ゆきてかへらぬのレビュー・感想・評価
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境界を失ったソウルメイト
主役は長谷川泰子ではあるが、3人の関係性の中心にいるのは中原中也であるように感じた。
泰子と中也、中也と秀雄、秀雄と泰子。
色恋の三角関係だけでなくそれぞれがもっと深い心の場所で繋がっているような、いわばソウルメイトのような存在、という解釈なのかもしれない。
それぞれが境界を保つためにする選択とその過程が見えた。
広瀬すずさん、今まであどけなさと辛さを表には出さず堪える姿が魅力的な役が多かったように思うが、中也からみて年上女房の佇まいで喚き壊れる姿は新鮮のように思った。
飛花
女優・長谷川泰子と、彼女に恋をした詩人・中原中也、そして中也の友人の文芸評論家・小林秀雄の恋愛と友情の話。
20歳の長谷川泰子が17歳の学生であった中原中也と出会い、彼の下宿に居候することになり巻き起こっていくストーリー。
中原中也以外の2人は知らずに観賞。
三人の関係をみせる作品ではあるけれど、あくまでも長谷川泰子がメインで、中原中也と小林秀雄は助演という位置づけですかね。
文学的な題材の作品とはいえ、三人共に日常から恋愛に至るまで、思想や言葉の選び方がまあ文学的で劇的で面倒臭いこと。
作風と合っているから、それが嫌な感じはしないけれど。
何が実話なのかは知らないけれど、共依存症に陥りやすい感じの長谷川泰子に振り回される二人の男という感じで、ドロドロ感は堪能できるけれど、文学的過ぎて生々しさが足りなかったし、やっぱりちょっと長かった。
大正時代の文学作品?
映像美
冒頭の京都シーンでの和傘、雨、そして雪。カイドウの花など映像がまず美しい。広瀬すず、木戸大聖の寄りも多く時代背景や小物にも余念がない。
出来るだけ3人について調べてから観賞したが、泰子はそんなには悪女には思えなかった。これは監督が脚本より史実を優先してくれたお陰もあると思う。全員身勝手な部分もあるし、1番悪いの小林では?とさえ思った。
中也は若さ故の正直さと無鉄砲さがあり最も人間らしく共感できる点も多かった(奪われて捨て台詞吐くところなど)
泰子も何だかんだ中也が気になって、感情剥き出してぶつかれる相手で素直な人という印象。生きる為に愛されたくて、繋がっていたくて…というのは現代にもよくある。
小林だけ狡猾な考えが透けてみえ(一等取って返すから200円貸してだの泰子は料理ができないと平気で言う、神経病になったら逃げる…)て嫌な男と思った。
まぁ2人とも普通に女に手を上げるのでその時点でどっちも良くないのだが(笑)
全体として感動ポイントはない。昔の人の愛と嫉妬の恋愛劇としてみた。現代人もその点は共感できるなと腑に落ちた。
感傷
大正浪漫漂う、文学的なトライアングル・ラブ
ボガ・モガと呼ばれた時代の最先端のお洒落な人達が、闊歩していた大正から昭和の世の中が舞台。そんな時代を生きた、天才詩人・中原中也とその恋人で実在の女優・長谷川泰子、そして、中原の友人でもあり、泰子とも暮らしていた文芸評論家・小林秀雄の3人による、奇妙な三角関係を描いた、大正ロマン溢れた青春ラブ・ストーリー。
当時の時代を反映してか、台詞表現も文学的で、やや難解な3人の人間模様に加えて、喜怒哀楽の激しい演技に、芥川賞作品を読んでいる様な印象が残った。また、登場人物である小林秀雄については、1980年代まで生存しており、今でも文芸界においても何かとその名前や功績を目にすることもあった。しかし、残念ながら中原中也については、詩人として名前は聞いたことはあっても、彼の詩も生涯も全く知らず、長谷川泰子については、今回初めて知った人物であるため、個人的に入り込める内容ではなかった。
女優を目指す二十歳の長谷川泰子は、なかなか日の目が出ず、燻った日々を送っていた。そんな時、17歳の学生・中原中也と出会い、互いに淋しさを補うように一緒に生活を始める。そして、京都から上京した2人の前に、中也の友人で文型評論家の小林秀雄が現れる。小林は中也のよき理解者であり、彼の才能を大いに買っていた。
