劇場公開日 2025年2月21日

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「時代を纏った作品」ゆきてかへらぬ かもしださんの映画レビュー(感想・評価)

3.0時代を纏った作品

2025年5月17日
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鑑賞方法:映画館

広瀬すずさんの時代を纏った演技に始終圧倒されっぱなしの128分でした。
正直、彼女から大正時代の空気感などまるで感じていなかったので殆ど期待していなかったのですが、良い意味で見事に裏切られました。
長谷川泰子という大正時代の女優をしっかりとモノにしていらっしゃいました。
導入時、2階の窓辺から一階の玄関に至るワンカットでの所作や、雨の中で木戸さん演じる中原中也との会話からも普段の広瀬さんとは違う魅力が爆発していました。

彼女を通して男2人の関係が浮き彫りになっていく点も素晴らしかった。
まるで大正時代を舞台にした「突然炎のごとく」を観ているような気分にも浸れました。
一重に広瀬さんの時代を纏った演技のおかげだった気がします。

勿論、広瀬さんの演技だけでなく、セットや小道具、ロケ地に至るまで大正時代の空気感を損なわない演出が随所に散りばめられてました。
特に目を奪われたのが卓抜した撮影の巧さ。
雨の中、瓦屋根に挟まれた石畳の路地をゆっくり移動する赤い傘を捉えた真上からの映像や、咲きほこる桜の中で会話する中也と小林を捉えた映像など息を呑む美しい映像の数々に心を鷲掴みされてしまいました。
敢えて被写体だけにピントを合わせて手前と奥をぼかした映像も多く、ワンカットに対する熱量が半端なかったです。
中途半端な小道具やセットで時代感を損なう映画になっていないだけでなく、撮影で見せる絵作りを心がけたスタッフの尽力に並々ならぬ努力に感謝したいくらいです。

かもしだ