本より史実を優先してくれたお陰もあると思う。全員身勝手な部分もあるし、1番悪いの小林では?とさえ思った。
中也は若さ故の正直さと無鉄砲さがあり最も人間らしく共感できる点も多かった(奪われて捨て台詞吐くところなど)
泰子も何だかんだ中也が気になって、感情剥き出してぶつかれる相手で素直な人という印象。生きる為に愛されたくて、繋がっていたくて…というのは現代にもよくある。
小林だけ狡猾な考えが透けてみえ(一等取って返すから200円貸してだの泰子は料理ができないと平気で言う、神経病になったら逃げる…)て嫌な男と思った。
まぁ2人とも普通に女に手を上げるのでその時点でどっちも良くないのだが(笑)
全体として感動ポイントはない。昔の人の愛と嫉妬の恋愛劇としてみた。現代人もその点は共感できるなと腑に落ちた。
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