そんな意気投合する2人の会話についていけなかった泰子は、自分だけが取り残された想いに駆られ、嫉妬する。と同時に、中也に無い小林の魅力に惹かれるようになり、中也を棄てて小林の元へと走る。そこから、3人の奇妙で、文学的な三角関係が描かれていく。
主演の長谷川泰子役には広瀬すずが演じ、可愛かったすずちゃんが、すっかり大人の女の匂いを漂わせる演技を魅せていた。また、男を巡って精神を病んで、激しい感情を剥き出しにする演技に、新たな女優としての成長も感じた。中原中也には、最近よくドラマでも目にする木戸大聖が、虚勢を張り泰子に執着しながらも、天才肌の男を演じていた。そして、小林秀雄には、岡田将生が、泰子の言動に翻弄される男を、安定感のある演技で演じていた。
中也と泰子@広島
小説もそうだが、映画も「なにを描くか」よりも「なにを描かないか」が重要であったりする。
たとえばこの映画は、京都での中也と泰子の話から始まっている。冒頭の、セットで作られた見事な黒の色調の京の街並みと、屋根の柿の実の赤の対比が鮮烈で印象的である。ただ、泰子が広島から女優を目指してかなりの辛酸を重ねて東京に行き、しかし一か月ほどで関東大震災で心ならずも東京を離れて京都に去っていた、などの背景は語られない。
また中也も、郷里の山口で落第して居づらくなって京都の学校に親から行かせてもらった、などの背景も語られない。
さらに、中也と泰子は広島の同じ敷地内の学校に幼いころ通っていて、面識があったかどうかは不明だが、京都に知り合いも少ない中で二人が同じ場所で幼年期を過ごした気易さ、共感などは語られない。
後の泰子が、中也や小林秀雄以外の相当な文学界や演劇界の大物との交流があったことも語られない。
中也を「振った」泰子が、のちに中也ファンからのバッシングを受けたことも語られない。
おそらく監督も制作陣も、実際はさらに豊穣で複雑で多岐にわたる事実を描くというよりも、鋭敏で鮮烈で劇的でシンプルな美しい画、それを撮りたかったんだろう、そんな映画なのだと思う。
とてつもなく印象的な場面をいくつか観られたら満足できる、という観客なら楽しめるが、そうでない観客には不満が残る、そんな作品。
広瀬すずが美味しそうだ‼️❓
君とのバランス。
大正時代の京都、17才学生の詩人・中原中也と、詩人・中原を認める友人で文芸評論家・小林秀雄と、中原の家で同居する新進女優・長谷川泰子の話。
虚勢を張りあう泰子と中原が惹かれあい、後に中原に用事があり訪ねてきた小林、…と恋に落ちる泰子だったが、泰子の様子が少しずつおかしなる…。
本作観て思ったのは気難しく、自由奔放な泰子と自信ありげな中原の関係性、今の時代では中々ありえないけど女性を殴る、取っ組み合いと、それに負けずやり返す泰子、その関係で精神バランスが安定してたって感じなんですかね?!
後に出会う小林と付き合い始めると、自分を押し殺して小林に合わせる生活でメンタル崩壊となってく泰子だったけど。結局、自分を出せた中原のことが好きだったのかな?!作品を観る限りでは私にはそう見えた。作品としては面白くもないし、つまらなくもなく、こんな話があったんだ!って感じ。
好きな広瀬すずさん主演だから観れたって感じと、広瀬すず作品にはハズレは無いと思ってた私だけど本作はどうかな!?(笑)
期待が大きかっただけに‥
根岸吉太郎監督作品は『探偵物語』以来40年強ぶりでしょうか?『探偵の工藤ちゃん』ではないけど松田優作さんの探偵と初々しい薬師丸ひろ子さん(写真集持ってました!)の斬新な物語に感銘を覚えたことも遠い昔になりました。
今思えばコナン君の工藤新一は『探偵の工藤ちゃん』から来てるみたいですね?!今更ながら知りました。コナンファンのみなさんプチ情報です!(って誰でも知ってる??)
先週松たか子さんの(CGとはいえ)美しいお顔を拝見させていただき、今週は広瀬すずさんを堪能しに朝イチの上映会に臨みました。ホントは昨日の封切り日に来たかったんですが叶わず。いやあ、美しいお顔と背中でした。
ゼクシィのCMでプロポーズされて涙する鮮烈な16歳を見てから末恐ろしいと思ってましたが、確かに『ラプラス』と『ネメシス』以外は外さなかった素敵な女優さん(最近はジェンダーレスで俳優って表現するみたいですが)だと思ってましたが今回は私にははまりませんでした。カタカナタイトルがいけないのでしょうか?今回も『ユキテカヘラヌ』あれ?違うぞ!
なんだが小難しそうな評論家小林秀雄を岡田将生さんの雰囲気は見事にはまってましたし、木戸大聖さんも国語の教科書でしか見たことないですが中原中也さんをよく演じられてました。(って何故言える?)また自由奔放な泰子(広瀬すずさん)が壊れかけてしまう演技もなかなかでした。
『海街ダイアリー』の時は台本を読まずに現場で是枝監督から言われるままに台詞をこなしたって聞きましたが素晴らしいですね。彼女も20代後半にさしかかり濡ればもこなすようになって嬉しいような哀しいような気持ちです、お父さん世代としては。
ただあまりはまらなかった理由を私なりに考えてみました‥‥が残念ながら思いつきません。しいて言えば通路挟んで反対の位置あたりのお父さん(と言ってもまだ30代後半?)が生理現象とはいえ後半でイビキをかき始めたのが印象的でした。
封切り初の土曜日の朝イチ回なので皆さんそれなりの勢いで臨まれたとは思うのですけど‥もう一回観た方がいいでしょうか?
作品のレビューにはほど遠くすみません!
日本のおしゃれな時代を生きた3人
中原中也と駆け出しの女優長谷川泰子、中也の作品に惚れ込む文芸評論家小林秀雄の三角関係?なんとも言えない奇妙な関係のお話でした。
大正という時代背景、、、和と洋が織り混ざった建物のつくり、衣装、ヘアメイク、、、とても魅力的でした。
映像が素晴らしく、静かな雨が打つ長屋の細道の石畳み、、、雨に濡れて黒くなった瓦屋根に赤橙色の柿、、、3人でボートを楽しむ水色の世界、、、桜が満開の桜色でスクリーンがいっぱいになり、映画館で観れて良かったなという印象です。
キーワードになる色々なモノが登場します。
柿、壺、振り子時計、お茶碗、赤い手袋、、、貧しい時代から、余裕のある時代へ、、、素敵な物が世にでてきた時代、、、物への執着を感じます。
脚本は40年前に田中陽造さんが書かれたものに、根岸監督が惚れ込んで映画化というだけあり、セリフひとつひとつに色気を感じます。
中原と泰子の狂気は感じましたが、印象に残ったのは泰子の母親役の滝内公美さんの圧倒的存在感、、、
全体的にどうだったか、、、というのはネタバレになるので控えます、、、大正ロマンの文学、生活、思考、、、新旧のものが入り混じった時代、、、戦争が起きずにそんな時代が続いてたら、日本はもっとおしゃれになっていたんだろうな、、、と思わせる、そんな映画でした。
大正デカダンス
ブルーダイヤモンドにはほど遠い
ゆきてかへらぬ
小林が天才だ、ダイヤモンドと、何度も言うほどイエローダイヤへとくすんで行くのが詩人なのだ。
更に、大聖君も頑張っているが、そもそも17歳の青年からオッサンにまで薄汚れる詩人を演じるのは荷が重過ぎる。
泰子も、加齢に薄汚れる詩人と真逆に老練する評論家に挟まれればアタオカとなるも当然でしょう。
魔性なんぞ一欠片も感じ無かったのは、小林と同じだ。
あれはジェラシーだったのだろう。
とは言え、
その無理無理の青春の一コマを開花から落花を大正浪漫として楽しませてくれた。
また、ロケ地は最高の場所が数多くあった。
わかったのは、大徳寺の塔頭辺りかな。
出来たら、ロケ地巡りをしてみたい。
(^-^)
ゆきてかへらぬ
劇場公開日:2025年2月21日 128分
大正時代の京都と東京を舞台に、実在した女優・長谷川泰子と詩人・中原中也、文芸評論家・小林秀雄という男女3人の愛と青春を描いたドラマ。
大正時代の京都。20歳の新進女優・長谷川泰子は、17歳の学生・中原中也と出会う。
どこか虚勢を張る2人は互いにひかれあい、一緒に暮らしはじめる。
やがて東京に引越した2人の家を、小林秀雄が訪れる。
小林は詩人としての中也の才能を誰よりも認めており、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。
中也と小林の仲むつまじい様子を目の当たりにした泰子は、才気あふれる創作者たる彼らに置いてけぼりにされたような寂しさを感じる。
やがて小林も泰子の魅力と女優としての才能に気づき、後戻りできない複雑で歪な三角関係が始まる。
広瀬すずが長谷川泰子、木戸大聖が中原中也、岡田将生が小林秀雄を演じた。
「探偵物語」「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の名匠・根岸吉太郎監督が16年ぶりに長編映画のメガホンをとり、
「ツィゴイネルワイゼン」の田中陽造が脚本を担当。
ゆきてかへらぬ
劇場公開日:2025年2月21日 128分
大時代的
中原中也という天才
汚れつちまつた悲しみに、
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さえ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の皮袋
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむもなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む
汚れつちまった悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……
この詩を読んで感動しない人間は居るだろうか?
この映画は長谷川泰子(広瀬すず)の映画なのです。
中原中也を描くなら、この詩は絶対に省けない
乳母車を押す中也、
哺乳瓶から乳を飲む中也、
マントを翻してローラースケートに興じる中原中也、
ラストの「ユーモア」という謎の題名のテーマ歌を省いても、
汚れつちまつた悲しみに、は、読まなくてはならない。
この詩を、冒頭か?ラストで、
テロップで流して声を被せたら、
たったの1分間で済むのに、そうすれば、
この映画は本物の芸術作品になり得たかもしれない。
久しぶりに観た【文芸作品】を。
それでも【文学】をそこはかとは感じる良い経験でした。
まず人間が描けている。
詩人・中原中也
女優・長谷川泰子
文芸評論家・小林秀雄
この3人が演じた木戸大聖、広瀬すず、岡田将生の
手堅い演技力、的確な人物像の把握、役への情熱、やる気
そのため実在しているかのような存在感が感じられる。
特に木戸大聖の演じる中也。
映画では否定していたが、17歳の旧制中学から、
女郎を買ったとの証言がある。
小林秀雄に泰子を奪われても、ちょくちょく顔を出して、
泰子が神経を病むほどの大音量で鳴る柱時計を贈る。
《中原中也と哺乳瓶そして乳母車》
これには伏線がある。
泰子が望まぬ妊娠・出産をした時、泰子を支えて、
子供の茂樹の名付け親になった中也。
案外、バンカラで豪放磊落な面倒見のいい男だったようだ。
この辺は木戸大聖も手堅く片鱗をみせている。
そして何より、中也と泰子は広島の鉄砲町で目と鼻の先に
住んでいた。
面識はなかったが、同郷でご近所なら、話が弾んだ筈だ。
中也は3歳年下にも関わらず、乳飲み子を抱えた泰子の面倒を
良く見ている。
【乳母車も哺乳瓶】も茂樹との交流に寄るものだろう。
ある意味で知的で冷たい小林秀雄より、情の濃い男。
中原中也の、
30年の生涯は濃縮されて濃い特濃のものだったのである。
岡田将生は小林秀雄にうってつけで、美貌と嫌味なほど知的で繊細。
料理の出来ない泰子を気遣い、ゆうげの食べ物を毎食買っ作る。
しかしどうだろう?
泰子は、中原の部屋に泊まった朝、味噌汁をそれもあり合わせで
生姜の味噌汁を手作りしている。
中也と暮らしていれば泰子の神経症は出ない。
それでも中也と秀雄は泰子を挟んで交流を続ける。
監督の根岸吉太郎は2009年の太宰治を描いた
「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ」以来16年ぶりの長編映画。
もともとは有名監督なので、「遠雷」と「ヴィヨンの妻」は観ている。
「遠雷」は有り余る若さが画面から迸っていた。
それに較べると今回の熱量の不足は否めない。
中原中也役の演者が見つからず、40年以上前の田中陽三の脚本が
やっと日の目をみたそうだが、
美しい良い役者(広瀬すずと岡田将生)を見ていると、
一瞬も目を離せず、一瞬も飽きる事が無かったが、
感動したかと聞かれれば、湧き上がる興奮は沸点を越えず
化学反応は起こらなかった。
なりふり構わず情に訴えるには、
広瀬すずの美しい背中を見つつ、
広瀬すずの見事な日本髪の美しさをしても、
足りない。
岡田将生は小林が掴めず不完全燃焼という。
圧倒的な芸術の香りや破壊力と熱量が微量な気がする。
根岸吉太郎監督は案外ニヒルな人なのかもしれない。
意味わかんねぇえええええ
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